風に吹かれて

My Life & My Favorite things

Category: 読書

Tags: 時代小説  

Comment (0)  Trackback (0)

安部龍太郎「等伯・上」「等伯・下」

v0kW5O_aj2Z35Gp1367195822_1367195872.jpg

安土桃山時代に活躍した絵師、長谷川等伯の生涯を描いた小説である。
第148回直木賞受賞作品である。

能登国七尾(現・石川県七尾市)で能登国の戦国大名畠山氏に仕える下級家臣、奥村文之丞宗道の子として生まれた等伯(幼名又四郎)は、幼年期に染物業を営む絵仏師、長谷川宗清の養子になり、長谷川信春を名乗る。
地方の絵仏師として過ごしていた春信だったが、ある時天才絵師狩野永徳の「二十四孝図屏風」を見て目を奪われる。
それをきっかけに永徳に負けないような絵師になることを夢見るようになる。
そして養父母の非業の死をきっかけに京に上り、数々の苦難を潜り抜けた後に天下一の絵師になるまでがこの小説では描かれている。

数年前長谷川等伯の没後400年特別展が開かれ、話題になったことは記憶に新しい。
その画業がメディアで盛んに採り上げられていたのを目にし、初めて長谷川等伯という絵師の存在を知ったのだが、その生涯については何も知らなかった。
それをこの小説で初めて知った。

織田信長から命を狙われ、秀吉の時代になると絵師として重用され、頭角を現していくなかで、狩野派との軋轢が増してゆく。
そしてその争いのなかで天才絵師として将来を嘱望されていた息子久蔵を失うことになる。
そうした波乱の生涯が、千利休や近衛前久、さらには日乗、日堯、日通、日親、宋園といった法華宗の高僧たちとの交流を通して描かれていく。

そして伏見城に「松林図屏風」を完成させる場面で最大のクライマックスを迎えることになる。
信長の比叡山焼き討ちに遭遇したことで地獄を見、さらに信長軍に刃向かったことで長い雌伏の時間を過ごすことになった長谷川等伯。
その年月のなかで、義父母の非業の死、旅の途中での妻の死、狩野派との争いのなかでの息子久蔵の不審な死など、数々の死を見ることになる。
それは絵師として大成したいと願う自らの煩悩が招いたものだという意識が等伯のなかにはある。
そうした苦しみや絶望から解き放たれて「松林図屏風」を完成させていくまでが、ダイナミックに描かれていく。

等伯の実物の絵は見たことがない。
だが、小説を読んでいるうちに無性に見たくなってきた。
今後そうした機会が果たして訪れることがあるだろうか。
長く心に念じていると、いつか必ず実現するものだということを誰かがどこかに書いていたのを読んだことがある。
それに倣って、念じ続けることにしようと思う。
そうするといつか実現することがあるかもしれない。
そんなことを思いながら小説を読み終わったのであった。


ブログランキング・にほんブログ村へ 
  ↑ クリック、お願いします。 ↑
スポンサーサイト
テーマ : 図書館で借りた本  ジャンル : 本・雑誌


Category: 病気・健康

Comment (0)  Trackback (0)

大学病院で検査

昨年秋から高血圧の治療を受けている。
といっても毎日朝食後に病院からもらった薬を飲むだけである。
ところが、いつまで経っても血圧は下がらない。
ほぼ同じ数値のままである。
そこでさらに詳しく調べることになり血液検査を行った。
その結果、アルドステロン症の疑いがあるという診断結果が出た。

アルドステロン症とは、副腎皮質から分泌されるアルドステロンというホルモンが過剰に出ることで起きる高血圧症のことである。
副腎に腫瘍ができることや肥大が原因で引き起こされる病状である。
高血圧症患者の約5~20%がこれが原因ということが最近になって分かってきたそうだ。
そこで大学病院でさらに詳しく調べる必要があるということになり、紹介状をもらって弘前大学付属病院に受診に行った。

受付開始が8時半からということなので、8時過ぎには受付に並んだ。
手続きが終わると2階の内分泌・代謝・感染症内科に行き、様々な診察が行われた。
まず体温・身長・体重・血圧の測定、医師による問診、専門医による診察と続いていく。
さらに看護師による今後の治療や検査の説明があり、最後はレントゲン撮影、心電図、採血、採尿という手順であった。
結局終わったのは、午後2時半過ぎ、およそ半日を要した診察であった。
その結果、来月には検査のために2週間ほど入院ということになった。
さらにその検査結果を見て、後日再度入院して副腎腫瘍除去の手術を行うことになるそうだ。

