風に吹かれて

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Category: 外国映画

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映画「ラ・ラ・ランド」

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セッション」で華々しくデビューを飾ったデイミアン・チャゼルの監督第2作目である。
昨年度のアカデミー賞では、13部門でノミネートされたという話題の映画である。
ぜひ映画館で観たいと思っていたが、地元ではいつまで待っても上映されず、結局たった1週間だけの上映で、しかも気づいた時はすでに終わっていたのである。
その待望の映画がようやくDVD化された。
さっそく借りてきた。

まず映し出されるのはオープニングの高速道路のシーン。
はるか向こうにはロサンゼルスの街並みが見えている。
(ラ・ラ・ランド LA LA LAND すなわちLAはロサンゼルス)
高速道路上にはたくさんのクルマが渋滞でストップしている。
一台のクルマから若者が降りてくる。
そして歌い踊り始める。
それにつられてつぎつぎと若者が現れ、歌とダンスの輪が広がってゆく。
その群舞がワンカットで延々と映し出されていく。
もうこれだけで映画的興奮の世界へと引き込まれていってしまう。
静から動への見事な転換、印象的な幕開けである。

続いて主役ふたり(ライアン・ゴズリングとエマ・ストーン)の運命的な出会いが、いくつかのエピソードを重ねながら手際よく描かれていく。
ジャズピアニストとしての成功と、自分の店を持つという夢を抱く青年セブ(ライアン・ゴズリング)。
そしてミア(エマ・ストーン)はハリウッド女優を目指して、オーディションに明け暮れる日々。
そんなふたりが偶然出会う。
よくあるボーイ・ミーツ・ガールの物語ではあるが、そこに様々な映画的な工夫を施し、作品の質を高めている。
色鮮やかな衣装や華麗なセット、自在に動くカメラワーク、巧妙に仕掛けられた伏線等々、さらにデイミアン・チャゼルの映画愛と音楽愛がそこに加味されていく。
例えばオープニングのクルマの上で歌い踊るシーンは、「フェーム」を連想させる。
ミアとセブが夜の公園で踊るシーンは、「バンド・ワゴン」の再現。
またふたりが映画館で観る映画は、ジェームス・ディーンの「理由なき反抗」。
その映画の後訪れるのは、「理由なき反抗」で使われたグリフィス天文台。
そしてそこで踊るのは、ウディ・アレンの「世界中がアイ・ラブ・ユー」を彷彿させるダンス。
またふたりのデートコースにハリウッドの撮影所が出てきたり、ミアの部屋の壁にイングリッド・バーグマンの大きな写真が貼られているなど、映画的記憶がそこここに散りばめられている。
他にも探せば、まだまだたくさんありそうだ。
そうした発見の楽しみが味わえるのも、この映画の醍醐味のひとつである。
そして音楽ではセブの姿を通して、ジャズへの深い愛が描かれる。
そんな映画や音楽へのこだわりから導き出されるのは、夢を追い求めることの歓びと悲しみ、そしてそれがどんな結果をもたらしたとしても、決して後悔はしないということ。
オーディションに落ち続けたミアが、女優へのステップアップの足掛かりとなる最後のオーディションで語るモノローグに、そのことが見事に集約されている。
このシーンは涙なくしては見られない。
そしてそれに続く、意表を突くラストシーン。
「草原の輝き」や「シェルブールの雨傘」を思わせるような苦いラストではあるが、それだけでは終わらず、そこにふたりのあり得たかもしれない人生を映し出すことで、苦さだけではない幕切れになっている。
デイミアン・チャゼル監督の並々ならぬ才能の閃きを感じる。
同時に彼自身の熱い思いも伝わってくる。
そしてそれこそがこの映画を一段と深いものにするポイントにもなっている。
時間を置いてまたもういちどじっくりと観てみたい。
そんな気にさせる映画であった。


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Tags: 西部劇  

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映画「ワイアット・アープ」

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ワイアット・アープの波乱万丈の生涯を描いた映画である。
先日BSで観たが、観るのはこれが2度目。
ケビン・コスナーが主役のワイアット・アープを演じている。

