風に吹かれて

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山崎努「柔らかな犀の角―山崎努の読書日記」

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名優・山崎努がこれほどの読書家だったとは知らなかった。
さらにこれほどの名文家だったということも。
演技同様その文章には滋味があり、融通無碍、ときにユーモアが交じる。
本の感想に留まらず、それを踏み台にして自らの演技や人生について語っていく。
そのエピソードのすべてが面白く、含蓄ある文章に頷かされる。
永い俳優生活の中で培った見識の高さは並ではない。
読み終えてしまうのが、もったいない。
傍に置き、繰り返し読みたくなる本である。

こんなふうに書けたらいいなと思うが、とても無理。
人生経験が違う、人間の出来が違う。器が違う。
その差は如何ともしがたい。
とてもこうは書けない。
一芸に秀でた人間というのは、やはり何をやっても一流のことをやるものだとあらためて認識せられた。

ところで山崎努は、今度映画で彼が敬愛してやまない、画家・熊谷守一を演じるそうだ。
熊谷守一は97歳で逝去した伝説の画家で、「画壇の仙人」と呼ばれた人だ。
この本のなかでも藤森武写真集『獨樂 熊谷守一の世界』を採り上げて、その人となりを紹介しているが、30年以上も家の外に出ることなく、庭の動植物を描き続けたという異色の画家である。
山崎努にとっては、どうやら理想の人物のようだ。
その人を演じるという。
おそらくこの本同様、融通無碍な演技を見せてくれることだろう。
ぜひ観てみたい。今から期待に胸膨らませている。


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東山彰良「流」

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この小説を読んで最初に思ったことは、これは台湾版「けんかえれじい」ではないかということである。
「けんかえれじい」は、ケンカに明け暮れた旧姓高校生の姿を描いた青春映画の傑作で、日活時代の鈴木清順監督の代表作である。
高橋英樹演ずる旧姓高校生のケンカ行脚が、岡山と会津を舞台に痛快に描かれるが、こちらの小説は台湾が舞台である。
主人公は両親、祖父母、叔父、叔母たちと台北で暮らす葉秋生。
祖父母は中国山東省の出身で、中国での内戦を生き延び、国民党とともに台湾に渡って来た「外省人」である。
物語は国民党を率いた蒋介石が死んだ1975年から始まる。
この年、祖父の葉尊麟が何者か殺される。
犯人は見つからないが、怨恨による犯行ではないかと推測される。
祖父の葉尊麟には内戦時代、数多くの共産党の人間を殺したという過去がある。
その恨みをかっての犯行ではないかというのが、大方の見方だが、定かではない。
自分を可愛がってくれた祖父の死は、秋生の深い傷となって残るが、17歳の秋生にはどうすることもできず、ケンカに明け暮れる日々である。
以来10年の歳月をかけて事件の真相を追っていくことになるが、そのなかで内戦時代の祖父のことや家族の歴史を深く知るようになっていくのである。
ミステリーの要素はあるが、なによりもこれは秋生の成長を描いた青春物語であり、家族の姿を通して描いた台湾の現代史でもある。
そこから伝わってくる中国人たちの熱量の大きさには圧倒される。
それをしっかりと支えているのが作者の勢いと大胆さのある文章である。
白髪三千丈の中国の伝統と歴史を彷彿させるものがある。

ところでこの小説を読むうえで、手がかりになったのは、「童年往事 時の流れ」「恋恋風塵」や「悲情城市」といった侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の映画である。
侯孝賢もこの小説の主人公同様、「外省人」の子である。
そしてこれらの映画で、同じ時代を生きる家族の姿を描き続けている。
そうした映像を通して覚えた台湾のリアルな生活風景が、小説を読んでいるうちに浮かび上がり、大いに助けになった。
複雑な歴史的背景をもった台湾、そこで暮らす個性的な人々の生命力溢れる物語に、小説を読む醍醐味を深く味わった。

著者の東山彰良は台湾生まれの中国人である。
5歳まで台北市で過ごした後、日本に移住、両国を行き来しながら育った。
そんな経歴の持ち主である彼が、自身の家族をモデルに、自らのルーツを探ろうとしたのがこの小説である。
ところでこうした出自は、先日ノーベル賞を受賞したカズオ・イシグロとも似ている。
このような経歴を持った人間にとって、自らのアイデンティティを知るということは、何よりも大きなテーマなのであろう。
そんなことをふと思った。

第153回(2015年上半期)直木賞受賞作品。


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Category: 読書

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星野源「いのちの車窓から」

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星野源の存在を知ったのは、映画「箱入り息子の恋」を観てからだ。
3年前のことである。
映画は面白く、なかでも主演の星野源のことが強く印象に残った。
どこにでもいそうな、ネクラで目立たない若者を演じていたが、現実の彼もきっとそんな人間に違いないという説得力があった。
調べてみると俳優であり歌手であり、時にエッセイも書くというマルチタレントであった。
しかしその時点では、それほど知られた存在ではなく、ごく一部の人だけが知るマイナーな存在であった。
以来気になる人物となった。
そして数年を経た後、一気にブレイク、今では多くの人が知る人気のタレントである。
昨年はテレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」に主演、主題歌「恋」や「恋ダンス」が大ヒット、「NHK 紅白歌合戦」にも2年連続で出演するなど、ここ数年の活躍は目覚ましい。
そんな旬な男である星野源の今を覗いてみたいと、この本を読んでみたのである。

