風に吹かれて

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映画「シェイプ・オブ・ウォーター Shape of Water」

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昨年度のアカデミー賞で13部門でノミネート、作品賞、監督賞、音楽賞、美術賞の4部門で最優秀賞を獲得した話題の映画である。
それが新作レンタルで登場、さっそく借りてきた。

米ソ冷戦時代のアメリカを舞台に、主人公イライザと半魚人の恋を描いたファンタジーである。
いわゆる異類婚姻譚の一種であるが、こうした話は神話や説話によって昔から語られてきた物語である。
映画でいえば「キングコング」や「美女と野獣」などがそれにあたる。
それらの映画では怪獣たちが人間の女性に魅せられるが、この映画では女性の側から怪獣に惹かれていく。
そこが大きく違うが、それは主人公イライザが幼い頃のトラウマがもとで声を出すことができないという設定に基づいている。
孤独な魂がもうひとつの孤独と出会って心を通わせる。
囚われて自由を奪われた半魚人に惹かれていくのは当然というわけだ。
外見の異様さは彼女にとって障害とはならない。
それをたやすく飛び越える資質を彼女は持っている。
それは彼女の生活を見れば一目瞭然。
親友であるアパートの隣人ジャイルズはゲイの老画家、また同僚で友人の掃除婦ゼルダは黒人の女性と、いずれも社会の片隅で生きるマイノリティである。
そして彼女自身は言葉が話せない。
半魚人はけっして遠い存在ではない。
恐怖の対象とは見ていない。
まるで子犬に近づくような優しさで半魚人と触れ合おうとする。
何と純粋で無垢で愛らしい姿であろうか。
その好奇心に満ちた眼差しを見ていると、昔観た「ミツバチのささやき」の少女の純真無垢な姿を思い出す。

そして物語の中盤、事態は一気に動き出し、米ソのスパイ合戦を絡ませた半魚人の救出劇で大いに楽しませてくれる。
またイライザの日常の描き方にも楽しみの要素が様々散りばめられている。
まず彼女が住むアパートは映画館の上にあるという設定である。
そこで上映されているのが史劇「砂漠の女王」。
その映画のストーリーが、この映画の物語ともリンクしている。
また隣人ジャイルズは古い映画が好きで、テレビで放映される昔の映画ばかりを観ている。
その映画に合わせてふたりでタップを踏む場面が楽しい。
そしてそれがイライザと半魚人がダンスを踊る幻想シーンへと繋がっていく。
SFがあり、ホラーがあり、活劇がある。
さらにそこにミュージカルまでが加わるという、まるでオモチャ箱をひっくり返したような賑やかさ。
そうしたすべてが混乱することなく、イライザと半魚人のロマンスをしっかりと支えているのである。
映画好きには堪らないシーンが満載なのである。

監督はメキシコ出身のギレルモ・デル・トロ。
特殊メイクから映画の世界に入ったという変わり種。
少年時代に日本のアニメやマンガ、特撮映画に夢中になり、その影響を大きく受けたという。
いわゆりオタク精神の持ち主である。
そんな少年時代にテレビで映画「大アマゾンの半魚人」を観た。
映画では「半魚人は探検隊の女性に恋するけど、殺されてしまう。」
だが「半魚人があまりに可哀そうで、僕は、半魚人が彼女と仲良くデートする絵を描いた。それからずっと2人を幸せにしたいと思い続けて、40年以上かけて夢をかなえたんだ」
古い革袋に新しい酒を入れたというわけである。
そうやって生み出された「シェイプ・オブ・ウォーター」の半魚人は、異形の姿をしているが、人間に危害を加える怪物ではなく、柔らかな心を持った存在として描かれる。
そしてそこに自らを含めたマイノリティたちの怒りや悲しみを付与することで、確かな今日性を獲得しているのである。
さらに言えば、囚われ虐待され傷ついた半魚人の姿には、殉教者のイメージを重ねるて見ることもできる。
そうした読み解きができるのも、この映画がもつ豊かさである。

