風に吹かれて

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映画「舟を編む」

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本屋大賞に輝いた三浦しをんの小説の映画化作品。
読みたいと思いながら、機会を逸し、そうこうしているうちに映画化が始まった。
そしてこうやって映画を先に観ることになったのである。
しかし結果的にはそれで良かったのではないかと思っている。
そう思わせるのは映画の出来が良かったからに他ならない。

辞書作りには長い時間がかかる。しかも地道な作業の積み重ねである。
また結果がすぐに現れるというものではない。
商売という観点から見ると、これほど効率の悪いものはない。
しかしそれをやることで出版社は自らの質を問うことになる。
だからお荷物的な存在ではあっても、出版社としてはやめるわけにはいかないのである。
そんなことから辞書作りという部門は、出版社のなかでは隅に追いやられた窓際的な存在になっている。
しかし冷遇されながらも辞書作りに携わる編集者は、強い使命感を内に秘めながら、日々地道な作業に明け暮れているのである。

そんな辞書作りのなかのエピソードのひとつに「右」という言葉を、どう説明するかという問いかけがあった。
ごく身近でありふれた言葉だが、あらためてそれを具体的かつ正確に、そして誰にでもわかるような平明な言葉で説明するとなると、どう表現すればいいか判らないものである。
映画の中ではそれについての幾通りかの説明がなされたが、いずれもなるほどと思わせられるものばかり。
辞書作りの一端を垣間見ることのできる興味深いひとコマであった。
こうした作業を何十万という言葉を対象にやっていくのが辞書編纂という仕事なのである。
まさに言葉の海をいつ果てるともなく航行するという作業なのだ。
こうした経緯を見ているうちに、大事業というものはこつこつと時間をかけた地道な作業の積み重ねから、成されるものなのだということが伝わってくる。

三浦しをんの小説はこれまでに「風が強く吹いている」と「まほろ駅前多田便利軒 」の2本が映画化されている。
どちらもそれなりに面白かったが、今回の「舟を編む」はとくに面白かった。
ドラマチックな盛り上がりもなく、ひたすら辞書を作ることだけの内容なのに、飽きずに面白く観ることができた。
これはシナリオの良さ、演出の良さももちろんのことだが、何よりも出演者たちの役割が大きい。
なかでも主演の松田龍平とオダギリ・ジョーが良い。
そこに加藤剛、八千草薫、渡辺美佐子、小林薫、伊佐山ひろ子といったベテラン俳優たちの渋い味わいが加わる。
やはり映画は魅力的な俳優たちのキャラクターに負うところが大きい。

彼らの姿を見ているうちに、不器用だけど飽きずにひとつのことを積み重ねていく生き方の何と素晴らしいことか、そうしたことをしみじみと感じさせられたのであった。


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今野敏「隠蔽捜査シリーズ」

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今野敏の「隠蔽捜査」がシリーズ化されていることは、先日のブログに書いたが、その第2話から第5話までをまとめて図書館から借りてきた。
そして一日一冊のペースで読み進め、今日すべてを読み終わった。
これほど夢中になって読んだのは久しぶりのこと。
すっかり主人公竜崎のキャラクターに嵌ってしまったのである。

警察という組織は上意下達が基本である。
すなわち階級が常に物を言う社会である。
そんななかにあって竜崎の立場は微妙である。
第1話の連続殺人事件の捜査において、彼はこの事件を隠蔽しようとした警察上部の動きに反対する立場を貫いた。
さらにこの事件と平行して彼の息子が麻薬に手を出すという不祥事が発覚、悩んだ末に結局その事実を隠さず、家族に対しても同様の立場を貫くことにしたのである。
そして息子の罪を隠蔽することなく、自首をさせた。
その結果、責任を取る形で大森署の署長へと降格をさせられたのである。
だから第2話以降は、役職は地方警察の署長でありながら階級は警視長という特殊な立場の人になった。
すなわち役職は彼より上だが階級は下という者が大勢出現することになったのである。
そうした事実を竜崎は時に応じてうまく使い分け、上からの無理難題やごり押しの防波堤にしながら、捜査を進めていく。
そのサジ加減が絶妙である。

