風に吹かれて

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Category: 月別観た映画と読んだ本

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今月観た映画と読んだ本(2018年1月)

観た映画


hinonagori-s.jpg日の名残り(DVD)
1993年イギリス/アメリカ 監督:ジェームズ・アイヴォリー 出演:アンソニー・ホプキンス/エマ・トンプソン/ジェームズ・フォックス/クリストファー・リーヴ/ピーター・ボーガン/ヒュー・グラント/ミシェル・ロンダール/ティム・ピゴット・スミス/パトリック・ゴッドフリー


7samurai.jpg「七人の侍」(BSプレミアム)
1954年 監督/脚本:黒澤明 出演:志村喬/三船敏郎/稲葉義男/宮口精二/千秋実/加東大介/木村功/高堂国典/左卜全/小杉義男/藤原釜足/土屋嘉男/島崎雪子/津島恵子/多々良純/渡辺篤/千石規子/東野英治郎/上田吉二郎/田崎潤


singleman.jpg「シングルマン」(DVD)
2009年アメリカ 監督/脚本:トム・フォード 出演:コリン・ファース/ジュリアン・ムーア/マシュー・グード/ジニファー・グッドウィン/ニコラス・ホルト/ジョン・コルタジャレナ/リー・ペイス


jimmy.jpg「ジミー、野を駆ける伝説」(DVD)
2016年イギリス/アイルランド/フランス 監督:ケン・ローチ 出演:バリー・ウォード/フランシス・マギー/アイリーン・ヘンリー/シモーヌ・カービー/ステラ・マクガール


arusensoh.jpg「ある戦争」(DVD)
2015年デンマーク 監督:トビアス・リンホルム 出演:ピルー・アスベック/ツヴァ・ノヴォトニー/ソーレン ・マリン/シャルロット・ムンク/ダール・サリム


concart.jpgザ・コンサルタント(DVD)
2016年アメリカ 監督:ギャビン・オコナー 出演:ベン・アフレック/アナ・ケンドリック/J.K.シモンズ/ジョン・バーンサル/ジーン・スマート/シンシア・アダイ=ロビンソン/ジェフリー・タンバー/ジョン・リスゴー


sayonara-adoruhu.jpg「さよなら、アドルフ」(DVD)
2012年オーストラリア/ドイツ/イギリス 監督/脚本:ケイト・ショートランド 出演:ザスキア・ローゼンダール/カイ・マリーナ/ネーレ・トゥレープス/ウルシーナ・ラルディ/ハンス=ヨッヘン・ヴァーグナー/ミーカ・ザイデル/アンドレ・フリート/エーファ=マリア・ハーゲン


konokuni.jpg「この国の空」(DVD)
2015年 監督/脚本:荒井晴彦 出演:二階堂ふみ/長谷川博己/工藤夕貴/富田靖子/利重剛/上田耕一/石橋蓮司/奥田瑛二


05mm-s.jpg0.5ミリ(DVD)
2013年 監督/脚本安藤桃子: 出演:安藤サクラ/織本順吉/木内みどり/土屋希望/井上竜夫/東出昌大/坂田利夫/ベンガル/角替和枝/浅田美代子/柄本明/草笛光子/津川雅彦



読んだ本


harukojoka-s.jpg晴子情歌 上・下(髙村薫 現代小説)


kasya.jpg「火車」(宮部みゆき ミステリー)


murasakiniou-s.jpg紫匂う(葉室麟 時代小説)


kageroumon-s.jpg陽炎の門(葉室麟 時代小説)


sanngetuan-s.jpg「山月庵茶会記」(葉室麟 時代小説)


hotarugusa.jpg「蛍草」(葉室麟 時代小説)


chiwohau.jpg「地を這う虫」(髙村薫 短編小説集)



