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風に吹かれて

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Category: 外国映画

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映画「グリーンブック」

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昨年度のアカデミー賞で、作品賞、脚本賞、助演男優賞(マハーシャラ・アリ)を受賞した作品。
主演はヴィゴ・モーテンセン(主演男優賞にノミネート)。
ファンとしてはぜひとも観たい映画だったが、地元の映画館での上映はなく、観ることは叶わなかった。
アカデミー賞3部門受賞の映画が上映されないなど、昔では考えられないこと。
確かに内容的には地味かもしれないが、それにしてもである。
そんなわけでDVD化されるのを首を長くして待っていた。
そしてようやくレンタルされることになったのである。

時代は1960年代のアメリカ。
題名になっている「グリーンブック」というのは、人種差別の激しい南部を黒人が旅行する際に必携だったガイドブックのこと。
この案内書にはトラブルにあわずに利用できる黒人専用の施設が紹介されていた。
有名な黒人ピアニストであるドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)が南部を演奏旅行することになり、その運転手兼用心棒として雇われたのがトニー・バレロンガ(ヴィゴ・モーテンセン)、そのふたりの道行を描いたのが、この映画である。
その際手渡されたのが「グリーン・ブック」で、ガイドに従ってできるだけトラブルを避けようとするが、それでも行く先々で様々な人種差別が待ち受けており、そのなかでふたりがどのように向き合い、どう対処するか、またそれによってふたりがどう変化していくかが描かれている。

ドクター・シャーリーは黒人でありながらも高い教育を受けた教養人である。
思索的で穏やかだが、いっぽうでは人を寄せつけない頑なものを秘めている。
そんな天才ピアニストをマハーシャラ・アリは品格豊かに演じている。
一方トニー・バレロンガは粗野で無教養なイタリア系白人で、黒人に対しては偏見に満ちた差別意識をもっている。
それでも愛する妻とふたりの幼い息子のために、懸命に働こうとするよき家庭人でもある。
旅先では妻と約束した手紙を熱心に書くという律義さを見せたりする。
その手紙が物語のなかで、重要な働きをすることになるエピソードが忘れ難い。
演じるのはヴィゴ・モーテンセン。
デンマーク系アメリカ人である彼が、体重を20キロ近く増やし、見事にイタリア系白人になり切っている。
その変身ぶりには驚かされる。
過去「レイジング・ブル」でデ・ニーロが増量して以来、様々な俳優たちが役作りのために増量することが盛んに行われるようになったが、これもそのひとつ。
ついでに書けば、この映画では食事のシーンが多く、そのひとつひとつが、まさにいい味付けになっている。

水と油のようなふたりが旅するなかで、反発や歩み寄りを繰り返し、互いに持ち合わせていないものを教え合い学び合うことで、垣根がひとつひとつ掃われてゆく。
そして旅が終わった時には、どちらも人間的にひとまわり大きくなり、歩み寄り、かけがえのない存在になっている。
そんな軌跡が印象的なエピソードを交えながら、きめ細かく描かれている。
時には笑いを、時には感動を誘われる。
そして8ケ月の長い旅を終え、「クリスマスには必ず帰ってくる」という家族との約束を果たした後にやってくる心温まる結末には、思わず泣かされてしまった。

首を長くして待っていたことが、無駄ではなかった。
その期待を超えるよさで、映画は応えてくれたのだ。
大満足である。


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Category: 外国映画

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映画「孤島の王」

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「孤島」とは、ノルウェーのオスロ・フィヨルドにあるバストイ島のこと。
犯罪を犯した少年たちを収容して矯正するための施設があり、1915年に少年たちによる反乱事件が起きた。
その事実を基に映画化された物語である。

主人公は新入り収容者としてこの島に送り込まれたエーリングという少年。
彼に施設内での規則を教え込むように命じられたのが、同室のリーダーであるオーラヴ。
このふたりを中心に施設での生活が描かれていく。
当然自由はなく、過酷な労働に従事させられるという毎日。
エーリングは収容後すぐに脱走を企てるが失敗。
それによって生半な抵抗など簡単に拒絶してしまう「孤島」の厳しさが示される。
そんな希望のない生活のなか、寮長による性的虐待に耐えられなくなった同室の少年の自殺事件が起きる。
それが引き金となって少年たちの反乱が起きる。

