風に吹かれて

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映画「フェンス」

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原作はピュリッツァー賞を受賞したオーガスト・ウィルソンの同名の戯曲。
それを2010年に再演した舞台で主役を務めたデンゼル・ワシントンが、監督・主演で映画化した。
物語の舞台は1950年代のピッツバーグ。
主人公であるアフリカ系アメリカ人のトロイは、清掃作業の仕事をしている元野球選手。
かつて「ニグロ・リーグ」で活躍したことがあるが、メジャーリーガーという夢は叶わなないまま野球人生を終えている。
自分には実力があったにもかかわらず、差別によって道を閉ざされてしまったからだ。
その結果、清掃作業という仕事をせざるをえなかったと固く信じている。
そうした過去から、ふたりの息子には自分と同じような道を歩ませたくはないと考えている。
だがそんな思惑とは裏腹に、長男はジャズミュージシャンとしての成功を夢見、次男はプロフットボール選手となることを夢見ている。
それに対して「お前たちがいくら頑張っても、白人優位の世界で成功するなんてできるわけない。」「そんな夢みたいなことを考えていないで、俺のように汗水たらして地道に働け」と、息子たちの前に立ちはだかる。
けっして自説を曲げないデンゼル・ワシントンから、速射砲のような言葉が次々と繰り出されていく。
それによって有無を言わさず家族たちを捻じ伏せようとする。
その独断と偏見に満ちたセリフが圧倒的な迫力で迫って来る。
家庭内では独裁者のように絶対的力をもつトロイだが、いったん外に出れば地位が低く、けっして這い上がることのできない黒人の清掃員でしかない。
そうしたギャップが家庭内帝王としての力をますます強力なものにしてしまう。
出口の見えないスパイラルに陥ったまま、目に見えない敵にひとり立ち向かおうとするデンゼル・ワシントンの鬼気迫る姿が強く印象に残る。
そして最後は深い余韻に包まれる。
差別だけではない根の深さを感じさせる映画である。

この映画は昨年度のアカデミー賞で主要4部門にノミネート。
ヴィオラ・デイヴィスが助演女優賞を受賞している。
それにもかかわらず、この映画は日本未公開である。
内容は地味かもしれないが、それにしてもなぜにこれほどの秀作がと疑問に思ってしまう。


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2017年洋画ベスト9

1位:手紙は憶えている
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2位:マンチェスター・バイ・ザ・シー
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3位:最愛の子
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4位:ハドソン川の奇跡
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5位:ラ・ラ・ランド
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6位:フランス組曲
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7位:ラビング 愛という名のふたり
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8位:ライオン 25年目のただいま
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9位:わたしは、ダニエル・ブレイク
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10位:たかが世界の終わり
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映画「ザ・コンサルタント」

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数多くの伏線が張られており、そのすべてがユニークで面白い。
そしてその伏線のひとつひとつが丁寧に解き明かされていくたびに、カタルシスが味わえる。
また主人公の人物設定もユニークで、斬新だ。
自閉症ゆえに備わった天才的能力を生かし、会計士という表の顔と、スナイパーという裏の顔をもつ謎の男。
映画「レインマン」でダスティン・ホフマンが見せた、あの驚きの能力と共通するものだ。
そこに映画的な誇張はあるものの、アイデアはこれまでにはなかったもの。
しかも主人公がどうやって現在の姿に至ったのかを、過去に遡って詳しく解き明かしていくなど、説明は抜かりがない。
映画「ベスト・キッド」を思わせるようなエピソードもあって、思わずニヤリとさせられる。
そして映画そのものが、複雑なジグゾーパズルになっており、ラストで最後のワンピースが収まると、それで全ての謎が解けるという形態になっている。
見事な仕掛けである。
こうした緻密な脚本を書いたのが、ビル・ドゥビュークというシナリオライター。
以前観た「ジャッジ 裁かれる判事」を書いた、ライターだ。
この映画を含めまだ3本の作品しか書いていないというから驚きだ。
これからどんな作品を生み出すか、大いに楽しみだ。
そして監督はこちらも最近注目している「ウォーリアー」の監督、ギャヴィン・オコナー。
父親と兄弟というシチュエーションが「ウォーリアー」と共通するものがあるのはそのためだろう。
さらに主人公を演じたベン・アフレックが、このユニークな主人公を思い入れたっぷりに演じている。
その陰影ある姿はなかなか魅力的で、新しいヒーローの誕生を感じさせられた。
盟友・マット・デイモンの当たり役ジェイソン・ボーンに匹敵するヒーロー像である。
映画の最後は、続編を予感させるような終わり方。
おそらく続編が作られるにちがいない。
それを楽しみに待ちたいと思う。