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映画「0.5ミリ」

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ある事件で職を失った介護ヘルパーが、町で見かけた訳あり老人の家に押しかけて、身の回りの世話をするという物語。
主演の介護ヘルパーの女性サワを演じているのが安藤サクラ、そして監督が姉の安藤桃子という映画である。
登場する老人は、4人、織本順吉、井上竜夫、坂田利夫、津川雅彦、柄本明といった個性的な面々。
一筋縄ではいかない年寄りたちばかりだが、サワとともに生活するうちに、次第に心を開いていく。
そんなエピソードが連作短編のように繰り返される。
この映画を観ているうちに、ふとこれに似た映画があったことを思い出した。
百万円と苦虫女」である。
蒼井優演じるフリーターの女の子が、仕事で百万円貯まると別な土地に移るというルールに従って、ひたすら旅を続ける映画であった。
監督はタナダ・ユキ、こちらも女性監督である。
どちらもロードムービーではあるが、行く先々で居つき、そこで生活をしながらも、次々と居場所を変えていく。
また主人公が心に鬱屈をもちながらも、めげずに逞しく生きていく。
そんな共通点からの連想であった。
ところでこの「百万円と苦虫女」といい、安藤サクラの「百円の恋」といい、この映画のなかに出てくる百万円のエピソードといい、偶然だがいずれも百という数字に縁のある映画ばかり。
意味のないことかもしれないが、こうやって揃うと「百」という数字が何かの符号か、ラッキーナンバーのように思えてくる。
ついでにいえば、題名も「0.5ミリ」ということで、やたら数字が気になってしまうのである。

「介護」を題材にしているが、それだけに焦点を絞っているわけではない。
そこから見えてくるのは、超高齢化時代を迎えた現代社会が抱え持つ様々な問題であり、歪である。
そしてそこに安藤サクラ演じるサワという女性が関わることで、さらに複雑な現実が浮かび上がってくる。

「介護」が題材となると、どうしても重苦しくなりがちだが、この映画はそこがちょっと違う。
主人公サワのバイタリティー溢れるキャラクターや、コミカルな味付けが、この映画をよくありがちな「介護」映画とは一線を画したものにしている。

主人公サワは介護だけに限らず、年寄りの扱いには手慣れており、卒がない。
その扱いに年寄りたちが手もなく慣らされていく様は、まるで野良犬を手懐ける様で、手際がいい。
彼女が最初にやることは、手料理を提供すること。
まずは食い物から攻めていくのである。
だいたいの男は、手料理には弱い。
ましてや毎日貧相な食事ばかりの老人となればなおさらである。
サワは若さに似合わず料理の腕が抜群に上手いという設定になっており、美味そうな手料理が食卓に上がる。
もうそれだけで相手の気持ちをがっちりと掴んでしまう。
説得力がある。
押しかけヘルパーという強引で、現実離れした行動も、これで妙に納得してしまう。
その料理のコーディネートをしているのが、安藤姉妹の母親である安藤和津。
さらにいえば、父親の奥田瑛二もエグゼクティブ・プロデュサーを務めている。
加えて安藤サクラの義理の両親である柄本明と角替和枝も出演するなど、家族総出で若いふたりを支えているのである。

観る前は3時間16分はあまりにも長いと思っていたが、観始めるとあっという間であった。
いや、逆にまだまだ観ていたいと思ったほど面白かったのである。


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Category: 読書

Tags: 葉室麟  時代小説  

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葉室麟「陽炎の門」

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葉室麟の小説に黒島藩シリーズというのがある。
豊後黒島藩を舞台にした小説で、「陽炎の門」、「紫匂う」、「山月庵茶会記」の3作がある。
黒島藩は作者が作り出した架空の藩である。
おそらく藤沢周平の海坂藩を意識したのだろうが、作者の早過ぎる死で、わずか3作で終わってしまった。
先日「紫匂う」を読んで、それがこのシリーズのひとつだと知り、他の作品も読んでみようと考えたのである。
そのシリーズの第1作目となるのが、「陽炎の門」である。
小説の冒頭に、その黒島藩について書かれた箇所がある。
それによると「九州、豊後鶴ヶ江に六万石を領する」とある。
そして「伊予国来島水軍の中でも<黒島衆>と称された黒島興正が藩祖」となっている。