脱獄ものと青春ものとふたつの側面を持った物語が、北欧の厳しい自然の中で描かれているのを見ているうちに、以前観た「サーミの血」を思い出した。
「サーミの血」は脱獄ものではないが、自由を求めて生まれ故郷から逃げ出すという意味では、共通するものを感じるからだ。
ただし「孤島の王」の厳しさは、「サーミの血」の比ではない。
少年用施設とはいえ、これまで数々の脱獄もので繰り返し描かれてきた過酷さに負けず劣らずの厳しい生活である。
それを社会経験の少ない感受性豊かな少年たちが強制されるわけで、そうしたことを考えると大人以上の悲惨さといえるかもしれない。
自由を希求する気持ちは、さらなる強さを秘めているに違いない。
そうした背景を含みながら物語は進行していき、ついにそれが暴発する。
まさに北欧少年版「カッコーの巣の上で」である。
そして最後に悲劇と希望の両方を残して幕を閉じるところも、「カッコーの巣の上で」と同様である。
自由と抑圧の激しいせめぎ合いに、深い余韻が残った。


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Category: 外国映画

Tags: ウディ・アレン  

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映画「女と男の観覧車」

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原題は「WONDER WHEEL」。
コニーアイランドにある観覧車の名前である。
回り続ける観覧車は一見華やかで楽しげだが、結局は同じところを回るだけで、どこか別な場所に行けるわけではない。
それをこの映画のヒロインの悲喜劇の象徴として使っている。

舞台は50年代のコニーアイランド。
そこで働くウエイトレスが主人公。
駆け出し女優時代に、ドラマーだった男と結婚をしたが、舞台の共演者と不倫、それが原因で夫は自殺をしたという過去がある。
そして今はコニーアイランドの回転木馬の管理をしている男に拾われて再婚、遊園地のレストランでウエイトレスをしながら前夫との間に出来た息子の3人で暮らしている。
だが、息子は火遊びの常習犯で手を焼いており、夫は稼ぎがなく貧乏から抜け出すことができない。
八方ふさがりの彼女だが、ある日ビーチの若い監視員と不倫関係になる。
そこに夫の前妻の娘が、ギャングの夫から逃げてくる。
そしてその娘がヒロインの不倫相手と恋に落ちたことで、絡んだ糸がどんどん複雑に縺れていくことになる。
いかにもウディ・アレンらしい展開である。

ヒロインを演じるのはケイト・ウィンスレット。
「タイタニック」のヒロインが、ここではくたびれた中年女性を演じている。
しかもかつては女優を目指していたという設定なのだから、それだけでこのキャスティングに、ウディ・アレンの皮肉な目がこめられているのを感じてしまう。
「私はウェイトレスという役を演じているだけ。」という妄想を抱くヒロインは、不倫相手とともに八方ふさがりの生活から抜け出そうと甘い夢を見ている。
だが事はそう簡単には運ばない。
目論見はことごとく外れ、それにつてれてヒロインの情緒はますます混乱、追いつめられていく。
そのヒステリックな様は、まさに「ブルージャスミン」でケイト・ブランシェットが演じたものと対をなす。
幸せを手に入れたと思っていたのは一時の幻想でしかなく、そんなものはいつまでも続くものではない。
あっという間に手から滑り落ちて、どこかへ行ってしまう。
一発逆転なんて、ただの夢物語にすぎない。
結局は観覧車のように元の場所に戻ってくるしかない。
それが人生さ、というウディ・アレンのシニカルで突き放した呟きが聞こえてくる。


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映画「ラッキー」

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世界的に高齢化社会が拡がりつつある今、高齢者問題を扱った映画は数多いが、主人公が90歳の老人となると、これはもうかなり稀な映画となる。
演じるのはハリー・ディー・スタントン。
彼が彼自身を思わせるような老人を演じている。
実際この映画は彼のために作られた映画であり、スタントン自身の実体験に基づいたセリフやエピソードが随所に散りばめられている。
なかでも終盤に語られる沖縄での戦争体験は、そのままスタントン自身が体験したことであり、これが物語の重要なキーポイントになっている。