題名の「シェイプ・オブ・ウォーター」は日本語に訳すると「水の形」。
だが水に形などはない。
これについて監督は次のように語っている。
「愛と水には形はない。だがそれはどこへでも流れ込んでいける。そしてその入れ物に合わせて形を作る。愛と水はこの世で最も強い力なのだ。」
その言葉通り場所を変え、形を変えるたびに愛も水も変化していく。
その行きつく先が果たしてどんなものになるか、それは映画を観てのお楽しみ。
映画愛、モンスター愛に溢れたラブ・ロマンスを心ゆくまで堪能してほしい。


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映画「弁護人」

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韓国は映画作りが盛んな国だ。
そしてその質も高い。
かつては日本に追いつけ追い越せという時代もあったが、今やそのレベルを超えて独自の道を歩んでいる。
そして数々の名作秀作を生み出している。

韓国映画の質の高さを初めて認識させられたのは、「韓流」ブームが起きる以前の2000年。
映画「風の丘を越えて 西便制(ソピョンジェ)」と「シュリ」を観たことがきっかけであった。
「風の丘を越えて 西便制(ソピョンジェ)」は韓国の伝統的な民俗芸能であるパンソリを唄いながら各地を流れ歩く旅芸人親子の物語。
「シュリ」は韓国の情報部員と北朝鮮の女工作員の悲恋を描いたスパイ映画である。
そしてこのふたつの映画の上映を契機に、多くの韓国映画が日本に進出するようになったのである。

この時のインパクトが強く、以来、話題になった韓国映画などを観るようになったが、といって特別熱心な韓国映画ファンというわけではない。
だが気になる存在としていつもあり続けている。
そんななかから印象に残った作品をあげてみると
「八月のクリスマス」、「ペパーミント・キャンディー」、「JAS」、「グリーンフィッシュ 」、「殺人の追憶」、「グエムル 漢江の怪物」、「チェイサー」、「息もできない」、「大統領の理髪師」、「ブラザーフッド」、「オアシス」、「母なる証明」など。
いずれも個性豊かな作品ばかり。
そしてそれらに続いて今回はこの「弁護人」である。

主演はソン・ガンホ。
先にあげた映画の中でも「シュリ」、「JAS」「グリーンフィッシュ 」「殺人の追憶」、「グエムル 漢江の怪物」、「大統領の理髪師」に出演しており、韓国映画を代表する名優である。
そして私にとっても馴染のある俳優である。

物語は80年代の韓国で実際に起きた国家保安法違反事件を扱っている。
国家保安法とは、反国家的な活動を取締る法律で、北朝鮮を念頭に置いて作られた法律である。

この映画では民主化運動に関わった学生たちが、司法の捏造によって国家保安法違反に問われる。
その暴挙に対して、たったひとりで立ち向かったのが、ソン・ガンホ演じるウンソクという弁護士。
ウンソクは高卒ながらも苦学して弁護士となった人物である。
ところが高学歴やコネがものを言う法曹界にあって、ウンソクはのけ者的な存在になっている。
そんな連中を何とか見返したいと考えたウンソクは、法律改正をきっかけに土地登記や税務の分野に進出、それが功を奏して売れっ子弁護士となった。
成功を収めたウンソクは、苦学時代に無銭飲食をした飲食店のことを思い出す。
そこで食堂を訪ね、かつての非を詫びるが、女店主のスネは過去のことは問わず、成功したウンソクのことをともに喜んでくれたのである。
以来、客として頻繁に店を訪れるようになったが、ある時、スネの一人息子が国家保安法違反容疑で検察公安に逮捕されてしまう。
スネは息子のための弁護人として法廷に立つようウンソクに頼むが、政治に関心を持たず、金儲けだけに奔走するウンソクは躊躇する。
だがスネの必死な訴えに折れて息子の弁護人となることを決意、裁判に関わることになる。
そのなかで国家権力の闇の深さを知ることになり、それが正義感の強いウンソクの心に火をつける。
そして「国家を敵に回しても無罪を勝ち取る」と猛然と立ち向かっていくことなる。

この事件のモデルとなったのは、1981年の「釜林(プリム)事件」。
軍事クーデターで大統領となった全斗煥が、「北朝鮮のスパイや不満分子たちが政府転覆を画策している」として全国的に取り締まりを強化したなかで起きた事件。
社会活動家たちが捕えられて不法に監禁拘束、拷問による自白をもとに裁かれたのである。
それを当時税務弁護士であった盧武鉉(ノ・ムヒョン)が、被告となった学生たちの弁護人となって活動した事実をもとに映画化した。
盧武鉉は後に第16代大統領となったが、収賄容疑に関わったとして弾劾、それがもとで投身自殺をした。
そうした背景を持つ難しい役をソン・ガンホは果敢に演じたのである。