物語は、家禄五十石という軽格の家に生まれた桐谷主水が、三十七歳という若さで、執政になるという異例の出世を遂げたところから始まる。
それをきっかけに、10年前のある事件の謎が再び浮上してくる。
その事件というのは、藩の派閥争いの中で起きた事件で、城内で藩主父子を誹謗する落書が見つかったというもの。
犯人として疑われたのが、親友である芳村綱四郎。
そして落書の筆跡が綱四郎のものだと証言したのが主水であった。
その証言が決め手となって綱四郎は切腹、綱四郎は介錯人として主水を指名する。
それに応じた主水は介錯人を務めることになる。
以来彼は「出世のために友を陥れた」と噂されるようになる。
そして10年が経ち、再び事件が洗い直されることになったのである。

過去の自分の判断が間違っていたのではないだろうかと煩悶する主水の姿や、ミステリー仕立ての展開でぐいぐいと読ませていく。
主水はこれまでの葉室作品の主人公たちのように、清廉潔白とか高潔といった人物ではない。
軽格の家に生まれたことで、貧しさを骨身に沁みて味わい、そこから抜け出そうと人一倍出世を望む男である。
そのため職務においては冷徹非情、陰では「氷柱(つらら)の主水」と呼ばれている。
そんな人間的な側面をもつ主水が、ライバルでもあった綱四郎を、間違った判断で蹴落としてしまったのではないかと苦悩しながら事件の真相に迫っていく。
そのなかで、どんな真相を掴み、どんなことを考えるのか、さらにどんな行動をとってゆくことになるのか、どこまでも興味は尽きない。
葉室麟の小説はやはり面白い。
読み終わるとまた次を読みたくなってしまう。
次は黒島藩シリーズ3作目の、「山月庵茶会記」を読むつもりである。


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Category: 外国映画

Tags: ベスト映画  

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2017年洋画ベスト9

1位:手紙は憶えている
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2位:マンチェスター・バイ・ザ・シー
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3位:最愛の子
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4位:ハドソン川の奇跡
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5位:ラ・ラ・ランド
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6位:フランス組曲
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7位:ラビング 愛という名のふたり
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8位:ライオン 25年目のただいま
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9位:わたしは、ダニエル・ブレイク
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10位:たかが世界の終わり
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Category: 日本映画

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2017年邦画ベスト9

1位:オーバーフェンス
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2位:バクマン
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3位:湯を沸かすほどの熱い愛
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4位:起終点駅 ターミナル
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5位:淵に立つ
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6位:柘榴坂の仇討
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7位:永い言い訳
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原作が面白かったので、期待したが、残念ながら小説の面白さには届かなかった。それでもやはり見応えのある映画であった。竹原ピストルという新しい才能がこの映画で花開いた。


8位:ヒメノアール
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昨年のTSUTAYAの日本映画人気ランキング1位ということで借りた映画。よくある青春ものかと思ったが、かなり重い内容の映画。「ヒメノアール」とはトカゲの一種で小動物のエサになる小型のトカゲのこと。この映画の根底には陰湿ないじめの問題が潜んでいるが、それでも悲惨なだけではなく、笑いの要素もあって楽しめる。一筋縄ではいかない映画である。


9位:何者
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朝井リョウの直木賞受賞小説を映画化した作品。就活というものを通して描いた現代の若者たちの姿。彼らの不安や焦りから見えてくるものはいったい何か。ドラマとは無縁とも思える就活を舞台に、こうしたひねりの利いたドラマを生み出したことに拍手。