ワイアット・アープといえば、西部劇には欠かせない伝説のヒーローである。
これまでにも何度も映画で取り上げられているが、記憶に残るものといえば、ジョン・フォード監督の『荒野の決闘』とジョン・スタージェス監督の『OK牧場の決斗』『墓石と決闘』である。
『荒野の決闘』ではヘンリー・フォンダ、『OK牧場の決斗』ではバート・ランカスター、そして『墓石と決闘』ではジェームズ・ガーナーがワイアット・アープを演じている。
またワイアット・アープの相棒のドク・ホリディは、それぞれビクター・マチュア、カーク・ダグラス、ジェイソン・ロバーツが演じている。
いずれも映画史に残る名作ばかり。
おそらくこの映画も、そうした名作に肩を並べようという意気込みで撮られたのだろうが、残念ながらそのレベルには達しなかった。
その意気込みのほどは、3時間を超える上映時間からも窺えるが、結果的にはそれが裏目に出てしまったようだ。
余計なエピソードを詰め込み過ぎて、間延びしている。
新しいアープ像を模索する心意気は買うが、結局空回りに終わってしまった。
そうしたマイナス要素が多いことから、封切当時は悪評続きで、失敗作のレッテルを貼られてしまい、ゴールデンラズベリー賞の最低主演男優賞、最低作品賞、最低監督賞に選ばれるという散々なけなされようであった。
しかしそうはいっても今観ると、失敗作とはいえども見るべきところは多々ある。
ケビン・コスナーが演じるワイアット・アープは、なかなか魅力的だし、ドク・ホリディを演じたデニス・クエイドはそれをさらに上回る魅力を発散している。
彼はこの役を演じるにあたって、20キロもの減量をしたそうだ。
肺病やみというリアリティを出すためだが、最初見たときは誰が演じているか判らないほどだった。
その意欲は成功しており、死の影を引き摺りながら、アープの友情に殉じようとする姿は見応え十分。
デニス・クエイドの新しい一面を見たと思った。

監督はローレンス・カスダン。
ケビン・コスナーとは『シルバラード』以来2度目の西部劇になる。
そしてケビン・コスナーはこの映画の製作も兼ねている。
そこには『ダンス・ウィズ・ウルブズ』で掴んだ栄光をもう一度という思いがあったのではなかろうか。
しかし意に反してそれが散々な評価という結果になってしまった。
その忸怩たる思いを払拭しようとしたのが、『ワイルド・レンジ』だったのではなかろうか。
この映画を観ながら、そんなふうな流れがあるように思えてきたのである。


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映画「フランス組曲」

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1940年、第二次世界大戦下のフランス。
ナチスによってパリが陥落、さらにその侵攻の鉾先は地方にも及び、フランス中部に位置する街ビュシーもナチスによって占拠される。
そこに住むヒロインのリュシルは、大地主の姑アンジェリ夫人とともにフランス軍の兵士として出兵した夫の帰りを待っている。
厳格で気難しく、小作人に対する態度も容赦のない姑との生活は陰鬱なものでしかない。
自分を押し殺しての毎日である。
その邸宅にナチの将校ブルーノが宿舎として住むことになる。
ブルーノは作曲家でピアニストである。
彼は夜ごとリュシルのピアノを弾くようになる。
微かに聴こえてくるその曲は、聴いたことのない曲であった。
その曲にリュシルの心が癒されていく。
やがてこの曲はブルーノが作曲した「フランス組曲」ということを彼から教えられる。
それがこの映画の題名である。

敵対する相手ということで一定の距離を置いていたリュシルだが、次第にブルーノに関心を覚えるようになっていく。
やがてそれが道ならぬ恋となっていくのである。
ふたりが愛し合うということは、同胞からすれば裏切り者ということになる。
先には悲劇だけしか見えない望みのない恋である。
それでも互いに惹かれてゆく姿が切なくもあり、スリリングでもある。
カーテン越しに相手の姿を見つめたり、ドアの隙間から隠れ見するようなショットが繰り返されるのは、そうした恋の危うさを表しているからである。

ヒロインのリュシルを演じるのは、ミシェル・ウィリアムズ。
けっして美人というわけではないが、控えめな中に意志の強さや情熱を秘めており魅力的。
穏やかなブルーノが惹かれるのがよく分かる。
そしてブルーノを演じるのがマティアス・スーナールツ。
以前観た「リリーのすべて」で、主人公の幼馴染の画商を演じていたのが印象に残った俳優であるが、ここでもまた新たな魅力を見せている。

この映画はアウシュビッツで亡くなったイレーヌ・ネミロフスキーの未完の小説を映画化したものである。
この小説は60年間開けられることのなかったトランクの中に眠っていたもので、それを彼女の娘が母親のためにと発表したものである。
そして出版されるや一躍ベストセラーとなった。
それを出版後10年を経て映画化されたのがこの作品である。
こうした事実はタイトルバックを見て初めて知ったことだが、それを知ることでこの映画がまた一段と深い彩りを帯びて見えてきた。

映画の中でパリから逃れてきたユダヤ人母子が出てくるが、おそらくこれがネミロフスキー母子なのだろうと思う。
ユダヤ人であることを隠していたが、最後は見つかり、収容所送りとなってしまう。
だが幼い娘だけは逃れることができ、アンジェリ夫人の邸にかくまわれることになる。
そうした添景として挟み込まれたエピソードが、この映画のさらなる悲劇性を高める要素になっている。