思っていた以上に話が大ごとになっていく。
戸惑ってしまうが、仕方がない。
しかしここまで来れば、後は潔く流れに身を任せるしかない。
観念することにした。

それにしても歳をとると、予想もしなかった事態に遭遇するものである。
昔は風邪で病院に行くくらいがせいぜいだったが、ここ数年は膝の手術、痔の手術、そして今回の副腎と手術づいている。
手術など他人事のように思っていたが、今や手術の常連になってしまった。
だがとにかく今はくさらずに入院生活をできるだけ快適に過し、無事手術が終わることだけを願っている。

nyuinannai.jpg



ブログランキング・にほんブログ村へ 
  ↑ クリック、お願いします。 ↑
テーマ : 薬・医者・病院等  ジャンル : 心と身体


Category: 読書

Tags: 山本一力  時代小説  

Comment (0)  Trackback (0)

山本一力「いっぽん桜」「八つ花ごよみ」

ipponzakura.jpg

いずれも山本一力の短編集だが、どちらも題名に花の名前をつけた短篇ばかり。
「いっぽん桜」のほうは「いっぽん桜」「萩ゆれて」「そこに、すいかずら」「芒種のあさがお」の4篇が、「八つ花ごよみ」は「路ばたのききょう」「海辺橋の女郎花」「京橋の小梅」「西應寺の桜」「佃町の菖蒲」「砂村の尾花」「御船橋の紅花」「仲町のひいらぎ」の8篇が収められている。
いずれも市井の名もなき人たちの人情話ばかり。
江戸の風情を味わいながら、寄席で気持ちのいい噺を聴いているような気分にさせてくれる。
その彩りになっているのが、それぞれの花という趣向である。
桜、萩、すいかずら、あさがお、ききょう、女郎花、小梅、菖蒲、尾花、紅花、ひいらぎ、といった花々である。
このうちよく知らないのは女郎花(おみなえし)と尾花。
そこでちょっと調べてみたところ次のような花だった。

まず「女郎花」はオミナエシ科の多年草で、日当たりのよい山野に生える高さ約1メートルほどの草花。
夏の終わりから秋に、黄色の小花を多数傘状につける秋の七草のひとつ。

ominaesi.jpg
<女郎花(おみなえし)>

そして次の「尾花」だが、これはススキの別名だそうだ。
聞いたことのない名前だとは思っていたが、ススキとは。
馬の尾に似ているところからススキの別名として使われたということだ。
これも秋の七草のひとつ。
ちなみに秋の七草を数えてみると、女郎花、尾花(ススキ)、桔梗、撫子(なでしこ)、藤袴、萩、葛(くず)となり、このうち4つがこれらの短篇の題名に採り上げられている。
さらに春の桜、小梅、菖蒲、夏の紅花、すいかずら、あさがお、冬のひいらぎ、と春夏秋冬の花々が並べられている。
そうしたことを念頭に置きながらそれぞれの話を読んでいくと、よりいっそう深く味わえるかもしれない。

今回は、この2冊の短編集で、思わぬ勉強をすることができた。
こういうことも読書の楽しみのひとつである。


ブログランキング・にほんブログ村へ 
  ↑ クリック、お願いします。 ↑
テーマ : 図書館で借りた本  ジャンル : 本・雑誌


Category: 読書

Tags: 藤沢周平  時代小説  

Comment (1)  Trackback (0)

藤沢周平「風の果て」

18746681.jpg

久しぶりに藤沢周平の小説を読んだ。
「風の果て」である。
軽輩の子として生まれた若者、上村隼太が様々な苦難の末に筆頭家老にまで至る道筋を、同じ道場で学んだ野瀬市之丞、杉山鹿之助、寺田一蔵、三矢庄六といった友人たちとの交流を通して描いた物語である。