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Category: 外国映画

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映画「ザ・コンサルタント」

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数多くの伏線が張られており、そのすべてがユニークで面白い。
そしてその伏線のひとつひとつが丁寧に解き明かされていくたびに、カタルシスが味わえる。
また主人公の人物設定もユニークで、斬新だ。
自閉症ゆえに備わった天才的能力を生かし、会計士という表の顔と、スナイパーという裏の顔をもつ謎の男。
映画「レインマン」でダスティン・ホフマンが見せた、あの驚きの能力と共通するものだ。
そこに映画的な誇張はあるものの、アイデアはこれまでにはなかったもの。
しかも主人公がどうやって現在の姿に至ったのかを、過去に遡って詳しく解き明かしていくなど、説明は抜かりがない。
映画「ベスト・キッド」を思わせるようなエピソードもあって、思わずニヤリとさせられる。
そして映画そのものが、複雑なジグゾーパズルになっており、ラストで最後のワンピースが収まると、それで全ての謎が解けるという形態になっている。
見事な仕掛けである。
こうした緻密な脚本を書いたのが、ビル・ドゥビュークというシナリオライター。
以前観た「ジャッジ 裁かれる判事」を書いた、ライターだ。
この映画を含めまだ3本の作品しか書いていないというから驚きだ。
これからどんな作品を生み出すか、大いに楽しみだ。
そして監督はこちらも最近注目している「ウォーリアー」の監督、ギャヴィン・オコナー。
父親と兄弟というシチュエーションが「ウォーリアー」と共通するものがあるのはそのためだろう。
さらに主人公を演じたベン・アフレックが、このユニークな主人公を思い入れたっぷりに演じている。
その陰影ある姿はなかなか魅力的で、新しいヒーローの誕生を感じさせられた。
盟友・マット・デイモンの当たり役ジェイソン・ボーンに匹敵するヒーロー像である。
映画の最後は、続編を予感させるような終わり方。
おそらく続編が作られるにちがいない。
それを楽しみに待ちたいと思う。


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Category: 読書

Tags: 葉室麟  

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葉室麟「紫匂う」

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昨年12月、作家・葉室麟が亡くなった。
66歳であった。
葉室麟は遅咲きの作家で、デビューしたのは、2005年、54歳の時である。
わずか12年という作家生活だったわけだ。
しかしその著作は、50冊を超えるほどの量産であった。
まるで残された時間が、わずかであることを知っていたかのような多作ぶりである。
そしてそれらの小説で書き続けたのは、人間がもつ尊厳や真心といった精神の美しい輝きであった。
それはこの小説でも描かれていることである。

主な登場人物は、3人。
黒島藩六万石の郡方を務める萩蔵太とその妻・澪、そして江戸藩邸側用人の葛西笙平。
萩蔵太は心極流の剣の達人だが、普段は仕事一途なだけの地味で目立たない男であった。
その夫に18歳で嫁いで12年になる澪は、二人の子供を授かり、平穏な生活を送ってはいたが、夫にいささかの物足りなさを感じることがあった。
そんな折、幼馴染であり初恋の人である葛西笙平が、家老の意に染まぬことを行ったという理由で、国許に送り返されることになり、その旅の途中で逃げ出してしまう。
その葛西笙平が、澪の前に突然現れる。
彼を匿うことになった澪と笙平ふたりの逃避行が始まる。
それを見捨てておけなくなった蔵太が後を追い、ふたりに力を貸す、というのが物語のおおまかなストーリーである。

3人の交錯する思い、そして騒動の顛末はどうなるのか、その面白さに一気に読み終わってしまった。
それはこれまで読んできた葉室麟の、いずれの小説とも変わらぬ面白さであった。

ところで和歌や俳句に傾倒したこともあるという葉室麟の小説には、しばしば和歌や俳句の引用がなされることがあるが、この小説でもいくつかの和歌が登場してくる。
そのなかのひとつ、「紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑに吾恋めやも」が、小説の最後に効果的に使われている。
これがこの小説の題名として使われているわけだが、その心境に至った夫婦ふたりの慎み深い機微を表して、印象深い結末になっている。
「精神の美しい輝き」が、ここでも見ることができる。