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映画「最愛の子」

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中国では毎年数多くの幼児誘拐事件が発生、大きな社会問題となっている。
背景にあるのは、1979年から始まった「一人っ子政策」である。
急激な人口増加を緩和するために中国政府が行った抑制策である。
この政策により、原則として子供は1人に制限され、違反した場合は罰金が科せられることになった。
そのため働き手や跡継ぎとなる男児の価値がよりいっそう高まり、養子をとるケースが増えていった。
その結果、非合法な人身売買市場が生まれ、誘拐事件が多発するようになったのである。
さらに幼児誘拐事件の裏には、現代中国が抱え持つ様々な問題が絡まっており、問題解決のためには多くの難問をクリアしなければならないという現実が大きく横たわっている。
その絡まった糸をひとつひとつ根気強く丁寧にほぐしていく様を、誘拐された親と、我が子として育てる母親の、両方の姿を通して浮き彫りにしていくのが、この映画である。
トップシーンに現れる裏路地の頭上で複雑に絡み合った電線は、これから始まる物語の複雑さを暗示している。
簡単にシロクロをつけられるといった問題ではない。
何が正義で何が悪か、判断に迷うことになる。
日本ではとうてい考えられないような深刻な社会問題が、ドキュメンタリーのようなリアルさで描かれていく。
近くて遠い現代中国、その複雑に歪んだ断面を真正面から切り取った力作に、時に言葉を失い、涙を誘われたのである。

監督は「あなたがいれば 金枝玉葉」「ラヴソング」といった90年代の香港映画で知られるベテラン、ピーター・チャン。
久々のこの映画で、いまだ健在というところを存分に見せてくれたのである。


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映画「愛する人」

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原題は『Mother and Child』、2009年製作のアメリカ映画である。
その原題が示すように若くして娘を産んだ母親と、生まれてすぐに養女に出された娘の37年後を描いた映画である。
但しそれを単純な母子再会の話にしないところが、この映画の優れたところ。
老母の介護をしながら暮らす母親と、優秀な弁護士としてキャリアを重ねる娘の今に重ねて、養子を希望する若い黒人夫婦のエピソードを描くことで、さらに物語に深みと厚みをもたらしている。
こうした一見無関係とも思えるエピソードを積み重ねながら物語を進めていく描き方、はロバート・アルトマンの映画などによく見られるものだ。
また新しいところではアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の「21グラム」や「バベル」といった映画も、こうした手法で撮られている。
そんなことを考えながら、何気なくこの映画のスタッフの顔ぶれをみていると、なんとそこにアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の名前があるではないか。
製作総指揮となっている。
なるほどこの映画に深く関わっているわけだ。
そうやって考えてみると、娘役を演じたナオミ・ワッツは「21グラム」でも主役を演じており、イニャリトゥ監督とは深い関わりのある女優である。
そんな繋がりも見えてきて、ますます興味深い。
対して母親役を演じるのは、アネット・ベニング。
年老いた母親の介護に追われるなか、生活に疲れ、他人の好意や親切を素直に受け入れようとはしない頑なな中年女性を好演、ナオミ・ワッツとともに女の強さとその裏に隠された孤独や弱さを絶妙に演じている。
監督はロドリゴ・ガルシア。
父親はあのノーベル賞作家ガルシア・マルケス。
コロンビア生まれであるが、育ったのはメキシコ。
こちらもメキシコ出身のイニャリトゥ監督とは関わりが深い。
さらにそこに「ゼロ・グラビティ」のアルフォンソ・キュアロンや「パンズ・ラビリンス」「パシフィック・リム」のギレルモ・デル・トロ、そして撮影監督のエマニュエル・ルベツキと並べていくと、ここ最近のハリウッドでのラテン・アメリカ出身者の活躍にはめざましいものがある。
そうやって考えているうちに、メキシコとの国境沿いに壁を作るというトランプ大統領の政策が、そうした流れを阻害することにならなければいいがと、そんなところまで考えが飛躍してしまったのである。


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休日は映画の日

仕事が休みの日は、家内とふたりで映画を観ることにしている。
特に冬は雪に閉じ込められ、外出も面倒なので、これがいちばんの過ごし方である。
昨日がその休日であった。
さっそくDVDを借りてきた。
「クロワッサンで朝食を」と「麗しのサブリナ」の2本。
「クロワッサンで朝食を」はフランス映画。
ジャンヌ・モローが久しぶりに出演した映画である。
「麗しのサブリナ」は先日「ローマの休日」を観て印象が強かったので、またもういちどヘプバーンの映画を観てみたいということで借りた。