ソン・ガンホは、特別容貌が目立つというような俳優ではなく、むしろ外見的にはごく普通で、どこにでもいそうな地味な人物である。
ところがそんな彼が、いったん役を演じると、とたんに強烈な熱気を発散する。
地味であるだけに、どんな役にも染まやすく、その役になり切り、目を見張るような演技を見せてくれる。
「弁護人」での弁護士役も、そうしたソン・ガンホの持ち味を充分に生かした適役である。
その熱演がこの映画の第一の見どころである。

これまで観てきた韓国映画で感じることは、やはり国が南北に分断されたという特殊な事実である。
そのことがどんな映画にも影のように付き纏って離れない。
だがそうした事実が、映画に大きな力を与えていることも確かで、そこが他の国、とくに日本映画と大きく異なるところだろう。

さらに韓国映画のもうひとつの特徴に、けっして観客を飽きさせないサービス精神がある。
その貪欲で過剰なまでのサービス精神が、時に空回りをすることもあるが、いったんツボにはまると予想を上回るエネルギーを発揮することになる。
韓流ブームが起きたのも、そうしたサービス精神に魅せられたところがあるのかもしれない。
この映画にもそうした特徴が随所に見られる。
それがこの映画の大きな力になっている。

しばらく遠ざかっていた韓国映画だが、これでまた韓国映画をいろいろと観てみたいという気持ちになってきた。


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映画「プライベート・ライアン」

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一昨日の夜中である。
目が醒めたのでいつものようにテレビをつけ、何気なく見ていたところ、映画「プライベート・ライアン」が始まった。
いちど観た映画なので、観ないでおこうかと思ったが、冒頭の上陸の場面が始まると少しだけ見てみようという気になり、そのまま観続けたところ、すぐに目が離せなくなってしまった。
そして結局は最後まで観てしまうことになったのである。

この映画を最初に観たのは、1998年の公開時。
映画はノルマンディーのオマハビーチ上陸の場面から始まる。
上陸艇がオマハビーチに到達すると、乗り込んだ兵士たちが、次々と上陸していく。
その兵士たちに、ドイツ軍の銃撃が雨嵐のごとく襲いかかってくる。
兵士たちは成すべくもなく次々と倒れていく。
ある者は上陸することもなく海に沈む。
またある者は敵前に辿りつく前に倒れてしまう。
海岸は次第に兵士たちの死体で埋まってゆき、海は見る見る血の色に染まっていく。
まるで本物の戦争を見ているような凄惨な場面である。
それが延々と20分間にわたって繰り広げられていく。

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これほどリアルな戦闘場面はそれまで見たことがなかった。
思わず目を背けたくなるほどだが、それでいて目を反らすことができない。
迫力ある映像が怒涛のごとく押し寄せてくる。
心底圧倒されてしまった。
そしてこの場面の衝撃があまりに大きく、その余韻を引き摺ったため、その後のドラマは表面的な進行を追っただけで終わってしまったのである。

ところが今回見直してみると、初見の時とは違って、その後に展開されるドラマのほうに強く惹きつけられるものがあった。
確かにオマハビーチ上陸の場面は今見ても凄く、その迫力はいささかも衰えてはいなかったが、それでもやはりいちど見ているということもあって、かなり冷静に見ることができた。
そのため続くドラマも以前とは違い冷静な状態で観ることができ、以前気づかなかったことに気づかされ、深くドラマに入りこむことができた。
そこには新たな発見があり、この映画の良さをより深く理解することができたのである。
名作はやはり繰り返し観るべきだ。
つくづくそう思う。

そういうわけで寝不足にはなったが、そのことはまったく苦にならなかったのである。


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映画「はじまりへの旅」

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先日観たヴィゴ・モーテンセンの映画「涙するまで、生きる」は素晴らしかったが、こちらもそれに負けず劣らずの秀作であった。