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Category: 読書

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髙村薫「晴子情歌 上・下」

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ようやく読み終えたというのが、正直なところ。
旧仮名遣いで書かれた文章は、重々しく、理解しづらいところも多く、かなり骨が折れる。
行きつ戻りつしながら読むため、遅々として進まない。
不安定な足元を、転げ落ちないようにしっかりと確かめながら高い頂を目指す、そんな形容がしたくなるような読書だった。
途中で投げ出すことなく読み終えることができたのは、この小説が持つ強力な磁力に引っ張られたがゆえである。

主人公・晴子が息子・彰之に送った100通を超える手紙と、それを受け取った彰之の現在の心境や回想によって物語は描かれていく。
その手紙に綴られるのは、50年に及ぶ晴子の数奇な人生である。
晴子は大正9年、母の実家である東京本郷の岡本家で生まれた。
父・康夫は東大文学部を出て、東京外国語学校で講師を勤める左翼系のインテリであったが、若くして亡くなった妻の死をきっかけに、残された4人の子供を連れて康夫の実家のある青森県津軽地方の筒木坂(どうぎざか)へと帰っていく。
そして実家の野口家に晴子たち4人の幼い子供を預けたまま、北海道へと渡ってしまう。
野口家の次男が働く江差の鰊場に、職を得たためであった。
昭和9年、晴子15歳の時である。
その後、晴子たちは父が働く鰊場に移り住むことになるが、翌年、父・康夫は死亡、その結果弟妹は東京の母親の実家に引き取られることとなり、晴子はたったひとりで生きていくことになる。
筒木坂に帰った晴子は、新しい奉公先となる野辺地の福澤家で働くことになる。
福澤家は古くから醤油製造業を営む県下有数の名家であり、当主・勝一郎は事業家として様々な会社を経営する傍ら、衆議院議員として政治の世界でも重きをなす人物であった。
そこで女中として働く晴子は、やがて福澤家の跡取りである榮の子を産み、戦争から帰ってきた画家を志す放蕩息子・淳三と結婚することになる。
そして昭和50年、彰之は東大理学部を出たものの、ある日突然漁船員となることを告げ、北転船に乗り込んで遠洋漁業へと旅立ってゆく。
そこから晴子の彰之へ送る手紙を書く日々が始まる。
その手紙に描かれるのは、これまで歩んできた晴子の人生と家族の姿であるが、それと同時に激しく揺れ動く昭和という時代を描いた叙事詩ともなっている。
津軽や北の大地の因習や風土、そこに根差して生きる人々の姿、さらに大家(おおやけ 津軽弁で大地主の意)である福澤家の複雑で陰湿な家系と政治の世界、そして戦争というものの実態、さらに息子・彰之の章では、それらが彼の視点からも描かれ、揺れ動く心の襞が書き加えられていく。
そしてそれが言葉の奔流となって押し寄せてくるのである。
晴子が文学少女であるという設定にはなっているが、それにしてもこの奔流はただ事ではない。
これはそうした膨大な言葉の渦によって書かれた昭和史であり、民衆史である。
その醍醐味に、そしてその熱量に、心底圧倒されてしまったのである。

ところで昨年の秋、津軽半島をドライブしたことを以前書いたが、それは小説の最初の舞台になった木造町(今はつがる市となっている)の筒木坂(どうぎざか)に行ってみようと思ったからである。
果たしてそこはどんな場所なのか、その風景をいちどこの目で確かめてみたいという思いがあったからである。
津軽半島の付け根に位置する漁港・鰺ヶ沢から北に延びる国道をしばらく走ると、広大な田園地帯が現れてくる。
そこが目指す筒木坂であった。
しかし行けども行けども人家が見当たらない。
秋の穏やかな風景ではあるが、ひと気はなく七里長浜から吹きつける風は強い。
冬になればおそらく荒涼とした雪景色になるだろうことは容易に想像できた。
ましてや主人公・晴子たちが、この地に足を踏み入れた昭和初期の頃となると、それはさらに荒々しいものだったにちがいない。
小説ではそれを「嵐が丘」の描写を引用して、「大気の動亂(どうらん)」と呼んでいる。
その一部を書き写すと次のようなものである。

