映画「サバービコン 仮面を被った街 SUBURBICON」

この映画を観て連想したのが、「ブラッドシンプル」や「ファーゴ」といったコーエン兄弟の映画である。
ブラックなユーモアや、間の抜けた犯罪、そしてひとつの犯罪が次々と悲惨な犯罪を誘発していく展開、こういったテイストから出てきた連想であった。
そこで観終わった後調べてみると、やはりその勘は当たっており、コーエン兄弟がこの映画の脚本を担当していたのである。
なるほどと大いに納得した次第。
サバービコンとは架空の街の名前。
映画の冒頭で、街の成り立ちが説明されるが、それによれば1947年に数軒の小さな家から開発が始まり、その後数年で多くの移住者が全米から集まって出来たアメリカン・ドリームを実現した街である。
その街に住むロッジ家と隣に越してきた黒人一家のふたつの家族が、悲惨な運命に翻弄される。
ロッジ家では強盗が入り、妻が殺されるという事件が持ち上がる。
いっぽう黒人一家は住人たちによる執拗ないじめと排斥運動に晒される。
そしてその事件をきっかけに、明るく平和で理想の街だと思われていたものが、実は底の浅い虚飾だらけの街だったということが露わになってゆく。
かつてのアメリカが夢見ていた理想の生活というのも、蓋を開けてみれば実はこの程度のものだったという、いかにもコーエン兄弟らしい皮肉たっぷりな話なのである。
監督はジョージ・クルーニー。
そういえば彼はコーエン兄弟の映画の常連だ。
また主演のマット・デイモンとは、こちらもクルーニーの監督作である「ミケランジェロ・プロジェクト」で共演している。
いずれも旧知の仲というわけで、肩の力の抜けたいいアンサンブルを見せている。
この映画ではロッジ家と黒人一家のどちらにも幼い一人息子がいるが、そのふたりが物語では重要な役割を果たしている。
そしてどす黒い騒動ばかりが続くこの映画の中にあって、最後に見せるふたりのキャッチボールに、わずかな救いを見ることができる。
なかなかシャレたいい幕切れである。


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