主人公のラッキーは90歳の老人である。
これまで結婚したことがなく家族はいない。
朝起きると、まずはタバコをふかしてコーヒーを飲む。
ヨガで体をほぐし、身体を丁寧にぬぐい、身支度をすると町へ出かける。
そして馴染のダイナーへ行くと甘めのコーヒーをたのみ、クロスワードパズルに熱中する。
合間に店主と無駄話に耽る。
頑固で憎まれ口をたたくが、人々に愛されていることがよく分かる。
そして日が暮れるとバーでブラッディ・マリアを飲みながら馴染みの客たちと過ごす。
そうしたラッキーの判で押したような生活が繰り返し描かれる。
これといった事件が起きるわけではない。
そんなところから昨年観た映画「パターソン」を思い出した。
パターソンは30代の青年だったが、ラッキーは90歳の老人。
パターソンは詩を書くのが趣味だったが、ラッキーはクロスワードパズルとテレビのクイズ番組を見るのが趣味。
そしてそれが重要な小道具として使われているのも共通するところ。
またこうした波風のたたない静かな生活に満ち足りているのも同じ。
さらにマイノリティに偏見を持たず親しくしているところも同じである。
そんな共通点からの連想であった。

ある日ラッキーはめまいを起こして倒れてしまう。
病院で診察を受けるが、悪いところは見つからない。
だがそこから死について考えざるをえない日々が始まった。
死は決して遠くないもの、差し迫った現実としてラッキーの前にその姿を大きく晒す。
平穏な日常は突如変わり、惑いと不安の中でラッキーが行き着いたのが「nothing」という言葉。
そしてその「nothing」に対してとるべきことは、ただ「微笑む」だけ。
そんな心境に至るまでが、様々な友人たちとの何気ない会話やエピソードのなかで描かれていく。

そして自分自身を演じたようなこの飄々とした映画を最後に、ハリー・ディーン・スタントンは2017年9月に91歳の生涯を閉じた。
羨むべき幕引き、なんと素晴らしい人生であることか。
表に出ることのない長い脇役人生の末の、生涯2本目となる主演作が最後の映画であったということは、いかにもハリー・ディーン・スタントンらしい。
老後を生きる身としては勇気づけられ、そして学ぶべきところの多い映画だった。


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映画「ある女流作家の罪と罰」

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生活費もままならないほど落ちぶれてしまった女流作家が、窮余の策として思いついたのが、有名作家たちの手紙の偽造。
作家としての文才と知識を生かして偽造した手紙は、鑑定家の眼も欺くほどの出来栄えで、思わぬ高値で取引されることになる。
それに味をしめた彼女は、次々と偽造を繰り返す。
だが次第に疑われるようになり、ついには逮捕されてしまう。

この映画は、女流作家のリー・イスラエルが、自らの犯罪について書いた自伝『Can You Ever Forgive Me?』を原作としたもの。
そして主人公を演じたメリッサ・マッカーシーと、偽造手紙の売買に手を貸すことになった相棒役のリチャード・E・グラントが、この映画でともにアカデミー賞にノミネートされている。
それでいて、日本では劇場未公開である。
内容が地味なせいと、主役ふたりの知名度の低さがその理由かと思われるが、そのDVDが先日レンタルされた。
さっそく借りてみた。

観始めると確かに地味な内容で、幾分退屈を覚えて眠気を催すが、それでも相棒となる中年ゲイ男のリチャード・E・グラントが登場するや、俄然面白くなってくる。
ダメ人間同士のふたりの日常と奇妙な付き合いが、ディテール豊かに描かれて、まことに興味深い。
彼らふたりは似た者同士、人生の落伍者であり、世間の嫌われ者、だがけっして弱音を吐かない。
いやむしろ世間に対して鋭い刃を向けながら生きている。
その図太さ、厭らしさ、罪深さに次第に惹きつけられていく。
それにつれて、嫌悪すべき存在であった彼らが、いつしか身近で愛すべき人間となって見えてくる。
そして手紙偽造の顛末やふたりの関係がどのように推移していくのか、目が離せなくなってしまったのである。