アメリカ北西部の森林の奥深くで、現代社会に背を向けて自給自足の生活をしながら暮らすベン・キャッシュ。
それを演じているのが、ヴィゴ・モーテンセンである。
キャッシュには6人の子供がいるが、学校には行かせず、独自の教育方法で子供たちを育てている。
その教育とは、森の中でのサバイバル術を教え、ロッククライミングやランニングで体を鍛え、子供にとっては難解とも思えるような様々な本を読ませるなど、どんな状況に陥ってもけっして挫けないタフな精神と体を作り上げようとするもの。
型破りで偏った教育ではあるが、確実に成果を上げて、子供たちは逞しく育っている。
そんなある日、療養中だった妻レスリーが急死したという報せが届く。
母の葬式に参列したいという子どもたちの願いに応えて、改造したスクールバスで現代社会へと旅立つことになる。
その2,400キロに渡る長い旅のなかで、それまで経験したことのなかった様々な出来事に遭遇、それによって彼らがどう反応し変化していくか。
そしてその行きつく先にはどんなことが待ち受けているのか、そうした姿が描かれる。

いかにもアメリカならではといった映画である。
かってヒッピー文化華やかなりし頃、60年代、70年代には、現代文明に背を向けて生活するコミュニティがアメリカには数多く存在した。
またアメリカには学校に行かせず、家庭で子供を教育するホームスクールという制度が存在する。
そうした背景があるアメリカだからこそ、このような映画が生まれたともいえる。
実際この映画の監督であるマット・ロスは幼い頃、こうしたコミューンで暮らしていたことがある。
そうした実体験をもとに脚本を書き、監督をしたのである。
この映画がけっして荒唐無稽な話ではなく、リアルで説得力のある話として迫ってくるのは、そのような背景があるからだ。

またこの映画を観ていて思い出したのが、「モスキート・コースト」という映画。
ハリソン・フォード主演の映画で、この映画同様現代社会に背を向けて家族6人で中米のホンジュラスへと移住する。
そこで理想とする生活を築こうとするというもの。
過去にそうした映画があったことを考えると、この映画「はじまりへの旅」がけっして珍しい作品というわけではないということが分かる。

この映画でのヴィゴ・モーテンセンはやはり素晴らしい。
彼はキャッシュのように常識に囚われず、自分の主張や意思を曲げないといった信念の男がよく似合う。
「涙するまで、生きる」もそうした信念の男であったが、こちらはそれをさらにひとひねりした役であった。
そういう役を自然体で演じられるのが彼の魅力である。
この映画の原題は「Captain-Fantastic」。
まさしくファンタスティックな役柄であった。
ちなみにこの映画でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされている。

社会とは、家族とは、教育とは、そういった様々な問題を深く考えさせられる映画であった。


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映画「涙するまで、生きる」

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ヴィゴ・モーテンセンの長年のファンである。
彼を知ったのは「インディアン・ランナー」を観てからのこと。
1991年の映画なので、もう30年近く前になる。
その強烈な印象に魅せられ、以来ファンとなり、彼の出演と云うだけで観るようになった。
この映画もそうしたことから何の予備知識もなく観たが、「インディアン・ランナー」に負けず劣らず重い手ごたえのある映画であった。

時はアルジェリアがフランスの支配から独立しようとの機運が高まった1954年。
戦争前夜の不穏な空気が漂うアトラス山脈の山岳地帯が舞台になっている。
そこで小学校の教師をしているのが、ヴィゴ・モーテンセン演じるダリュという男。
ある日彼のもとに殺人犯であるアラビア人の男を連れて憲兵が現れる。
そして彼に代わってその男をタンギーという町まで連れていけと強引に命じて置いてゆく。
だがその気のないダリュは男を逃がそうとするが、男には逃げる気配がなく、逆に男からタンギーまで連れて行って欲しいと懇願される。
なぜ男がそうした行動をとるのか、アラブの「掟」に絡んだ事情が男の口から語られる。
そしてそれを証明するかのように男を殺そうとする村人たちの一団が襲い掛かってくる。
抜き差しならない状況に追い込まれたダリュは、男を連れてタンギーを目指すことになるが、その行く手には様々な危険が待ち構えている。
そしてそれらの障害を命がけで躱しているうちに、ふたりの間に友情のような心の交流が芽生え始める。