星野源はこれまでに、5冊の著書を出しており、「いのちの車窓から」は6冊目になる。
これは雑誌『ダ・ヴィンチ』で連載中のエッセイをまとめたもの。
「人生は旅だというが、確かにそんな気もする。自分の体を機関車に喩えるなら、この車窓は存外面白い。」というコンセプトのもとに書かれたエッセイ集で、星野源の今が率直で軽快な文章で綴られている。
人好きではあるが、人見知りでもあり、そして孤独を好む。
常に自然体でいることを心がけ、けっして無理はしない。
しかし好きなことには、精一杯打ち込み、集中する。
そんな日常が、独自の感性によって綴られていく。
時にそれは華やかな芸能界の裏側であったり、街で出会った何気ない風景であったりするが、なかでも印象に残ったのが、紅白初出場を果たした時のことを書いた「おめでとう」と題したエッセイである。
いったい何のことを書いているか分からないような出だしから始まり、次第にそれが紅白初出場のことだということに気づかされ、さらにNHKでの発表の舞台が近づくにしたがって、緊張した興奮が高まってくる。
巧みな描写は、まるで小説を読んでいるようで、その場に一緒にいるかのような臨場感があり、そして感動がある。

好奇心が強く、ポジティブな文章から滲み出てくるのは、自分に正直であろうとする率直さと人柄の良さである。
読んでいて心地いい。
そしてそれが爽やかで好感の持てる読後感を引き出す大きな要因にもなっている。
芸能界という特殊な世界で、自らを見失なわず、独自の立ち位置を着実に築き続けている星野源に、これからも注目していきたいと思わせられるエッセイ集であった。


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Category: 月別観た映画と読んだ本

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今月観た映画と読んだ本(2017年9月)

観た映画


fifth-wave.jpg「フィフス・ウェイブ」(DVD)
2016年アメリカ 監督:J・ブレイクソン 出演:クロエ・グレース・モレッツ/ニック・ロビンソン/ロン・リビングストン/マギー・シフ/アレックス・ロー/マリア・ベロ/マイカ・モンロー/リーヴ・シュレイバー


ex-machina.jpg「エクス・マキナ」(DVD)
2015年イギリス 監督/脚本:アレックス・ガーランド 出演:ドーナル・グリーソン/アリシア・ヴィキャンデル/オスカー・アイザック/ソノヤ・ミズノ


mousousatujin.jpg「教授のおかしな妄想殺人」(DVD)
2015年アメリカ 監督/脚本:ウディ・アレン 出演:ホアキン・フェニックス/エマ・ストーン/パーカー・ポージー/ジェイミー・ブラックリー/ベッツィ・アイデム/イーサン・フィリップス


ginnosaji.jpg「銀の匙 Silver Spoon」(DVD)
2013年 監督/脚本:吉田恵輔 出演:中島健人/広瀬アリス/市川知宏/黒木華/上島竜兵/吹石一恵/西田尚美/吹越満/哀川翔/竹内力/石橋蓮司/中村獅童


deadpool.jpg「レッド・プール」(DVD)
2016年アメリカ 監督:ティム・ミラー 出演:ライアン・レイノルズ/モリーナ・バッカリン/エド・スクライン/T.J.ミラー/ジーナ・カラーノ/ブリアナ・ヒルデブランド/レスリー・アガムズ/カラン・ソーニ/スタン・リー


itosikijinsei.jpg「愛しき人生のつくりかた」(DVD)
2015年フランス 監督/脚本:ジャン=ポール・ルーブ 出演:アニー・コルディ/ミシェル・ブラン/シャンタル・ロビー/////////


bakutogaijin.jpg「博徒外人部隊」(DVD)
1971年 監督:深作欣二 出演:鶴田浩二/安藤昇/若山富三郎/小池朝雄/室田日出夫/渡瀬恒彦/由利徹/今井健二/山本麟一/内田朝雄/中丸忠雄/高品格


dunkeruk.jpg「ダンケルク」(DVD)
2017年アメリカ 監督/脚本:クリストファー・ノーラン 出演:フィオン・ホワイトヘッド/トム・グリン=カーニー/ジャック・ロウデン/ジャック・ロウデン/ハリー・スタイルズ/ハリー・スタイルズ/ケネス・ブラナー/マーク・ライランス/トム・ハーディ


dont-breathe.jpg「ドント・ブリーズ」(DVD)
2016年アメリカ 監督/脚本:フェデ・アルバレス 出演:スティーヴン・ラング/ジェーン・レヴィ/ディラン・ミネット/ダニエル・ゾヴァット/エマ・ベルコビッチ


remember-s.jpg手紙は憶えている(DVD)
2015年カナダ/ドイツ 監督:アトム・エゴヤン 出演:クリストファー・プラマー/ブルーノ・ガンツ/ユルゲン・プロホノフ/ハインツ・リーフェン/ヘンリー・ツェニー/ディーン・ノリス/マーティン・ランドー


fuchi-s.jpg淵に立つ(DVD)
2016年 監督/脚本:深田晃司 出演:浅野忠信/古舘寛治/筒井真理子/太賀/三浦貴大/篠川桃音真広佳奈



読んだ本


mikaduki-s.jpgみかづき(森絵都 現代小説)


machine-s.jpgマチネの終りに(平野啓一郎 現代小説)


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プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2008年)還暦です。
性別:男

還暦という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

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