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風に吹かれて

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Category: 読書

Tags: 角田光代  

角田光代「対岸の彼女」

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つい先日のこと、角田光代の小説にはまっている妻が、娘から借りた本を読みながら涙を流していたが、それがこの「対岸の彼女」という小説である。
読み終わった妻から「ぜったいに読んで」という強いおすすめがあったので、さっそく読んでみた。

前回読んだ「庭の桜、隣の犬」は夫婦の話だったが、こちらは3人の女性の物語である。
まず一人目の女性は、30代の専業主婦、小夜子。
3歳になる娘の公園デビューに頭を悩ませるといった手ごたえのない日常を打開するために就職を決意、そこで出会った独身の女社長、葵との交流が始まる。
また葵自身も少女時代は、いじめに遭って転校をし、さらに転校先の女学校でもいじめの影におびえるといった暗い過去をもっている。
そして3人目の女性は葵がその学校で知り合った「魚子(ナナコ)」という少女。
物語は現在の小夜子と葵、過去の葵とナナコの話が交互に描かれていく。
小夜子は過去の葵と重なり、現在の葵はナナコと重なるという構造のなかから、彼女たちが抱えるさまざまな悩みや不安が浮かび上がってくる。
高校時代の葵とナナコの繊細で感じやすく、今にも壊れそうな心や虚勢が痛々しい。
そして若さゆえの暴走とその先にある悲しい結末。
大人になるということは、多かれ少なかれこういった痛みをともなうものだということを、今更ながらに考えてしまった。

「お友だちがいないと世界が終わる、って感じない?友達が多い子は明るい子、友達のいない子は暗い子、暗い子はいけない子。そんなふうに、だれかに思いこまされてんだよね」

「けどさ、ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、うんと大事な気が、今になってするんだよね」


少女たちの心の底に秘めた不安、孤独、声にならない叫び、が聞こえてくるようだ。

人は人と出会うことで、何かが変わり、何かが生まれる。
ひとりで堂々巡りをして出口が見つからなかった彼女たちが、それぞれの出会いを通して新たな一歩を踏み出していく姿を見ていると、そんな感想が浮かんでくる。

ハウスクリーンニングという仕事のなかで家の汚れを落としていくにしたがって、自らの心のわだかまりも同時に落ちていくといった描写が印象的だ。
そして、葵の乱雑に散らかった部屋を小夜子が片付けるラストでは、ふたりの心も同時に整頓されていくにちがいないという予感を残して終わる。

切ない中にも静かな力強さが感じられる小説だった。
第132回直木賞受賞作品。

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テーマ : お気に入り作品  ジャンル : 小説・文学


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還暦(10年前)という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
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