風に吹かれて

My Life & My Favorite things

Category: 読書

Tags: 短編小説集  西村賢太  

Comment (0)  Trackback (0)

西村賢太「無銭横町」

musenyokotyo.jpg

「菰を被りて夏を待つ」、「邪煙の充ちゆく」、「朧夜」、「酒と酒の合間に」、「貫多、激怒す」、「無銭横町」の6編が収められている。
いずれの短編も内容的にはこれまで読んできたものと変わらないが、それを手を変え品を変えて読ませてしまうのは流石である。
同じ話なのにけっしてマンネリにはならない。
そこが西村作品の魅力であり、力でもある。
読まずにはいられないのである。
中毒性の強い作家だ。

6作のなかで特に印象に残るのは、表題作である「無銭横町」。
例のごとく家賃を滞納、大家から立ち退きを迫られた貫多が、金策に走り回る様子が事細かに書き連ねられていく。
まずは手元に残ったわずかの金を工面して町田に住む母親を頼るが、自分の生活だけで精いっぱいだと体よく断られてしまう。
日頃没交渉で都合のいい時にしか現れず、度々迷惑をかけられている母親にすれば、これは当然の態度といえよう。
それでも帰りの電車賃だけは無理やりむしり取る。
アパートに帰った貫多は、仕方なく読みかけの文庫本を古本屋に持って行くが、ここでも断られそうになる。
だが悪戦苦闘の末に、何とか100円で売ることに成功する。
さっそくインスタントラーメンを買うが、コンロも調理器具も持っていないので料理ができない。
そこで考えたのが「水ラーメン」。
ビニール袋に入れたラーメンに水を注ぎ、ある程度ふやけたところで手でもみほぐすという方法。
とても食べられた代物ではないが、空腹を我慢できない貫多は残らず平らげてしまう。
そして「ヘンな胃のもたれと軽ろき吐き気」を感じながら、また次なる金策へと奔走するのである。

何とも情けなくやるせない話である。
しかしこんな愚行を繰り返すのが、若さというもの。
似たようなことは、ひとり暮しをしたことのある者であれば、身に覚えがあるはず。
斯くいう私もそのひとり。
読んでいてどうしようもなく愚かで、その日暮しだった若かりし頃を思い出したのである。
しかしその恥多き愚かな日々が、とてつもなく懐かしく愛おしい。
そしてそんな馬鹿々々しいことをやれたことが、今ではとても貴重な経験だったと思えるのであった。


にほんブログ村 本ブログへ 
↑ クリック、お願いします。 ↑
スポンサーサイト
テーマ : 図書館で借りた本  ジャンル : 本・雑誌


カレンダー
03 | 2018/04 | 05
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -
プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2018年)70歳です。
性別:男

還暦(10年前)という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

映画サイト「マイ・シネマ館」もやっています。
こちらもよろしく。

ランキングサイトに参加しています。
もしよければクリック、お願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へ 

月別アーカイブ
cooldaddyの本棚
FC2ブログランキング
ブログ内検索
QRコード
QRコード

12345678910111213141516171819202122232425262728293004 2018