原作はアルベール・カミュの短編小説「客」。
カミュといえば不条理小説を書く作家として知られているが、こうしたリアルなものも書くのだということを初めて知った。
彼の小説は昔「異邦人」を読んだだけなので、詳しくは知らないが、原作になった小説は「転落・追放と王国」という作品集のなかに収められたもの。
アルジェリア生まれのカミュが、独立戦争勃発前の1954年に書いた。
それを大幅に作り直して出来たのがこの映画である。

この世の果てのような荒涼とした風景が圧倒的なスケールで迫ってくる。
その不毛の土地のなかで問わず語りに交わされるふたりの言葉が重い。
その会話の中からそれぞれの人生が朧げに浮かび上がり、立場を越えた共感がふたりの間に生まれる。
そしてタンギーの町を目前にして最後の決断を迫られることになる。

ヴィゴ・モーテンセンの魅力炸裂の映画である。
「インディアン・ランナー」以後、「ヒストリー・オブ・バイオレンス」や「イースタン・プロミス」などで個性的で強烈なキャラクターを演じてきたモーテンセンだが、この映画の彼もそれに勝るとも劣らない。

ヴィゴ・モーテンセンはデンマーク人の父のもと、ニューヨーク州マンハッタンで生まれ、2歳の時にベネズエラに移住、さらに1年後にはアルゼンチンへと移り住んでいる。
また両親が離婚した11歳の時には母親の故郷であるカナダ国境沿いのウォータータウン市に移住、さらに毎年夏になると父親の故郷デンマークへ行くという生活であった。
そうした経験から、彼は英語のほかにスペイン語、デンマーク語、フランス語、イタリア語などを流暢に話すことができる。
そんな才能を生かして彼は、アメリカ映画に限らず、各国の映画に出演することが多い。
この映画もアメリカ映画ではなく、フランス映画である。
そして彼が演じるダリュという男はスペイン系のフランス人という設定。
セリフはほとんどがフランス語、そしてときたまアラビア語も使う。
多国語に堪能な彼ならではの役柄といえよう。
この映画を観たことで、また新たな一面を見ることができたのである。


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映画「ドリーム」

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1962年のマーキュリー打ち上げ(アメリカ初の有人宇宙飛行)計画という国家プロジェクトを描いた映画である。
映画「ライトスタッフ」でも描かれたプロジェクトである。
「ライトスタッフ」ではそれに挑んだ宇宙飛行士の姿が描かれたが、この映画ではそれを支えたスタッフたちを描いている。

NASAがあるのは南部バージニア州。
アメリカの他の地域以上に黒人差別が激しいところ。
そして多くの天才たちが集められ、時代の最先端の科学技術を扱うNASAにあっても、それは例外ではなく、同様の差別が当たり前のように存在していた。
まず働く場所が白人と黒人(映画では非白人と表記)では厳然と分けられており、日常的に交流することはない。
また待遇面でも大きな隔たりがある。
そして仕事の内容は、ほとんどが雑用に等しいようなものばかり。
プロジェクトの重要な部分に携わることはけっしてない。
そうした差別をどのように乗り越え、いかにしてプロジェクトで大きな役割を果たすようになっていくか、それを描いたのがこの映画である。

主人公は数学の天才キャサリン、そして同僚のドロシーとメアリー。
黒人でしかも女性という二重のマイノリティである彼女たちの奮闘ぶりが、米ソ冷戦中の苛烈な宇宙開発競争の中で描かれる。

1961年、ソ連はガガーリンによる人類初の宇宙飛行に成功する。
先を越されたアメリカは、それに対抗するためにマーキュリー計画を立ち上げ、総力を上げてこの計画に取り組むことになる。
アメリカの威信がかかったこの計画は、何としても成功させなければならないが、難問山積、しかも特別研究本部では数式計算の間違いが続出、高度な計算をこなせるスタッフの必要性に迫られる。
そんな差し迫った状況のなか、優れた数学者であるキャサリンが新たなスタッフとして派遣されることになる。
しかしそこは黒人がけっして足を踏み入れることのできなかった特別な部署である。
黒人でしかも女性という二重のハンデを抱えたキャサリンの前に、様々な差別が待ち受けていた。
しかしそんな差別に挫けることなく、それと闘い、そして自分を磨くことで困難な壁を乗り越えていく。
そして同僚のドロシーとメアリーもそれに歩調を合わせるように困難な現実に立ち向かっていく。
そのプロセスは感動的、何度も胸が熱くなってしまった。