人生には様々な分れ道がある。
そうした岐路に立ったとき、どの道を選ぶかで、その後の人生が変わっていく。
ある程度の年齢に達すると誰しもが等しく感じる感慨である。
そんな節目節目の分れ道を、主人公桑山又左衛門(若き日の上村隼太)と4人の友人たちの姿を借りて語られていく。
そこには幸運もあれば悲運もある。
野瀬市之丞は藩命で寺田一蔵を斬ることになり、上村隼太は杉山鹿之助(後の杉山忠兵衛)と政敵となって争わなければならず、さらに最後は野瀬市之丞から果し合いを挑まれるということになってしまう。
仲のよかった5人の若者たちが、それぞれに自らの人生を歩んでいくなかで、こうした不幸な出来事と遭遇しなければならなくなってしまうという皮肉。
何ともやるせないものがある。

そうした荒波からただひとり離れている三矢庄六と会った桑山又左衛門は

<「庄六、おれは貴様がうらやましい」
 と又左衛門は言った。
「執政などというものになるから、友だちとも斬り合わねばならぬ」
「そんなことは覚悟の上じゃないのか」
 庄六は、不意に突き放すように言った。
「情におぼれては、家老は勤まるまい。それに、普請組勤めは時には人夫にまじって、腰まで川につかりながら掛け矢をふるうこともあるのだぞ。命がけの仕事よ」
「・・・・・・」
「うらやましいだと?バカを言ってもらっては困る」>


また10年ぶりに出合った野瀬市之丞との次のような場面。

<「相手は二十石でも三十石でもいい。おれもさっさと婿に行くべきだったな。」
 と市之丞が言っている。本音に聞こえた。
「しくじった」
「おれもしくじった。」
「おまえはしくじったとは言えまい」
 語気鋭く、市之丞が聞きとがめた。
「いまは代官だ。やがて郡奉行になるのも間違いなかろう。何を言ってるんだ。のぞんだとおりになって来ているではないか。」
「・・・・・・」
 形だけはな、と隼太は思ったが、ここで妻の満江と気持ちが通じないなどということを、市之丞に言うつもりはなかった。
 だが、若いころのことを話しているうちに、秋葉町のはずれにある普請組組屋敷の前の路上で、庄六の嫁になる娘と一緒だった井上という家のつつましげな娘を見たことを思い出し、いまとは違う、平凡だが平穏無事な暮らしもあったかなという思いが、ちらと胸をかすめたことも事実である。しかし市之丞に言われてみると、それはただの感傷に過ぎなかったようでもある。
 それにしても、過ぎ去ったつつましい思い出が、消えるどころか、だんだん好ましさを増して思い出されてくるのはなぜだろうか。
「そうか」
 気を取り直して、隼太は言った。
「おれは、愚痴を言ったりしちゃいかんのだな。」
「愚痴なんぞ、言うな、おれも言わん。」
 市之丞が酔いの回った声で言った。
「おれはおれの道、おまえさんはおまえさんの道を行くしかない。ひとそれぞれだ。いちいち後悔してもはじまらん。」>


胸に迫るものがある。

どの道を行こうとも、結局人はみな幾ばくかの後悔を胸に歩いていくものなのである。
苦いものがある。

しかしこうして読んでいくと藤沢周平の小説はやはり深いものがある。
とくに描かれた人間の厚みや深さが尋常ではない。
抑えた筆運びながら、人間の本質に鋭く迫ってくる。
読者を惹きつけてやまないところである。

久しぶりに読んだ藤沢周平の小説にどっぷりと嵌り、さまざまな思いが駆け巡った。
またもういちど彼の小説を追いかけてみようかなと考えている。


ブログランキング・にほんブログ村へ 
  ↑ クリック、お願いします。 ↑
テーマ : 図書館で借りた本  ジャンル : 本・雑誌


Category: 読書

Comment (0)  Trackback (0)

高野和明「ジェノサイド」

genocide.jpg

いちおう冒険小説ということになるのだろうが、このジャンルのものはそれほど好みというわけではなく、むしろあまり手が出ないジャンルである。
しかし「このミステリーがすごい」1位をとったことや、壮大なスケールの小説という評判につられて読んでみた。

「ジェノサイド」とは大量虐殺を意味する言葉である。(英: genocide)
アフリカと日本、そしてアメリカを舞台に繰り広げられる人類滅亡の危機をからませて描いた壮大な物語である。

