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風に吹かれて

My Life & My Favorite things

Category: 読書

Tags: エッセイ・評論  

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池部良「心残りは・・・」

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今年3人の名優が亡くなった。
佐藤慶と小林桂樹と池部良の3人である。
そのうちのひとり、池部良の自伝的エッセイ「心残りは・・・」を数日前から読んでいたが、今日やっと読み終えた。
池部良は日本映画を代表する俳優のひとりだが、晩年は俳優よりもエッセイストとしての活躍のほうが多かった。
それは父親が有名な洋画家<池部鈞(ひとし)>で、母親がマンガ家、岡本一平の妹という血筋を引いたせいだろう。
(すなわち池部良と画家、岡本太郎はいとこ同士ということになる。この本で初めて知った。)
軽妙洒脱なエッセイを数多くものにし、平成3年には「そよ風ときにはつむじ風」で日本文芸大賞を受賞している。

池部良と映画とのかかわりは、東宝撮影所のシナリオ研究所に研究生として入所したことに始まる。
1940年(昭和15年)のことである。
翌年シナリオ研究所を卒業、東宝に入社するが、監督志望だったものの助監督の空きがなく、不本意ながら文芸部へと配属される。
まもなく、島津保次郎監督からの要請で映画『闘魚』のチョイ役に起用され、以後は役者としての道を歩くことになる。
だがそれもつかの間、1942年(昭和17年)には軍隊に召集され、陸軍少尉となって南方戦線へと赴く。
そこで死線をさまい、九死に一生を得て、終戦の翌年、昭和21年6月に無事帰国を果たすのである。
以後は文芸映画を中心としたスターとして、そのキャリアを着実に積み重ねていくことになる。
この本はそうした活躍のなかで出会った俳優や監督たちとのエピソードをまとめたものである。
登場する人物は、監督では、デビューのきっかけを作った島津保次郎にはじまり、木下恵介、小津安二郎、渋谷実、渡辺邦男、豊田四郎、黒澤明、谷口千吉、古沢憲吾、岡本喜八、篠田正浩等々、俳優では高峰秀子、原節子、久我美子、山口淑子、岸恵子、山本富士子、左ト全、三船敏郎、高倉健等々、映画史を飾る数々の人物が登場してくる。
池部良がもっとも活躍したのは終戦直後から1960年代あたりのころ。
この時代は、私が中学生のころで、当時の私にとっては文芸作品や都会派映画などに出演していた池部良は、関心の外であった。
どちらかといえば、大人向き映画専門の俳優だった彼の渋さは、子供だった私には縁遠いものであった。
理解するには幼すぎたのである。
ところが大学時代に名画座だったか、どこかの上映会だったかで篠田正浩監督の『乾いた花』を観たことでそのイメージは一変する。
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そこで見た池部良の姿はそれまでの彼のイメージとはまったく異なったインテリやくざの役で、虚無的で死の匂いを放つ姿には心底圧倒され、魅了された。
そしていっきに彼のファンになってしまったのである。
その後この役がきっかけとなって『昭和残侠伝』への出演へと繋がり、シリーズ最大の呼び物である高倉健との最強コンビ(花田秀次郎と風間重吉)誕生となっていくのである。
しかしこの映画への出演は、彼にとってはかなりの冒険であり、また大きなリスクを背負ったものでもあった。
実際この映画の予告編を見たときには、彼の姿が映し出されると、劇場内で軽い笑いが起きたことを憶えている。
それほど彼のやくざ姿は、一般の人にとっては違和感があったのだ。
しかし『乾いた花』を観ていた私は、笑い声を上げた連中は、おそらくその映画の彼を知らないからだ、きっとその評価が変わるに違いないと、秘かに思ったものであった。
そしてじっさいそのとおりになったのである。
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この映画でのふたりの道行きは仁侠映画のひとつの頂点を極めたものであった。
その様式美に観客は酔い、理屈抜きの喝采が集まった。
映画館の中で拍手と掛け声が沸き起こるという、まれな現象がその場面になると見られた。
そうした思い出をこの本を読んでいるうちに、鮮明に思い出した。

享年92歳、これでまた映画黄金時代のスターがひとりいなくなってしまった。
さびしい限りである。
冥福を祈りたい。


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テーマ : 俳優・男優  ジャンル : 映画


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