青山文平「つまをめとらば」

図書館で予約していた小説、「つまをめとらば」の順番がようやく回ってきた。
予約したのが3月だったので、2ヶ月待ちだったわけである。
昨年度の直木賞受賞という人気作品なので、これくらい待たされるのは仕方がないところ。
さっそく読んでみた。
青山文平の小説を読むのは、「流水浮木 最後の太刀」に続いてのことだ。
「流水浮木 最後の太刀」は長編小説だったが、こちらは短編集になる。
「ひともうらやむ」「つゆかせぎ」「乳付(ちつけ)」「ひと夏」「逢対(あいたい)」「つまをめとらば」の六篇の短編から成る。
主人公はすべて下級武士であるが、それぞれに秀でた余技を身につけている。
釣り針や釣り竿を作る技、漢詩や算学など、それによって「芸は身を助く」といった物語が展開されていく。
さらにそこに訳ありの女たちが絡むことで、深い陰影をつけ加えていく。
そこには作者自身が小説を書き始めた頃の経験や思いが、塗りこめられているようだ。
いずれの短編も甲乙つけがたい面白さ。
抑制された文章から紡ぎだされる物語は、時代小説がもつ香り立つような魅力に溢れている。
長編と短編の違いはあるかもしれないが、「流水浮木 最後の太刀」よりもさらに面白さが凝縮されている。
間違いなくこれからの時代小説界を担っていく小説家のひとりだろう。
こうした力量ある作家と出会えた幸運を噛みしめている。


↑ クリック、お願いします。 ↑
スポンサーサイト