結末は苦い。
だがそれでいて最後はまことに清々しい。
こんな人間関係もあるのだと、思わず胸が熱くなってしまった。
忘れられない結末である。


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映画「ノー・エスケープ 自由への国境」

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メキシコ国境を舞台にしたマンハント映画。
トランプ大統領の国境の壁問題で注目されることの多いメキシコ国境だが、映画はそうした動向に合わせて作られたというわけではなく、それ以前に構想、製作されたもの。
ちなみにメキシコ国境を舞台にした密輸、密入国ものとしては、「トラフィック」や「ボーダー・ライン」などが思い浮かぶ。

ストーリーはごくシンプル。
密入国するメキシコ人たちを、ハンターが獲物を狙うようにライフルで次々と殺戮していくというもの。
その設定から連想されるのは、ごくささいなことがきっかけで、生死を賭けた執拗な追跡劇が始まるというスピルバーグの「激突!」。
いずれも追いつ追われつだけに絞り込んで、手を変え品を変えた展開で見せる。
そのシンプルさは、まさに映画ならでは。
またいずれも追う側が、正体不明というところも似通っている。
ちなみにこの映画のハンターは、猟犬を従えているが、それは人狩り用に訓練された犬で、いったん命令を下すと、逃げるメキシコ人たちを猛然と追いかけて攻撃する。
まさに殺人犬である。
その獰猛さと能力の高さは、この追跡劇の恐怖を一段と盛り上げている。
先日観た「しあわせな人生の選択」での犬の穏やかさとは、真逆の存在だ。

監督・脚本はホナス・キュアロン。
「ゼロ・グラビティ」の監督アルフォンソ・キュアロンの息子である。
「ゼロ・グラビティ」ではシナリオの共作者として名を連ねていたが、監督としてはこれが2作目。
「激突!」には及ばないものの、父親譲りの手堅い演出には見るべきものがある。
今後が楽しみな監督だ。


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映画「しあわせな人生の選択」

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癌で余命幾ばくもない男の物語であるが、それでいて「終活」ものによく見られるような湿っぽさや大げさな哀しみといった重苦しいものはなく、非常にドライ。
いい意味での大人の物語になっている。
なので肩の力を抜いて観ることができ、会話主体の物語世界に自然と入っていくことができた。

原題は「TRUMAN(トルーマン)」。
主人公フリアンが飼っている犬の名前である。
ちなみに邦題の「しあわせな人生の選択」は、内容からするといささか軽すぎる。
これではあまり観る気にならない。
むしろ敬遠してしまう。
まことに残念な題名だ。
それはともかく、映画について。
フリアンは妻とは離婚、息子はアムステルダムの大学に入っており、今はひとり暮しをしている。
トルーマンだけが唯一の家族である。
そのトルーマンの里親探しをするのが、この映画の重要な骨子になっている。
それに付き合うことになるのが、もうひとりの主人公であるトマス。
映画の舞台になっているのはポルトガルのマドリードで、トマスもかつてはマドリードに住んでいたが、今はカナダで大学の教授になっている。
その彼がフリアンの死期が迫ったことを知って、はるか離れたマドリードまで会いに来た。
そしてわずか4日間だけの滞在だが、フリアンとの濃密な日々を過ごすことになる。
そのふたりの友情を軸にトルーマンの里親探し、そしてフリアンが関わる人たちとの触れ合いが、美しいマドリードの街並みを背景に描かれていく。
果たしてトルーマンは誰に引き取られることになるのか。
また男ふたりの別れはどんなものになるのか。
そんな興味に引き摺られながら映画は進んでいく。
そして観終わった後は、いい映画を観たという満ち足りた余韻にいつまでも浸ることになった。


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Category: 外国映画

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2018年洋画ベスト10

1位:スリー・ビルボード
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2位:しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス
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3位:パターソン
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4位:ボヘミアン・ラプソディ
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5位:シェイプ・オブ・ウォーター
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6位:ヒトラーの忘れもの
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7位:ドリーム
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8位:フェンス
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9位:はじまりへの旅
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10位:幸せなひとりぼっち
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映画「ウインド・リバー」