警察内部には様々な確執やしきたりがある。
管轄同士の縄張り意識や主導権争い、面子や縦割り行政の弊害、キャリアとノンキャリアの確執、そうした人間関係や争いが日々複雑に絡み合っているのが警察という組織の実態である。
そうしたなかで、どうやって障害を切り抜けて事件を迅速に解決していくのかが、このシリーズの面白さである。
そんな降りかかる障害を切り抜けるための最後の切り札となるのが、警視長という彼の階級なのである。
いわば水戸黄門における葵の紋の印籠のようなもので、ここぞという時に使い分けることで絶大な効果を上げていく。
しかしそうした権威をしょっちゅう振りかざすわけではない。
そのことについてはむしろ「卑怯なやり方だと」真摯に考えている。
しかしそれが彼にとっての大きな武器であることは間違いなく、実際その伝家の宝刀を抜いた時の効果には目が覚めるようなものがある。
これを使うとそれまでの理不尽な無理難題が一気に萎んでしまうほどである。
そうした痛快な場面を味わえるのも、この小説を読むうえでの大きな魅力になっている。

第2話の「隠蔽捜査・果断」で扱われるのは大森署の署長としての初仕事となった立てこもり事件である。
さらに第3話の「隠蔽捜査・疑心」では来日したアメリカ合衆国大統領暗殺事件、第4話「隠蔽捜査・転迷」では麻薬取引に絡んだ外務官僚殺人事件、そして第5話の「隠蔽捜査・宰領」では衆議院議員誘拐事件を扱っている。
どの話も現場の息遣いが聴こえてくるような臨場感に溢れ、スリリングな展開が次々と繰り広げられていく。
さらに彼の家庭の問題も加わることで、さらなる窮地に立たされていく。
そうしたを難題に心乱されながらも、自らの感情をコントロールしながら果敢に事件に挑んでいく姿にはわくわくさせられるものがある。
しかしそうした事件のなかにあっても、実際に彼自身が現場で捜査をするわけではない。
あくまでも人を動かすのが彼の仕事である。
だから常に人を観察し、それぞれの持てる力をいかに発揮させて事件を解決していくかということに心を砕いている。
そしてその人身掌握と使い分けるうまさが竜崎のもつ大きな魅力になっているのである。
当初は彼に反発していた人たちが彼の高い能力や私利私欲のない姿を見ているうちに、次第に心を開き始め、最後は敬服するまでに至る展開には、快哉のみならず感動さえも覚えてしまう。
そして事件解決の最後には一緒に事件を解決したような安堵感と充実感に浸ることになるのである。

このシリーズには他に「初陣 隠蔽捜査3.5」というのがあるそうだ。
これはシリーズの準主役である伊丹俊太郎が主人公の小説である。
彼は竜崎の同期で幼友達、今は警視庁の刑事部長である。
いわば番外編のようなものである。
さっそく図書館で借りて読んでみようと思っている。


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初雪

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昨日初雪が降った。
降雪25センチという大雪である。
昨年の初雪が21日だから9日も早い。
また降雪が4センチだったから、今年の初雪はかなり多い。
この雪を降らせた寒気と冬型の気圧配置は数日は続くようだ。
積雪量はまだまだ増えそうだ。

周りは雪に覆われてすっかり冬景色になってしまった。
冬支度をやり残したままで、この大雪である。
このまま根雪にならないことだけを願っているが、果たしてどうなることやら。


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今野敏「隠蔽捜査」

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主人公の竜崎伸也は、東大法学部卒、国家一種試験に合格し、出世コースを順調に歩んでいる警察官僚である。
警察庁長官官房総務課課長という立場にあって、マスコミ対応や警察の組織防衛といったことを主な仕事としている。
絵に描いたようなエリート官僚である。