 そして間もなく林が途切れ、その先に山のような砂丘があらはれたときの驚きと云ったら!その砂の山はなだらかな上り下りを伴ひ、見渡すかぎり續いてゐました。薄く被った雪が風に巻き上げられて煙を上げてをり、さらに砂は別の煙になってそれに重なり、滲みあひ、濃淡を作りながら流れていきます。その下では、未だ色のない草が間断もなく風になびき續け、砂丘そのものがうねりながら動いてゐるかのようです。しかも、何と云ふ風でせう。それはもう鼓膜をぢかに震はし、ほとんど何も聴こえません。その風を見てゐるとき、ふいに「大気の動亂」と云ふ言葉が一つ浮かんできましたが、『嵐が丘』と云ふ小説の中で、そこに吹く風のことをそのように書いてあるのです。まさに風の姿が小説家にそのような言葉を思ひつかせたのか、小説家のこころの有りやうが風の姿をそんなふうに見させたのか、どちらが正しいのかは私には分かりませんが、ともかくその外國の小説の感覚が突然身近になり、私はしばし言葉を失いました。



さらにその先にある七里長浜の海辺の描写へと続いていく。

 前方の海は鈍く光りながら濱を覆ふばかりの波を繰りだして打ち寄せ、濱一面が飛沫とさらに細かい水煙の中にありました。眩しい白さは、まるで無数の光の点のやうです。濱は色がなく、海と砂丘の間に開いた水煙の靄の廊下のやうで、一軆どこまで續いてゐるのか分かりません。その先の方は半分明るく、半分翳ってをり、空と陸の境も分かりません。
 沖にはガスがかかってをり、薄い桃色と黄色に色づいて空と繋がり、そこからは仄かな日差しが透過してきて、ガスと海と濱の全部をぼんやり照らしてゐます。その遥か上方で鳴り續ける風音も、沖の方から傳はつてくる轟音も、いまは少しくぐもって響き、そこに打ち寄せる波の朗らかに高い音が加わると、まるで天と地が呼び合つてゐるように聴こえます。さらに私の耳のせゐでせうか、そこにはやがてリン、リンと云ふ明るい鈴の音が混じり始め、初めは微かに響いてきただけでしたが、その音はしかし、遠くから確かに近づいてきます。
 そうして突然、水煙の靄の濱にいくつかの人の姿があらわれたかと思ふと、それらの人影は少しづつ間隔をあけてゆらゆらと濱を近づいてくる行列の姿になりました。私は、海辺の蜃気樓を見てゐるような心地になり、さらに目を見開きます。いまはリン、リンと鳴り續ける音のほかに、ほーお、ほーおと云ふ齊唱も聴こえてきます。私は靄の中でゆらめき續ける人影を八つまで數へましたが、それは網代笠と墨染の衣と白脚絆と云ふ姿の人びとで、右手の小さな持鈴を鳴らし、ほーお、ほーおと詠うやうに長閑で、なほ鋭い喚声を上げてゐるのでした。その行列の上に波しぶきの光の塊が降り、海と空から曇硝子を通したやうな光が降り続けます。
 やがて、それは私たちの直ぐ傍まで来て止むと、間もなく今度は私たちの垂れた頭の上に、低く呟くやうな聲が降ってきました。ほんの短い間、意味も何も分からないままに、むへんぜいぐわん、むじんぜいぐわん、むりょうぜいぐわん、むじやうぜいぐわん、と云ふ不可思議な言葉の響きが耳に滲み込みます。そのときの心地を云ひあらわすなら、僅かに嬉しいやうな、楽しいやうな心地だったと云ふところかしら。否、より正しくは、そこには同時に邊りがしんと冷えていくやうな、森閑として寂しい心地も混じってゐたと云ふべきかしら。
 行きずりの子供に四弘誓願(しくせいがん)を唱えてくれた雲水たちは、そうして再び濱を遠ざかっていきました。