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ミステリーの傑作、クライム・サスペンスの傑作である。
冒頭から結末まで、一時も目を離すことができない。
背景となる自然の厳しさ、そのなかで生きる置き去りにされた人々の逃れることのできない苦しみ。
それらが、強い緊張感を伴って迫ってくる。
息を詰めて見続けた。

雪深いなかでの犯罪ということで「ファーゴ」や「シンプル・プラン」といった映画を思わせるが、そこにあったブラックなユーモアはここにはない。
また異文化のなかに入り込んでの捜査という点では、「刑事ジョン・ブック」を想起させる。
そうした要素を併せ持った映画である。

題名になっている「ウインド・リバー」とは、アメリカ中西部に位置するワイオミング州の山岳地帯の地名である。
雪深い酷寒の地で、ネイティブ・アメリカンの保留地になっている。
部族独自の自治権が認められており、州の権限が及ばない地域である。
面積は鹿児島県と同じくらいあるが、そこを取り締まる警察官の数はたったの6人。
そのためすべてに手を回すことができず、なかば無法地帯と化しており、多くの犯罪が見過ごされている。
さらに保留地内で起きた犯罪には、市警や州警察は介入することができず、捜査を行えるのはFBIだけ。
そんな特殊な土地で起きた少女暴行致死事件の行方を追うというのが、この映画のストーリーである。
主人公はジェレミー・レナー演じるコリー・ランバートという男。
合衆国魚類野生生物局のハンターである。
ある日ハンティングの最中、少女の遺体を見つけたことから事件が始まる。
そこへ事件のために派遣されてきたのが、エリザベス・オルセン演じるもうひとりの主人公、FBIの女性捜査官ジェーンである。
このふたりを軸に事件の真相を探る捜査が開始される。
そしてその困難な捜査のなかで浮かび上がってくるネイティブ・アメリカンたちの逃れられない過酷な現実、生きることの困難さ、そうしたものが観る者に様々なことを問いかけてくる。
人間ドラマとしても一級品。
重く苦々しいが、同時にささやかな希望も残されている。
そしてそれに深く癒される。

「ここで生きるには運ではなく、強さと生き抜く意志があるかどうかだ」
そんなセリフとともに、忘れられない映画になった。


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映画「サーミの血」

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サーミとは北欧ラップランドに住む先住民族のこと。
トナカイの狩猟・放牧を主な生業にしている。
ラップランドはスカンジナビア半島北部にあり、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、ロシアの4カ国に渡っているが、映画ではスウェーデンが舞台になっている。

時代は1930年代、サーミ人は劣等民族とみなされ、差別的な扱いを受けていた。
サーミ人の少女エレ・マリャは、妹とともに寄宿学校で学んでいた。
彼女は成績も良く、上級の学校への進学を望んでいたが、人種的に劣っているとみなされるサーミ人の進学は認められていない。
諦めることができないエレ・マリャは家出を決行、身分を偽って忍び込んだ夏祭りで知り合った青年二クラスを頼って、彼が住む街を訪れる。
そこでスウェーデン人として生きるための、あらゆる手立てを講じていくのであった。

謂われなき差別を受けることへの、たったひとりの反乱である。
だがその道は容易ではなく、茨の道。
そしてその行き着いた先が、夢に描いたようなものではなかったということは、年老いたエレ・マリャの苦渋に満ちた表情から窺い知ることができる。
それでもその選択は、けっして間違ったものではなかったのだという強い意思も同時に伝わってくる。

監督のアマンダ・ケンネルはサーミ人とスウェーデン人を両親に持つ女性監督である。
「自らのルーツを深く知りたい」との思いから作ったこの映画が、彼女のデビュー作である。
声高に差別を告発するのではなく、ひとりの少女の成長を見守るなかで、スウェーデンの負の歴史を静かに紐解いていくのだという姿勢が、そこからは感じとれる。
静かに淡々と進んでいく物語は、だからこそ却って力強いものが伝わってくる。
そして北欧の雄大で美しい自然が、そこにさらなる力強さを生み出している。


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プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2018年)70歳です。
性別:男

還暦(10年前)という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

映画サイト「マイ・シネマ館」もやっています。
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