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映画「日の名残り」

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何か映画でも観ようかと家内とふたりでレンタルショップに行った。
その時たまたま目にしたのがこの作品である。
カズオ・イシグロ原作のイギリス映画である。
家内はこれは観ていないと言う。
ならばカズオ・イシグロがノーベル賞を受賞したことでもあるし、この機会にもういちど観てみようと、借りることにした。

最初にこの映画を観たのは1995年のこと。
今から20年以上前である。
この映画を観て初めてカズオ・イシグロという作家の存在を知った。
そして日系二世の作家が、イギリスの伝統的な世界を舞台にこのような小説を書いたことに、不思議な思いを抱いたものだ。
調べてみるとその年に観た洋画のベストテンに選んでいる。
面白かったということになるのだろうが、ほとんど記憶に残っていない。
なので初めて観るようなもの。
実際、観て分かったことだが、憶えていたのはごくわずか。
主演がアンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンのふたりだということ。
そしてふたりがお互いに好意を持ちながらも、いっしょになることなく、別々の人生を歩まざるをえなかったということ。
そのくらいのことしか憶えていなかった。
そういうことは何もこの映画に限ったことではなく、どんな映画でも、また小説でもいえることで、よほど印象に残った作品でない限り、記憶は時間とともに薄れていくものだ。
いいものはやはり繰り返し読み観るべきだとつくづく思う。
そうすることで、そこにまた新たな発見がある。
そしてさらに深く理解することになる。
そのことをこの映画を観直してみて、またあらためて実感したのである。


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映画「ライオン 25年目のただいま」

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副題に「25年目のただいま」とあるように、この映画は迷子になった5歳の少年が、25年後に家族を捜し出し、再会を果たすという物語である。
事実をもとに作られた映画ということだが、そのことにまず驚かされる。
そしてそこにどのような経緯があったのか、詳しく知りたいという好奇心が大いに掻き立てられる。

映画は前半と後半に分かれており、前半は主人公の子供時代のインドが舞台、後半は成人した後のオーストラリアが舞台になっている。
主人公は5歳の少年サルー。
インドの田舎町で母、兄、妹と暮らしている。
ある日、兄のグドゥが働く町まで着いていくが、そこで兄とはぐれてしまう。
そして間違って乗った回送列車によって、1000キロ以上離れたカルカッタの街まで連れて行かれる。
そこで降り立ったサルーは、ストリートチルドレンになるが、後に孤児院に収容され、そこでオーストラリア人夫婦の養子として引き取られることになる。
これが前半のストーリー。
そして後半は成人したサルーが、苦労の末、家族を捜し出すまでが描かれる。
そのプロセスも見応えあるが、やはりこの映画のいちばんの見どころは、前半のインドでの少年時代の話である。
貧しい生活のなかで、母親を少しでも助けようと幼いサルーが兄と一緒になって懸命に働く。
またサルーがストリートチルドレンとなっての路上生活や、孤児院に収容されるまでの数々のエピソード。
わずか5歳の少年にとって、それは想像をはるかに超える過酷さである。
次々と襲ってくる不安と恐怖のなか、子供なりの直観と懸命さで何とか生き抜こうとする。
そんなサルーの健気な姿が胸に迫る。