人類の進化、創薬、戦争、現代政治の裏面史など、この小説に関連する専門的な知識が、かなり綿密に調べられており、そうした記述が頻繁に登場してくる。
こうした知識は荒唐無稽とも思える内容にリアリティーを持たせるための重要な要素になっているのは間違いないが、それにしてもいささか煩雑すぎる。
それを読まされる度に、専門的な勉強をさせられているようで、いささか手間取ってしまう。
しかしそうした煩わしさを我慢しながら読み進めていくにしたがって、俄然面白くなっていく。
そして最後のアフリカ脱出行からは、もう手に汗握る展開で、夢中になって読み進んでいった。

確かにスケールの大きな話で、日本の冒険小説もここまで来たかといった感想を抱いた。
しかしそれでも諸手を挙げて傑作だ、と言うにはいささか躊躇してしまう。
それは作者のかなり強引な見解や、負の遺産ともいえる人間の残虐性を、これでもかと見せつけられて辟易してしまったことにもよる。
こうした文明論的なスケールの物語となれば、そうした強引さや目を覆うような描写といったものも描かざるを得ないということは判らなくもないが、それにしてもといった印象である。
なるほど大いなる労作で、面白く読んだ。
だが、どうしても頷けない部分を残しながら読み終えたのである。


ブログランキング・にほんブログ村へ 
  ↑ クリック、お願いします。 ↑


Category: 読書

Comment (0)  Trackback (0)

池井戸潤「下町ロケット」

sitamachi-rocket.jpg

第145回(2011年上半期)直木賞受賞作品である。
受賞当時、話題になり面白いという情報が飛び交っていたが、題名の「下町ロケット」から連想したのは、町工場のオヤジたちが奮闘してロケットを作り上げるという、どこかコミカルで夢物語めいたものであった。
そうした勝手に作り上げた先入観があったので、この小説を読むことは、いささか躊躇したのであった。
また人気作品ということで、予約が殺到、なかなか借りる機会がなかったというのも大きな理由であった。
ところが先日図書館で本を漁っているとき、偶然この本と出合った。
直木賞受賞から2年が経ち、予約待ちの時期も終わり、ようやく書棚に並ぶことになったわけである。
こういう出合いも何かの縁であろう。
さっそく借りて読んでみることにした。

なるほど評判が高かったことがよく判る面白さであった。
よく練られた展開、飽きさせないテクニック、それらにつられてあっという間に読んでしまった。

「コミカルで夢物語めいた」物語という予想は、見事に外れた。
というよりも、もっとリアルで洗練された物語であった。

主人公は東京都大田区にある実家の町工場を引き継いだ若き社長である。
宇宙科学開発機構の一員として国のロケット事業に従事していたが、自らが責任者として開発を進めていたロケット打ち上げの失敗と、父親の死が重なって、稼業である町工場を引き継いだ。
そして高い技術力を生かして業績を伸ばしてきたが、ある日突然、大口の取引先から納品中止を言い渡される。
さらに大手のナカシマ工業から特許侵害で訴えられる。
こうしたダブルパンチのなか、どうやって苦境から逃れ、さらにはロケット開発という巨大なプロジェクトに社運を賭けて加わっていくことになるのかといった話が、スリリング描かれていく。

まったく出口が見つからず、会社は次第に追い詰められていく。
そしてギリギリのところまできたとき、ふとしたきかけから流れが大きく変わることになる。
そのあたりのダイナミックな展開はまさに圧巻であった。

著者の池井戸潤は三菱銀行の銀行マンから企業コンサルタントを経て小説家になった人である。
そうした経験がこの小説では遺憾なく活かされており、銀行や大企業の内幕、とくにその闇の部分がかなり専門的に、リアルに描かれている。
そして倒産が現実のものとして迫りくるなか、離反や造反によってバラバラになっていた会社が、大企業が課してきた高圧的ともいえる高いハードルに立ち向かうなか、結束を始め、そしてついにはひとつになっていく。
そうした展開を読んでいるうちに、思わず胸が熱くなってしまった。

久々に胸躍らせて読んだ小説であった。
エンターテインメントの王道を行く、直木賞受賞が頷ける作品であった。


ブログランキング・にほんブログ村へ 
  ↑ クリック、お願いします。 ↑

テーマ : 図書館で借りた本  ジャンル : 本・雑誌


Category: 読書

Comment (0)  Trackback (0)

志水辰夫「うしろ姿」

usirosugata.jpg

志水辰夫の小説を読むのは、4年前に「男坂」を読んで以来のことである。
「うしろ姿」も「男坂」同様の短編集である。
「トマト」「香典」「むらさきの花」「もう来ない」「ひょーう!」「雪景色」「もどり道」の7編が収められている。

