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風に吹かれて

My Life & My Favorite things

Category: 読書

Tags: 車谷長吉  

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車谷長吉「赤目四十八瀧心中未遂」

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「詩や小説を書くことは救済の装置であると同時に、一つの悪である。」と車谷長吉は書いている。
さらに「書くことはまた一つの狂気である。」とも書く。
「赤目四十八瀧心中未遂」もそうしたなかから生まれた小説なのだろう。
自らの恥部を徹底的に晒すことでそこに何が見えてくるか、そんな作者の切実な思いが圧倒的な力技で迫ってくる。

饐えた臭いのする薄暗いアパートの一室で、病気で死んだ豚や鶏のモツを串に刺し続ける男の姿は、修行僧の姿に近いものを感じる。
そしてその孤独な作業は、修行僧の行のようにも思えてくる。
普通の生活から滑り降り、ひたすら堕落のなかに落ちていこうとする男が辿り着いたところは、アマと呼ばれる尼崎、阪神電車出屋敷駅近くの、ブリキの雨樋が錆びついた町である。
そしてその心情を次のように書く。

心の中の一番寒い場所では「どないなと、なるようになったらええが。」という絶望が、絶えず目を開けていた。
こういう私のざまを「精神の荒廃。」と言う人もいる。が、人の生死には本来、どんな意味も、どんな価値もない。その点では鳥獣虫魚の生死と何変わることはない。ただ、人の生死に意味や価値があるかのような言説が、人の世に行われて来ただけだ。従ってこういう文章を書くことの根源は、それ自体が空虚である。けれども、人が生きるためには、不可避的に生きることの意味を問わねばならない。この矛盾を「言葉として生きる。」ことが、私には生きることだった。


空虚のなかを生きる男のまわりに出没するのは、やくざ、娼婦、彫物師、娼婦上がりの焼き鳥屋のセイ子ねえさん、そして背中に迦陵頻伽(かりょうびんが)の彫り物を背負った謎の女アヤ。
いずれもひと癖もふた癖もあるような人間たちばかり。
そしてどの人物も容易に人を立ち入らせようとはしない深い闇を抱えている。
そこに一歩でも踏み入ろうとすれば、手痛い傷を覚悟しなければならない、そんな危うい殺気を孕んでいる者たちばかりである。
「中流の生活」を忌み嫌い、ドロップアウトしてきた男ではあるが、ここでも彼は「よそ者」であり、居場所はないことを思い知る。
そしてある日、彫物師の愛人アヤから「うちをつれて逃げて」と懇願され、「この世の外へ」と踏み出そうとする。
「世間の外」で生きてきた男が、心を奪われた女の懇願で、誘われるままに「この世の外へ」と足を踏み入れようとする。
逡巡しながらも魔物に魅入られたように付き従っていく道行きは、まるで夢の中での出来事のようにも思える。
悪夢のような、とでも呼びたいような小説である。

車谷長吉は「最後の私小説作家」と呼ばれている。
私小説という形式は、すでに時代遅れのものであるにもかかわらず、その時代遅れの衣裳を纏うことで、あえて時代に背を向けようとする。
「私(わたくし)小説を鬻(ひさ)ぐことは、いわば女が春を鬻ぐに似たこと」だと車谷長吉は言う。
だがただ春を鬻ぐだけではない。
そこに巧妙な虚を交えることで、さらに深い作品世界を構築しようとする。
そして人間存在の魂の闇を、ただひたすらに見つめようとするのである。
それはもう私小説という枠には収まり切れない世界といってもいい。
白洲正子が車谷の小説を「神さまに向って言葉を発している」と評しているが、その言葉が頷けるような力が、車谷長吉の作品には漲っている。


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巨人、優勝

giants-nihonichi.jpg
昨夜の日本シリーズ第6戦は巨人が勝って優勝、日本一に輝きました。
日本ハムとの対戦成績は4勝2敗、MVPは阿部慎之助捕手が選ばれました。
巨人の日本一は7年ぶりのことです。
そのときも今回と同じく原が監督でした。
今年の原監督はWBC、リーグ、そして今回の日本シリーズと3回も優勝したわけですが、こういうこともめったにない記録ではないでしょうか。
間違いなく名監督への道を、歩んでいるのを感じます。

それにしても昨日の試合もハラハラドキドキでした。
もしこの試合を落としていれば、ひょっとすると日本ハムが優勝したかもしれません。
それほど拮抗した展開の日本シリーズでした。
でも振り返ってみれば、だからこそエキサイトしたいいシリーズになったのだろうと思います。
大いに楽しめた日本シリーズでした。

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