この前半のくだりを観ていて、思い出したのが「冬の小鳥」という韓国映画である。
こちらも孤児院に収容された孤児の話だが、そのなかで主人公の少女に先輩格の少女があることを教える。
それはアメリカ人家庭に養子として迎えられるためには、英語を身に着けることが一番の近道であり、自分はそれを秘かに実践しているのだと話す。
逆境から脱け出すために、子供は子供なりの知恵を働かせ、わずかな希望に縋ろうとするのである。
それはこの映画でも同じである。
そして幸運は、はるか彼方からやってくる。
オーストラリアの裕福な夫婦の養子となって引き取られることになる。
数少ない幸運な子供となるが、忘れてならないのは、その陰に何万という不運な子供たちがいるということである。
さらに幸運な子供となっても、必ずしも幸せを掴むことができるとは限らない。
サルーの後に、もうひとりの養子となり、サルーの義理の兄となったマントッシュの場合がそれである。
彼はそれ以前の生活で受けた傷が、いつまでもトラウマとなって消えず、成人した後は家族から離れ、世間との交渉も断って世捨て人のように暮らしている。
養子となり貧しさから解放されても、それは彼にとっての救済にはなっていない。
こうした問題にはそんな側面もあり、一筋縄ではいかない根深さを抱えているのだということがさりげなく示されるが、それによってこの映画が単なるヒューマンなドラマというだけではない奥の深さをもったものになっている。
そうしたことを考えながら観ると、この映画の感動は、さらに深いものになるにちがいない。


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映画「たかが世界の終わり」

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「家庭の幸福は諸悪の根源」とは、太宰治の言葉である。
家族とはやっかいなもの。
時に優しく、時に苦しく、時に淋しい。
そして時に暖かく、時に冷たい。
そんな複雑な家族の姿を描こうとしたのが、この映画である。

物語は、12年ぶりに故郷に帰ってきた主人公と、それを迎える家族の話。
その再会の数時間が描かれていく。
主人公はゲイの作家。
死期が迫っていることを家族に伝えるために帰ってきたが、なかなかその機会が訪れない。
迎える家族は、母、兄、妹、そして兄の妻の4人、それぞれが屈折したものを抱えており、素直になれず、かみ合わないまま気まずい空気が流れていく。
とくに兄は弟に対して複雑な感情を持っており、口調は刺々しく、トラブルメーカーである。
過去に様々な問題があり、それを未だに引き摺っているのだろうことは容易に想像がつくが、そうした過去は明かされることはない。
ただ観る者の想像に委ねるのみ。
そして家族は最後まで歩み寄ることなく、苦い結末を迎えることになるのである。

映画は会話主体で進行していく。
そしてそれをカメラはクローズアップで捉えていく。
そうしたクローズアップの多用は、家族というものの近すぎる関係を表しているかのようだ。
「ハリネズミの理論」というのがあるが、近づき過ぎるとお互いが傷つけあうばかり。
人間関係を良好に保つには、適度な距離が必要である。
しかし家族同士では、その距離のとり方がなかなか難しい。
近づきたいのに近づけない、離れたいのに離れられない、家族にはそうしたジレンマが常につきまとう。
そんなことをふと考えた。

セリフはすべてフランス語であるが、これはカナダ映画である。
カナダの公用語の大部分は英語であるが、一部の地域ではフランス語も話されている。
特にグザヴィエ・ドラン監督の出身地であるカナダ・ケベックは、フランス語が公用語になっている。
そのことからこの映画はフランス語を使っており、ヴァンサン・カッセル、マリオン・コティヤールをはじめ多くはフランスの俳優である。

監督のグザヴィエ・ドランは、1989年生まれ、この映画を撮影した時点では27歳である。
その若さでこの映画である。
豊かな才能というべきか。

先日の映画「ラビング 愛という名前のふたり」のジェフ・ニコラズは39歳、さらに「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼルは32歳。
グザヴィエ・ドランは、それよりもさらに若い。
こうした才能あふれる若手の台頭を数多く目にすることは、映画ファンとしてはうれしい限りである。


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映画「ラビング 愛という名前のふたり」

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1950年代のバージニア州では、黒人と白人の結婚は法律で禁じられていた。
それが憲法違反であるという判決を勝ち取り、法律改正へのきっかけとなったのが、実在の人物、ラビング夫妻である。
その実話をモデルにしたのが、この映画である。

そうした法律が、わずか60年ほど前に存在していたことに、まず驚かされる。
さらにそれに違反したふたりが逮捕拘留、25年間の州外追放という罰則で裁かれる理不尽さにも怒りを覚える。
リチャードとミルドレッドのふたりは、将来の夢をすべて諦め、両親姉弟と別れてワシントンへと移り住む。
そして数年の後、公民権運動が盛り上がるなか、ミルドレッドがケネディ司法長官に宛てて、自分達の現状を訴える手紙を書く。
それがきかけとなって、事態は少しづつ動き出していく。