いずれも社会の荒波のなか、過酷な人生を生きてきた人たちばかり。
その己の過去を振り返り、それぞれが深い思いをもってひとつの決着をつけようとする姿が描かれている。

主人公たちはみな精一杯生きてきた人たちばかりである。
しかしそれは自ら思い描いた生き方というわけではない。
結局彼らは皆、そうした生き方しか出来なかったというだけである。
そしてそのことについて今更とやかく言っても仕方がないと考えてはいるものの、迷いや悔いといったものが押さえようもなく顔を覗かせる。
そんな主人公たちの複雑な胸中が、香り立つような筆遣いで描かれている。
そこから漂う哀愁は、独特の色合いを持っている。
ファンの間ではこれを「シミタツ節」と呼んでいるようだ。

志水辰夫は1936年生まれで、現在76歳、冒険アクションから恋愛小説、時代小説まで手がける作家である。
高知商業卒業後、公務員を経て、出版社に勤務、その後フリーライターとなり、40代で本格的に小説を書き始めて作家としてデビュー。
「うしろ姿」は2005年の作品、この小説を最後に現代小説を書くことをやめ、時代小説の世界一本に絞り込むことになった。
そのことについてあとがきに次のように書いている。

<わたしたちの時代は終わろうとしている。自分たちのたどってきた道とはいったい何だったのか。それは経済だけを突出させてきた道にほかならなかったが、豊かになることが最善だと信じて生きてきたのだからいまさらとやかく言える資格はない。手探りしながら生きてきて、いまたそがれに向って歩いていることを自覚するだけである。一緒に歩いてくれた読者がいただけでもしあわせな時代に生まれ合わせたと感謝している。この本を手にとってくださった方に心からお礼を申し上げます。この手の作品はこれが最後になります。>

こう書いて志水辰夫は時代小説という新たな世界へと旅立ったのである。
旅立つその「うしろ姿」からは、ひとつの時代が終わったことへの感慨や、それに区切りをつけた男の決意が漂っている。


ブログランキング・にほんブログ村へ 
  ↑ クリック、お願いします。 ↑
テーマ : 図書館で借りた本  ジャンル : 本・雑誌


Category: 読書

Tags: 山本一力  時代小説  

Comment (0)  Trackback (0)

山本一力「蒼龍」

souryu.jpg

山本一力の小説を最初に読んだのは「深川黄表紙掛取り帖」という小説であった。
この小説を読む前に、映画化された「あかね空」を観ており、それで興味を惹かれてこの小説を読んだように記憶している。
ところがこれがあまりピンとこなかったので、以後彼の小説は敬遠して読むことはなかった。
ただ先日「ぼくらが惚れた時代小説」を読んだことがきっかけで、それに誘われるようにもういちど彼の小説を読んでみようと思ったのである。
そこで選んだのがこの「蒼龍」という短編集であった。
結論から先に言うと、この小説は当たりであった。

表題作「蒼龍」のほか、「のぼりうなぎ」「節分かれ」「菜の花かんざし」「長い串」が収められている。
どの話も粒ぞろい。
「のぼりうなぎ」や「節分かれ」では商売をするうえでの工夫や辛抱の大切さを、「菜の花かんざし」「長い串」では武家社会を生きることの切なさや家族の絆、友情の尊さといったもの教えられた。
そして表題作の「蒼龍」では、困難な状況に置かれても希望を失わない夫婦の姿を通して、勇気を与えられた。

「蒼龍」は1997年にオール讀物新人賞を受賞した作品で、事実上のデビュー作である。
当時作者の山本一力はバブルで莫大な借金を抱え込み、小説を書くことでその苦境から逃れようと考えていた。
その姿を時代物に移し変えて書いたのが、この「蒼龍」という小説である。
作者の必死な気持ちが、作品のなかに脈々と流れているのが感じられる。

どの小説も読後感が爽やかで、しみじみとした人情が味わえるものばかり。
いい小説と出会えてよかった。

山本一力は同じ昭和23年生まれである。
そんな僅かな共通点ではあるが、そうしたものが見つかると存在が急に身近に感じられる。
これを機会に他の小説も、読んでみようかなと思っている。


ブログランキング・にほんブログ村へ 
  ↑ クリック、お願いします。 ↑
テーマ : 図書館で借りた本  ジャンル : 本・雑誌


Category: 外国映画

Comment (0)  Trackback (0)