こうしたキャリア官僚が主人公になるのは珍しい。
通常こうしたエリートが登場する時は、権力を象徴する人物として描かれることが常だ。
権力を代弁しながら現場の人間の前に立ちはだかる大きな壁、悪くいえば障害となる人物として登場してくることが多い。
いわば憎まれ役であり、敵役である。
実際竜崎伸也も最初はそうした例に洩れず、エリート意識を持つ鼻持ちならない嫌味な男として登場してくる。
警察の組織防衛のためにはどうあるべきか、そのためにはどうすべきかを常に考えており、原理原則に忠実で外すことがない。
さらに出世のことを常に考えているためにその行動には隙がなく、エリート街道をまっしぐらの男である。
当然のように家庭はまったく顧みない。
警察庁のなかでは「変人」で通っている。

そんな融通の利かない嫌味な男だが、連続殺人事件の捜査のなかで動く姿を見ているうちに、次第にその印象が変わってくる。
揺るがない正義感や使命感、そしてそれを通すためにはどんな圧力に対しても決して意思を曲げることはない。
全力を挙げて立ち向かっていく。
私利私欲とは無縁で、国家公務員としてどうあるべきかを常に指針としている。
そしてそのための努力を惜しまない。
「正論が通用しないのなら、世の中のほうが間違っているんだ」というのが彼の基本姿勢である。
そして組織内部でそうしたことを実現させるためには出世して力を得ることが必要なのだと考えている。
そこには微塵も誤魔化しがなく、正しいと思うことは、人がどう思おうが貫き通し、けっしてブレることはない。
そしてそれは上に対しても下に対しても同じである。
その変わらぬ態度には清々しささえも覚えてしまう。
時には快感さえも。
そしてそんな彼に次第に魅せられ、どんどんと感情移入していってしまう。
まさに新しいタイプのヒーローの出現である。
そういうわけで面白さに一気に読み終わってしまった。
そしてまだまだこの先も読みたいという気分にさせられた。
幸いこれには続編があり、シリーズ化されているそうなので、さらに続きを読んでみようと考えている。
どんなドラマが展開されるか、今から楽しみである。

なおこの小説は第27回(2006年)吉川英治文学新人賞を受賞している。


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Category: 外国映画

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映画「偽りなき者」

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主演のマッツ・ミケルセンは「007/カジノ・ロワイヤル」で初めて知った俳優である。
その時に受けた印象が強く残っていたので、この映画を観ることにした。

マッツ・ミケルセンは、デンマーク・コペンハーゲン出身の俳優である。
俳優になる前はプロのダンサーとしても活躍していたそうである。
そのせいだろう、身のこなしが軽やかである。
1965年生まれだから現在48歳、年齢から考えるとこれからますます活躍が期待される俳優である。

映画の原題は「Jagten」、英題では「The Hunt」となっている。
すなわち狩りである。
映画のなかでも何度か鹿狩りの場面が出てくるが、この映画で狩られるのは人間、すなわちマッツ・ミケルセンが演じる主人公ルーカスである。
ある日彼は親友テオの幼い娘クララの作り話がきっかけで突然変態犯罪者のレッテルを貼られてしまう。
ごく些細なきっかけからついた子供の嘘ではあったが、それが思いもよらない大きな事件となって広がっていく。
そして町全体を巻き込んで、理不尽で陰湿な排斥が始まる。

いったん火のついた野火は簡単には消し去ることはできない。
最初はごく小さな火種だったものが、気がづくともうどうにも手の施し用がなく、その勢いを停めることは決してできない。
結局すべてを焼き尽くさなければその火は衰えることはないのだ。
そうしたいつ果てるとも知れない集団ヒステリーが不気味である。
その火の中を孤立無援のルーカスが、傷つきながらも必死に耐えていく姿が痛々しい。胸が締め付けられる。

小さな田舎町、保守的で閉鎖的な町で起きる事だけに、より身近な事件として迫ってくる。
こうした誤解から生じたいわれなき排斥は、誰の身にも降りかかる可能性があるだけにリアルで怖い。
いったいルーカスはどうなるのか、この悪夢のような日常から解放される日が果たして来るのだろうか。
目を逸らしたいような過酷な展開が続いていくが、最後までけっして目を離すことはできない。
そうした力強い訴求力を秘めている。

この映画でマッツ・ミケルセンはカンヌ国際映画祭で主演男優賞を獲得した。
そうした評価に値する名演である。
今後はさらに注目していきたいと考えている。


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プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2008年)還暦です。
性別:男

還暦という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

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