映画「ジャージー・ボーイズ」

クリント・イーストウッドは、音楽愛好家としてもよく知られている。
特にジャズに対する造詣が深く、それは仕事にも生かされている。
これまでにもジャズの巨匠チャーリー・パーカーをモデルにした映画「バード」を監督したり、自らの映画(「ミスティック・リバー」「ミリオンダラー・ベイビー」「父親たちの星条旗」)の音楽担当も行っている。
また中年の歌手を主人公にした映画「センチメンタル・アドベンチャー」では、監督・主演をし、自らギター、ピアノを弾き、歌も歌っている。
この映画で共演した息子カイル・イーストウッドは、後にミュージシャンとなって、父親の監督作品(「ルーキー」「硫黄島からの手紙」「グラン・トリノ」「インビクタス/負けざる者たち」)では音楽を担当している。
そんな音楽に縁の深いイーストウッドが監督したのが、映画「ジャージー・ボーイズ」である。
原作はトニー賞受賞のミュージカル。
1960年代に活躍したアメリカン・ポップスの人気グループ「フォー・シーズンズ」の光と影を描いた物語だ。
「フォー・シーズンズ」といえば、「シェリー」である。
独特のファルセットで歌う、あの懐かしのヒット曲だ。
歌うのはフランキー・ヴァリ、この映画では舞台同様ジョン・ロイド・ヤングが演じている。
てっきり吹き替えだと思ったが、実際に彼自身が歌っているそうだ。
しかも他のメンバーたちの歌も、全員吹き替えなしというから驚きだ。
彼らの歌うシーンを観ているだけでも値打ちがある。
さらにドラマの方も歌に負けない面白さ。
イタリア系の移民街で育った不良少年たちが、歌を武器に次第にのし上がり、人気者になっていく軽快なサクセスストーリー、そしてその後に訪れる挫折と再会。
ドラマとしても文句なしの一級品。
さすがはイーストウッド、手堅い職人技である。
若造たちに注がれるイーストウッドの眼差しが辛辣で暖かい。
そしてラストで見せてくれる、出演者全員によるダンス・シーン。
ここではフォーシーズンズの後見役であるマフィアのボスを演じたクリストファー・ウォーケンまでが、一緒になって踊って見せてくれる。
さすが若い頃ダンサーだっただけあって、動きが軽やかだ。
この大団円によって映画は最高に盛り上がって終わる。
音楽映画らしいハッピーな終わり方に拍手喝采である。
それにしても齢84にしてこんなにも楽しめる映画を作り出すとは。
老いてますます盛んなイーストウッドに乾杯である。


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