映画「アルゴ」

argo.jpg

昨年度のアカデミー賞作品賞受賞が納得の映画であった。
手に汗を握るサスペンス映画である。
監督・主演はベン・アフレック、人質救出のエキスパート、トニー・メンデスを演じている。

1979年、イラン革命が激化するなか、アメリカ大使館に過激なイラン人たちが大挙押し寄せる。
その混乱の中、6人のアメリカ大使館員が脱出、カナダ大使の私邸に身を寄せた。
それが見つかれば彼らのみならず、人質の命も危険に晒されてしまう。
そこでCIAでは人質救出のエキスパート、トニー・メンデスを現地に派遣、偽のSF映画「アルゴ」製作をでっち上げ、そのスタッフと偽って6人を救出する作戦を敢行することになる。

とにかく最初から最後までハラハラドキドキの連続である。
冒頭のアメリカ大使館襲撃のシーンから緊迫したスリル満載である。
実写と再現を組み合わせた映像は迫力に満ちている。
大使館前で怒り狂うイラン人たち、その様子を大使館内から不安な面持ちで見つめる大使館員たち、そしてついに門を破ってイラン人たちがなだれ込んで来る。
その緊迫したカットバックで、もうすでに映画のなかにどんどんと引き込まれていってしまう。

これは事実を基にした映画というから驚きだ。
こんな奇想天外な作戦を考え、それを実行して見事に成功させたのだからなおさらである。
ただそれを都合のいいように脚色した映画だといった批判があるのも事実。
そうした政治的な立場や論争は無視できないことかもしれないが、それを別にすればエンターテインメントとしては王道をいく面白さである。

これまでにも「脱出」をテーマにした名作は過去にも数々ある。
それはたとえば、「大脱走」「飛べ、フェニックス」「脱走特急」などが思いつく。
「アルゴ」も、そうした映画に連なる名作といえるだろう。
ベン・アフレックの類稀なる才能を再認識させられた。


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
  ↑ クリック、お願いします。 ↑
テーマ : DVDで見た映画  ジャンル : 映画


Category: 読書

Tags: 山本一力  時代小説  

Comment (0)  Trackback (0)

山本一力、縄田一男、児玉清「ぼくらが惚れた時代小説」

jidaisyousetu.jpg

何か時代小説の面白いものはないかと探しているときに、偶然この本を見つけた。
時代小説作家の山本一力と評論家の縄田一男、そして児玉清の3人が、作家や作品について語った鼎談である。
興味をひかれて読んでみた。
山本一力は松本清張に出会って時代小説に目覚め、縄田一男は長州藩の祐筆の家柄ということもあって時代小説には特別の思い入れがあり、児玉清は少年時代に剣豪ものの面白さに夢中になって以来の時代小説のファンである。
いずれも年季の入った時代小説の読み手である。
そんな3人の時代小説に対する情熱と知識の豊富さは群を抜いている。
中里介山の「大菩薩峠」に始まり、白井喬二氏の「富士に立つ影」、そして吉川英治、山本周五郎、大仏次郎、山岡荘八、司馬遼太郎、池波正太郎、藤沢周平、松本清張へと話が及び、岡本綺堂、野村胡堂、子母澤寛へと遡り、さらに五味康祐、柴田練三郎、笹沢佐保、国枝史郎、川口松太郎、南原幹雄、南條範夫、新宮正春、山田風太郎、隆慶一郎、白石一郎、宮城谷昌光、北方謙三、平岩弓枝、杉本苑子、永井路子、北原亜以子、澤田ふじ子(その他にもまだまだいるが)と次々と興に乗って話は尽きない。
3氏ともほんとうに時代小説が好きなんだなということが熱く伝わってくる。
読んでいるだけで、時代小説が無性に読みたくなってしまう。
さらに話題は映画にまで及ぶので、時代劇ファンとしてはうれしい限りであった。

そもそもこの鼎談は、2005年の「週刊朝日」に掲載された、「読者が選ぶベスト『歴史・時代小説』」がもとになっている。
そのなかで、一般読者や各界の時代小説ファン974人が寄せたアンケート結果を見ながら3氏が話し合った。
しかしその場ではまだ話し足りなかったことから、この企画が持ち上がり、あらためて話し合ったものが、一冊の本としてまとまったのである。