ドラマは激しい起伏はなく、ただ淡々とふたりの生活だけを追っていく。
それでいて映画は、終始緊張感に包まれている。
それは悪法によって自分たちの人生を捻じ曲げられてしまったラビング夫妻の身に、目に見えない不安の影が常につきまとっているからである。
そうした影に怯えながら、世間から身を隠し、声を潜めて生きていく。
ただ家族の幸せだけを願いながら。
大工であるリチャードの、黙々とブロックやレンガを積み重ねていく姿が、そうした態度の象徴のように思える。
その繰り返しの中から、彼らの言葉に出来ない複雑な感情が滲み出てくる。
そしてそうした迫害が、ふたりの愛をさらに深めていくことになる。

夫役のジョエル・エドガートンと妻役のルース・ネッガの演技が秀逸。
とくにジョエル・エドガートンの感情を押し殺した表情は印象的。
物言わぬ堅い表情だからこそ、却って苦しみや歓びの深さが、強く伝わってくる。
調べてみると、以前観た「ウォーリアー」で、主役の総合格闘家を演じた俳優であった。
印象がまったく違っていたので、同一人物とは思えなかったのだ。
幅広い演技の持ち主だと、あらためて思った。

監督のジェフ・ニコルズは、以前観た「テイク・シェルター」や「MUD マッド」の監督である。
いずれも南部の田舎町が舞台である。
そこに監督のこだわりを感じる。
まだ若干39歳の若さである。
注目度大の監督である。


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映画「壮烈第七騎兵隊」

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昨日のBSプレミアムで観た、エロール・フリン主演の1941年製作の西部劇。
監督はラオール・ウォルシュ。
「海賊ブラッド」、「ロビンフッドの冒険」など、エロール・フリンの代表作をともに作り上げてきた監督である。
相手役は、こちらもエロール・フリンと数多くの映画で共演してきた、オリヴィア・デ・ハヴィランド。
3人の集大成ともいえる映画である。

内容は南北戦争のヒーロー、カスター将軍の一代記。
ウエストポイント陸軍士官学校入学に始まって、南北戦争を経てリトルビッグホーンでの戦死に至るまでが描かれており、ハリウッド映画らしい陽気なユーモアを交えながらの一代記になっている。
カスター将軍についての評価はさまざまあるが、この映画では一貫して正義のヒーローとして描かれている。
必ずしも歴史通りとはいえないところもあるが、娯楽作としては致し方ないところ。
そのあたりのことは、「小さな巨人」、「ソルジャー・ブルー」など、インディアン側の視点から描いた映画が、参考になるだろう。

エロール・フリンは戦前から戦後にかけてのハリウッド・スターである。
あまり馴染のない俳優ではあるが、この映画の溌剌とした演技を見ていると、なるほど類まれなる魅力がある。
一世を風靡したスターだったことがよく分かる。
いっぽう相手役のオリヴィア・デ・ハヴィランドは、「風と共に去りぬ」(1939年)や「女相続人」(1949年)などで、お馴染みの女優である。
「遥かなる我が子」(1946年)と「女相続人」(1949年)で、2度のアカデミー主演女優賞を受賞した、ハリウッドを代表する女優である。
撮影当時26歳、こちらも光り輝き、強く惹きつける魅力に満ちている。
ちなみに妹のジョーン・フォンテインも、ヒッチコックの「断崖」(1941年)で、アカデミー主演女優賞を受賞しており、この賞を獲得した唯一の兄弟姉妹となっている。
なおオリヴィア・デ・ハヴィランドは、100歳を超えて今なお健在だということも、付け加えておく。
また若き日のアンソニー・クイン(当時25歳)が、インディアンの酋長クレイジー・ホース役で出ているのを発見できたことも、大きな収穫であった。
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上映時間140分という大作だが、途中ダレることもなく、飽きずに観ることができた。
1941年という製作年は、第2次世界大戦最中の時代である。
この映画に国威発揚の意識があっただろうことは想像に難くない。
そうした影響があったにしても、これはなかなかよく出来た娯楽大作である。
いい出会いであった。


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映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」