扱っているテーマは重いが、けっして暗くはならない。
というよりもひたすら前向きで明るいところがいかにもアメリカ的。
そしてそこがこの映画の魅力でもある。

先が読める展開、予定調和的といえばそのとおりだが、それをどう見せていくか、そこが腕の見せ所である。
そのために印象的なデティールを次々と積み重ね、リアルなものに仕立てていく。
それが無理なく伝わってきて、非常に説得力がある。
丁寧な映画作りをしているのが、よく分かる。

これは先日観た「フェンス」や「ラビング」と同じ時代である。
見比べながら観るとより興味深く観ることができる。

さらにつけ加えるならば、これは事実に基づいて作られた映画である。
しかしアメリカ初の有人宇宙飛行計画という華々しい歴史の陰にこうした事実があったということは、長い間日の目を見ることはなかった。
映画の原題は「Hidden Figures」。
Hiddenには「隠された」とか「知られざる」という意味があり、Figureには「数字」や「人物」といった意味がある。
すなわち「隠されていた人々」が、有人宇宙飛行を成功させるために「隠された数字」を探し求めるというのがこの映画である。
そしてその探し求める数字を見つけ出すのに大きな役割を果たしたのが、黒人女性のキャサリンたちというわけである。
そうした事実はタイトルロールで説明されるが、このように隠された事実が世紀を越えて掘り起されたことは非常に意義が深い。
こうした積み重ねによって時代は確実に変わっていく。
そのことをこの映画であらためて教えられた。
そして同時に大きな勇気と感動をもらったのである。


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映画「マリアンヌ」

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前半はカサブランカ、後半はロンドンへと場所を移して繰り広げられるサスペンス・ドラマ、そしてラブストーリーである。
時代に翻弄される男女の物語は、まさにハリウッド映画の王道、華麗で壮大なドラマである。

時は1942年、仏領モロッコのカサブランカ。
カナダ空軍のパイロットで、英国情報部の工作員として働くブラッド・ピット演じるマックスと、フランス人のレジスタンスであるマリオン・コティヤール演じるマリアンヌが、フランス人夫婦に偽装、ドイツ軍のパーティに潜入して大使暗殺を謀る。
生きて帰ることは叶わないと覚悟して臨んだ作戦だったが、無事生還、作戦遂行のなかで心を通わせたふたりは、ロンドン帰還後に結婚、やがて娘も生まれ、満ち足りた生活を送っていたが、マリアンヌにドイツ軍の二重スパイとしての疑いが浮上する。

前半のカサブランカの部分は、まさに映画「カサブランカ」と時も場所も同じである。
モロッコ最大の都市カサブランカは、当時フランス領であったが、ドイツ軍が占領、その支配下に置かれていた。
そのため、連合国側とドイツ軍の間では様々な暗闘が繰り広げられていた。
この物語もそんな背景の中で描かれるが、スパイ映画の王道を行く展開は、ハラハラドキドキの連続である。
もうそれだけで堪能してしまうが、続くロンドン篇では、それをさらに上回るサスペンスが待ち構えている。
二転三転するストーリー展開、美しく自在な撮影、当時を再現したゴージャスな美術や衣装、主役二人の息の合った演技、そしてそれらを巧みに生かした演出の冴えと、すべてがハリウッドの王道を行く一級品の味わいである。
こういう映画には安心して身を任せられる。
監督は名匠ロバート・ゼメキス。
「フォレスト・ガンプ/一期一会」、「コンタクト」、「キャスト・アウェイ」、「ザ・ウォーク」など秀作が多いが、この映画もそれらの代表作に連なるものだ。
また戦争を背景にした恋愛映画に名作は多いが、この映画もそうした系列に名を連ねることができる。
久しぶりにハリウッド映画の王道を、心ゆくまで堪能した。