その時のアンケート結果は次のようなもの。

作品別ベスト10は、

1.「坂の上の雲」司馬遼太郎
2.「竜馬がゆく」司馬遼太郎
3.「宮本武蔵」吉川英治
4.「蝉しぐれ」藤沢周平
5.「鬼平犯科帳」池波正太郎
6.「徳川家康」山岡荘八
7.「新・平家物語」吉川英治
8.「樅ノ木は残った」山本周五郎
9.「燃えよ剣」司馬遼太郎
10.「国盗り物語」司馬遼太郎

そして作家別ベスト10は、

1.司馬遼太郎
2.吉川英治
3.藤沢周平
4.池波正太郎
5.山本周五郎
6.山岡荘八
7.井上靖
8.吉村昭
9.大仏次郎
10.平岩弓枝

作品別ベスト10で読んでいないのは、「鬼平犯科帳」と「新・平家物語」、作家別ベスト10では、いちおう全員のものを読んではいるが、池波正太郎、大仏次郎、平岩弓枝のものはごくわずかしか読んでいない。
夢中になって読んだのは、司馬遼太郎、藤沢周平、山本周五郎、そして吉川英治の「宮本武蔵」。
いちおうアンケート通りのオーソドックな読み方をしているようだ。
ただし今回の鼎談のなかでは、現在の作家たちについてはそれほど触れていないので、その点はいささか物足りない。
それでも初めて知るようなエピソードや、知識が盛りだくさんに詰め込まれており、歴史・時代小説の大まかな流れを辿れるような話題になっているので、これから時代小説の世界に足を踏み入れようとする人にとっては、貴重な水先案内になるだろう。
時代小説の魅力に触れることのできる楽しい本であった。


ブログランキング・にほんブログ村へ 
  ↑ クリック、お願いします。 ↑
テーマ : 図書館で借りた本  ジャンル : 本・雑誌


Category: 読書・題名別インデックス

Comment (0)  Trackback (0)

読書・題名別インデックス



会いたかった人
アイネクライネナハトムジーク
赤い指
赤めだか
赤目四十八瀧心中未遂
秋月記
悪人
アジアンタムブルー
あなたがいる場所
あなたと共に逝きましょう
アフターダーク
ア・ルース・ボーイ
荒地の恋
暗渠の宿

錨を上げよ 上巻
錨を上げよ 下巻
生きる
生きる言葉
悼む人
1Q84
いつか陽の当たる場所で
いっぽん桜
いねむり先生
いのちなりけり
いのちの姿
茨の木
いまも、君を想う
院長の恋
院内カフェ
隠蔽捜査
隠蔽捜査2・果断
隠蔽捜査3・疑心
隠蔽捜査4・転迷
隠蔽捜査5・宰領

ヴィヨンの妻
動かぬが勝
うしろ姿
埋み火
虚ろな十字架
海坂藩大全・下
海の鳥・空の魚
海辺のカフカ
海も暮れきる

永遠の0
映画の戦後
縁もたけなわ

黄金の服
小津ごのみ
男坂
お登勢
音もなく少女は
思えばいとしや“出たとこ勝負”
女のいない男たち




海峡
骸骨ビルの庭
解錠師(The Lock Artist)
海賊とよばれた男・上
海賊とよばれた男・下
海炭市叙景
回転木馬のデッド・ヒート
隠し剣 秋風抄
隠し剣 孤影抄
影法師
かずら野
風の歌を聴け
風の果て
風の中のマリア
活版印刷三日月堂 海からの手紙
カヌー犬・ガクの生涯―ともに彷徨いてあり
カフーを待ちわびて
神の子どもたちはみな踊る
歌謡曲の時代 歌もよう 人もよう
カラスの親指
カンガルー日和
漢方小説

起終点駅
奇跡の人
喜知次
忌中
キネマの神様
九十歳。何がめでたい
極北 Far North
霧の橋
銀の街から
銀漢の賦

空中庭園
苦役列車

警官の血
「月光仮面」を創った男たち
下品こそ、この世の花 映画・堕落論
剣光一閃 戦後時代劇映画の輝き
幻夜

恋しぐれ
幸福な生活
告白
心の壁、愛の歌
心残りは・・・
55歳からのハローライフ
コスモスの影にはいつも誰かが隠れている
小銭をかぞえる
五千回の生死
国境の南、太陽の西
骨風
五年の梅
今夜、すべてのバーで
今夜も落語で眠りたい




