Category: 読書
小池真理子「無伴奏」
小池真理子は東京生まれだが、父親の転勤によって各地を移り住み、1968年から1972年まで仙台で過ごしている。
彼女が高校生の時である。
時は全共闘運動など学生運動が盛んだった時代。
仙台でも学園紛争の嵐が吹き荒れていた。
安保闘争、全共闘運動、ベトナム戦争、デモ、フォークソング、アングラ文化。
政治の季節であり、そして芸術の季節でもあった。
そんな時代を振り返りながら書かれた小説である。
題名の「無伴奏」は、バロック音楽を専門に流す名曲喫茶の名前である。
実際に仙台にあった喫茶店で、小池真理子もよく通った店である。
そこで出会った大学生と女子高生の出会いと別れを描いたのが、この小説である。
青春のノスタルジーである。
しかし青春とはやっかいなもの。
純粋であるがゆえの独断と偏見、矛盾を抱えながらの短絡的な行動、不安と迷いに支配され、感情をコントロールできず、些細なことに思い悩む。
さらに時代は反権力を志向しており、その風潮をまともに受けた主人公の迷走が、痛々しい。
物語の主題よりも、あの時代がもっていた独特の雰囲気、その再現に惹かれた部分が大きい。
同じ時代を生きた者としての共感である。
甘さと苦さの入り交じった共感である。
女性版「ノルウェーの森」であり、あの時代の鎮魂歌でもある。
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