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映画「フェンス」

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原作はピュリッツァー賞を受賞したオーガスト・ウィルソンの同名の戯曲。
それを2010年に再演した舞台で主役を務めたデンゼル・ワシントンが、監督・主演で映画化した。
物語の舞台は1950年代のピッツバーグ。
主人公であるアフリカ系アメリカ人のトロイは、清掃作業の仕事をしている元野球選手。
かつて「ニグロ・リーグ」で活躍したことがあるが、メジャーリーガーという夢は叶わなないまま野球人生を終えている。
自分には実力があったにもかかわらず、差別によって道を閉ざされてしまったからだ。
その結果、清掃作業という仕事をせざるをえなかったと固く信じている。
そうした過去から、ふたりの息子には自分と同じような道を歩ませたくはないと考えている。
だがそんな思惑とは裏腹に、長男はジャズミュージシャンとしての成功を夢見、次男はプロフットボール選手となることを夢見ている。
それに対して「お前たちがいくら頑張っても、白人優位の世界で成功するなんてできるわけない。」「そんな夢みたいなことを考えていないで、俺のように汗水たらして地道に働け」と、息子たちの前に立ちはだかる。
けっして自説を曲げないデンゼル・ワシントンから、速射砲のような言葉が次々と繰り出されていく。
それによって有無を言わさず家族たちを捻じ伏せようとする。
その独断と偏見に満ちたセリフが圧倒的な迫力で迫って来る。
家庭内では独裁者のように絶対的力をもつトロイだが、いったん外に出れば地位が低く、けっして這い上がることのできない黒人の清掃員でしかない。
そうしたギャップが家庭内帝王としての力をますます強力なものにしてしまう。
出口の見えないスパイラルに陥ったまま、目に見えない敵にひとり立ち向かおうとするデンゼル・ワシントンの鬼気迫る姿が強く印象に残る。
そして最後は深い余韻に包まれる。
差別だけではない根の深さを感じさせる映画である。

この映画は昨年度のアカデミー賞で主要4部門にノミネート。
ヴィオラ・デイヴィスが助演女優賞を受賞している。
それにもかかわらず、この映画は日本未公開である。
内容は地味かもしれないが、それにしてもなぜにこれほどの秀作がと疑問に思ってしまう。


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2017年洋画ベスト9

1位:手紙は憶えている
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2位:マンチェスター・バイ・ザ・シー
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3位:最愛の子
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4位:ハドソン川の奇跡
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5位:ラ・ラ・ランド
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6位:フランス組曲
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7位:ラビング 愛という名のふたり
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8位:ライオン 25年目のただいま
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9位:わたしは、ダニエル・ブレイク
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10位:たかが世界の終わり
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映画「ザ・コンサルタント」

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数多くの伏線が張られており、そのすべてがユニークで面白い。
そしてその伏線のひとつひとつが丁寧に解き明かされていくたびに、カタルシスが味わえる。
また主人公の人物設定もユニークで、斬新だ。
自閉症ゆえに備わった天才的能力を生かし、会計士という表の顔と、スナイパーという裏の顔をもつ謎の男。
映画「レインマン」でダスティン・ホフマンが見せた、あの驚きの能力と共通するものだ。
そこに映画的な誇張はあるものの、アイデアはこれまでにはなかったもの。
しかも主人公がどうやって現在の姿に至ったのかを、過去に遡って詳しく解き明かしていくなど、説明は抜かりがない。
映画「ベスト・キッド」を思わせるようなエピソードもあって、思わずニヤリとさせられる。
そして映画そのものが、複雑なジグゾーパズルになっており、ラストで最後のワンピースが収まると、それで全ての謎が解けるという形態になっている。
見事な仕掛けである。
こうした緻密な脚本を書いたのが、ビル・ドゥビュークというシナリオライター。
以前観た「ジャッジ 裁かれる判事」を書いた、ライターだ。
この映画を含めまだ3本の作品しか書いていないというから驚きだ。
これからどんな作品を生み出すか、大いに楽しみだ。
そして監督はこちらも最近注目している「ウォーリアー」の監督、ギャヴィン・オコナー。
父親と兄弟というシチュエーションが「ウォーリアー」と共通するものがあるのはそのためだろう。
さらに主人公を演じたベン・アフレックが、このユニークな主人公を思い入れたっぷりに演じている。
その陰影ある姿はなかなか魅力的で、新しいヒーローの誕生を感じさせられた。
盟友・マット・デイモンの当たり役ジェイソン・ボーンに匹敵するヒーロー像である。
映画の最後は、続編を予感させるような終わり方。
おそらく続編が作られるにちがいない。
それを楽しみに待ちたいと思う。


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テーマ : DVDで見た映画  ジャンル : 映画


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