サクリファイス
聖の青春
三人噺 志ん生・馬生・志ん朝
3652

ジェノサイド
鹽壺の匙
色彩を持たない多崎つくると、 彼の巡礼の年
時雨のあと
私小説 from left to right
下町ロケット
七人のネコとトロンボーン
終末のフール
重力ピエロ
上京する文學
将棋の子
ショート・サーキット
昭和が遠くなって
職業としての小説家
書林逍遥
新参者
人生の現在地
人生は五十一から
「親鸞」上巻
新老人の思想

STONER ストーナー
スプートニクの恋人
掏摸(スリ)
すれ違う背中を

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
脊梁山脈
1973年のピンボール
潜水服は蝶の夢を見る

瘡瘢旅行
蒼龍
そして、人生はつづく
その女アレックス
その日の前に
そらいろのクレヨン




対岸の彼女
第三の時効
第2図書係補佐
太陽は気を失う
高峰秀子の流儀
抱く女
蛇行する月
黄昏に歌え
辰巳八景
多読術
ダンス・ダンス・ダンス
短編を七つ、書いた順

父からの手紙
父と子の旅路
チャイルド44 上下巻
中陰の花
中国行きのスロウ・ボート
中年シングル生活
散り椿

杖ことば
妻への詫び状
つまをめとらば
蔓の端々
露の玉垣

手紙
手のひらの音符
TVピープル
天地明察
天然理科少年

東京奇譚集
東京タワー オカンとボクと、時々、オトン
倒錯の舞踏
等伯・上
等伯・下
読書という迷宮
隣の女
トワイライト・シャッフル




永い言い訳
仲蔵狂乱
長門守の陰謀
なにも願わない手を合わせる
汝ふたたび故郷へ帰れず

逃げていく街
西の魔女が死んだ
贋世捨人
ニッチを探して
日本映画 隠れた名作
庭の桜、隣の犬
人間失格
にんげん住所録
人間臨終図巻
人情裏長屋

ねじまき鳥クロニクル第1部、第2部、第3部

のぼうの城
ノルウェイの森




博士の愛した数式
ばかもの
白痴群
走ることについて語るときに僕の語ること
八月の六日間
花宴
パン屋再襲撃

蜩ノ記
日暮れ竹河岸
秘剣
棺に跨る
羊と鋼の森
羊をめぐる冒険
ひとり語り
火花
雲雀の巣を捜した日
秘密
白夜行
氷平線
火を熾す

深川恋物語
武家用心集
舟を編む
分身

平成忘れがたみ
平凡
偏屈系映画図鑑

放浪記
星々たち
螢・納屋を焼く・その他の短編
ボックス!
ホテルローヤル
火群(ほむら)のごとく
本格小説 上・下
本の読み方 スロー・リーディングの実践




「まあ、ええがな」のこころ
毎日一人はおもしろい人がいる
マイラストソング 最終章
魔王
松のや露八

水の柩
弥勒の月

麦屋町昼下がり

求めない



  

役者は一日にしてならず役にたたない日々
八つ花ごよみ
疒(やまいだれ)の歌
闇の梯子
闇の華たち
やむを得ず早起き

歪んだ忌日
雪が降る
雪沼とその周辺
柚子の花咲く
指の骨

容疑者Xの献身
横しぐれ
余寒の雪
夜の橋
  



楽園のカンヴァス
ラブレス
利休にたずねよ
理由
流水浮木  最後の太刀
流星の絆
隣室のモーツアルト
流離 吉原裏同心

レキシントンの幽霊

老人力
64(ロクヨン)
ロゴスの市




わが人生の歌がたり・第一部・昭和の哀歓
わが人生の歌がたり・第二部・昭和の青春
わが母の記
別れの時まで
ワン・モア





テーマ : 読んだ本の紹介  ジャンル : 本・雑誌


カレンダー
03 | 2013/04 | 05
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -
プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2008年)還暦です。
性別:男

還暦という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

映画サイト「マイ・シネマ館」もやっています。
こちらもよろしく。

ランキングサイトに参加しています。
もしよければクリック、お願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へ 

cooldaddyの本棚
FC2ブログランキング
ブログ内検索
QRコード
QRコード

12345678910111213141516171819202122232425262728293004 2013