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英国内の社会問題をテーマに、反権力の立場で映画を撮り続けてきたケン・ローチ監督も、すでに80歳を超えた。
そんな高齢にもかかわらず、未だに映画を撮り続けている。
その最新作が、「わたしは、ダニエル・ブレイク」である。
そしてこの映画で、二度目のカンヌ国際映画祭のパルムドール賞に輝いた。

ケン・ローチ監督の映画の特徴のひとつに、ドキュメンタリー・タッチな撮影手法がある。
テレビ出身のケン・ローチ監督が、テレビの世界で培ったもので、その手法を使って労働者や移民といった社会の底辺で生きる人たちを描いていく。
この映画でも主人公、ダニエル・ブレイクの追いつめられた末の孤軍奮闘ぶりが描かれるが、疲弊した官僚的な壁を乗り越えることはできない。
そうした姿を、シングルマザーのケイティや隣人たちとの交流を交えながら、ドキュメンタリーのような映像で写しとっていく。
そしてそんな現実から何を感じ、どう思うかを、静かに問いかけてくる。
それはけっして政治的なメッセージではなく、飽くまでも庶民が生きる姿を真摯に捉えようとするものである。
そのため、映像には本物が持つ力強さがあり、観る者の心を掴んで離さないのである。

「私は依頼人でも、顧客でも、ユーザーでもない。怠け者でも、たかり屋でも、物乞いでも、泥棒でもない。国民保険番号でもなく、エラー音でもない。きちんと税金を払ってきた。それを誇りに思っている。地位の高い人には媚びないが、隣人には手を貸す。施しは要らない。わたしはダニエル・ブレイク。人間だ、犬ではない。当たり前の権利を要求する。敬意ある態度というものを。私はダニエル・ブレイク1人の市民だ。それ以上でも以下でもない。」

これはダニエル・ブレイクが最後に書き残した言葉である。
そこに込められているのは、貧しくとも自分を偽らず、懸命に生きようとする庶民の心の底からの叫びと尊厳である。
その言葉が胸に迫る。


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映画「レッド・リーコン1942 ナチス侵攻阻止作戦」

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2015年のロシア映画、日本未公開だが、見応えのある作品。
大げさな題名から、よくある戦争アクション物かと思ったが、予想に反してなかなか見せる人間ドラマで、思わぬ拾いものであった。

時は1942年、ドイツ軍がソ連に攻め込んだ、いわゆる独ソ戦さなかの物語である。
ウラル山脈の森林地帯にある、小さな村に配備された少数の守備部隊。
前線から離れているため、緊張感はなく、酔っ払った兵士が問題を起こすことも珍しくない。
苦り切った隊長のヴァスコフは、代わりに酔っ払わない兵士を寄こせと要求。
やってきたのは女性兵士ばかり。
がっかりするが、ドイツ軍の飛行機が来ると、意外な活躍を見せる。
彼女たちはそれぞれ家族や恋人をナチスに殺され、ドイツ軍に対する強い憎しみがあり、ドイツ軍をやっつけようという強い使命感を持っている。
そうした彼女たちの過去が、繰り返し映し出されていく。

ある日、森で数名のドイツ兵が目撃される。
そこでヴァスコフは、女性兵士5名を選んで、森の奥深くへと偵察に出発するが、少人数と思っていたドイツ兵が、予想をはるかに超えた大人数であった。
それは森の先にあるシベリア鉄道を抑えるために、送られた部隊だということが、次第に分かってくる。
ヴァスコフは救援部隊を呼ぶために、兵士ひとりを帰すが、救援部隊が駆け付けるまでの間、残った女性兵士たちとともに戦うことを決意する。
圧倒的に不利な状況のなか、決死の戦いが始まる。
そしてひとりまたひとりと、女性兵士たちが倒れていく。

独ソ戦では、多くの女性兵士が存在したそうだ。
ほとんどが20歳前後の若い女性たちで、なかには男の兵士を凌ぐほどの活躍をした兵士もいたという。
あまり多く語られることのない、戦争の裏面史である。

この映画は、1973年に作られたソ連映画「朝やけは静なれど…」のリメイク作品で、オリジナルのこちらは、アカデミー外国語映画賞にもノミネートされたということだ。
ロシア映画らしく、重くリアルな戦争映画であった。


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プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2018年)70歳です。
性別:男

還暦(10年前)という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

映画サイト「マイ・シネマ館」もやっています。
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