これからの晴子の人生を予感させるような描写である。
そして訪れた筒木坂の景色をイメージしながらこれらを読むことで、より深いリアリティを感じることになったのである。

ちなみにこの小説を読んだ後、筒木坂(どうぎざか)という地名の由来について調べてみたところ、次のようなことが分かった。
筒木坂は縄文土器で有名な亀ヶ岡遺跡の隣に位置する集落で、筒木坂でも縄文土器が出土することがある。
そこから「陶器が出土する坂」という意味をこめて、この名がつけられたということだ。
それを知って考えたことは、この長大な物語は、太古の昔から連綿と続いてきた人間の変わらぬ営みに繋がる、壮大な人間ドラマとして捉えることができるのではないかということ。
そうした巧まざる意図が、そこから匂い立ってくるように、感じられたのである。


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Category: 行事・記念日

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初詣

今年の正月は、好天続きで雪も少なく穏やかで、過ごしやすい日が続いている。

初の日曜日である昨日も、晴れのいい天気であった。

そこで遊びに来ていた孫たちを連れて、八幡様に初詣に行くことにした。

遅い初詣であるが、日曜日ということもあって人出も多く賑わっていた。

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さっそく本殿でお参りをし、その後は型通りのおみくじである。

今年のおみくじはいつものおみくじと違って、ちょと趣向を変えたものになっていた。

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透明なケースのなかに小さな鯛のおみくじがたくさん入っており、それを備え付けの釣り竿で釣り上げるというもの。

ゲーム感覚のおみくじに孫たちは大喜び。

苦戦しながら釣り上げたおみくじは、どちらも「末吉」であった。

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小さな祠にもお参りをして。

今年もいい年でありますように。

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Category: 外国映画

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映画「日の名残り」

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何か映画でも観ようかと家内とふたりでレンタルショップに行った。
その時たまたま目にしたのがこの作品である。
カズオ・イシグロ原作のイギリス映画である。
家内はこれは観ていないと言う。
ならばカズオ・イシグロがノーベル賞を受賞したことでもあるし、この機会にもういちど観てみようと、借りることにした。

最初にこの映画を観たのは1995年のこと。
今から20年以上前である。
この映画を観て初めてカズオ・イシグロという作家の存在を知った。
そして日系二世の作家が、イギリスの伝統的な世界を舞台にこのような小説を書いたことに、不思議な思いを抱いたものだ。
調べてみるとその年に観た洋画のベストテンに選んでいる。
面白かったということになるのだろうが、ほとんど記憶に残っていない。
なので初めて観るようなもの。
実際、観て分かったことだが、憶えていたのはごくわずか。
主演がアンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンのふたりだということ。
そしてふたりがお互いに好意を持ちながらも、いっしょになることなく、別々の人生を歩まざるをえなかったということ。
そのくらいのことしか憶えていなかった。
そういうことは何もこの映画に限ったことではなく、どんな映画でも、また小説でもいえることで、よほど印象に残った作品でない限り、記憶は時間とともに薄れていくものだ。
いいものはやはり繰り返し読み観るべきだとつくづく思う。
そうすることで、そこにまた新たな発見がある。
そしてさらに深く理解することになる。
そのことをこの映画を観直してみて、またあらためて実感したのである。


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プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2018年)70歳です。
性別:男

還暦(10年前)という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

映画サイト「マイ・シネマ館」もやっています。
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