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まずは「クロワッサンで朝食を」から。
題名から受ける印象では明るく軽めの映画を想像していたが、予想外に重くてシリアス。
原題は「パリのエストニア人」。
ジャンヌ・モローが演じるのは、パリに住むエストニア出身の裕福な女性。
老いてひとりでは生活できないのだが、手のつけられないわがままから家政婦が次々とやめて居つかない。
そこへエストニアから次の家政婦として50代の女性がやってくるというのがストーリーである。
老いや孤独をテーマにしているが、見どころはやはり85歳になるジャンヌ・モローの存在。
独りよがりで、自分の主張をけっして曲げない偏屈ぶりは、実際のジャンヌ・モローもそうなのではと思わせるものがある。
長年映画界の第一線で活躍してきた名女優ならではの威厳と貫禄である。
無駄に歳はとってない。
年齢から考えると、これが最後の主演映画になるかもしれない。

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続いて「麗しのサブリナ」を観ようとしたが、ちょうどBSで「愛と青春の旅立ち」の放映があった。
そこで予定を変更してそちらを先に観ることにした。
これは80年代を代表する映画。
主題歌とともに思い出に残る映画である。
ラブ・ロマンスとしての側面もあるが、どちらかといえば軍隊物の映画。
原題が「An Officer and a Gentleman」、訳すると「将校と紳士」。
すなわち劣悪な家庭環境に育った青年がその境遇から抜け出すために海軍士官学校に入り、そこで地獄の猛特訓を受けるというのが本筋である。
そしてそこでの試練を乗り越えることで、人間的に成長していく姿を描いている。
教官役の鬼軍曹を演じたルイス・ゴセット・ジュニアの迫力満点のシゴキぶりと、それに反撥しながらもけっして諦めないリチャード・ギアの男同士のやりとりがこの映画のいちばんの見どころ。
ルイス・ゴセット・ジュニアはこの役でアカデミー助演男優賞を受賞した。
30年ぶりに観ることになったが、印象深かった映画だけにかなりのシーンを記憶していた。
すぐに忘れてしまう映画が多いが、いい映画というのは時間が経っても鮮明に憶えているものだ。

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そして次が「麗しのサブリナ」。
先日観た「ローマの休日」の翌年の1954年に作られた映画である。
監督はビリー・ワイルダー。
ヘプバーン演じるサブリナは、世間知らずの純情な娘で、これは「ローマの休日」のアン王女の延長線上にあるキャラクター。
また相手役がハンフリー・ボガートとウィリアム・ホールデン、こちらも「ローマの休日」でのグレゴリー・ペック同様の組み合わせ。
すなわち純真無垢な夢見る娘と、人生経験豊富な成熟した男という組み合わせである。
こうした設定はヘプバーンの後の映画でも引き継がれていくものである。

以上3本を観た後に、さらに午後9時からBSで「パニック・イン・スタジアム」が放映された。
これも昔観て面白かった映画。
こちらは寝床に入って観ることにしたが、やはり予想したように、途中で眠気に誘われて最後まで観ることはできなかった。
一日3本が限度のようだ。
だがどの映画も面白く、満足の一日だった。


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映画「ローマの休日」

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一昨日BSプレミアムで「ローマの休日」が放映された。
これまで繰り返し何度も見たが、テレビで放映されるとやはり観てしまう。
そして気がつくと映画の世界にどっぷりとはまってしまっている。
笑いあり涙あり、そしてため息が出るような名場面の連続、まさに名画中の名画である。

監督は名匠ウィリアム・ワイラー、そして脚本はイアン・マクレラン・ハンター。
これはすなわちダルトン・トランボの偽名である。
当時ダルトン・トランボはレッドパージによってハリウッドから追放されていたため、偽名を使わざるを得なかったのである。
ちなみにトランボはこの頃4つの偽名を使ってシナリオを書いていた。
この名前はそのなかのひとつ。
さらにもっと正確に言えば、イアン・マクレラン・ハンターというのは友人のシナリオライターの名前である。
その名前を借りて「ローマの休日」を書いたのである。
そしてそれがアカデミー賞の最優秀脚本賞を受賞することになった。
いろいろと複雑な事情がからみあっているようだが、この辺の経緯を描いたのが、最近封切られた映画「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」である。
これは必見。
ちなみにダルトン・トランボが最初にこの作品を書いたとき、監督はウィリアム・ワイラーではなく、フランク・キャプラであった。
キャプラはこの作品を、50年代版の「或る夜の出来事」にしたいと考えていたようだ。
それがなぜかキャプラの手を離れ、ワイラーの元へと渡ってしまったのである。
これには諸説あるようだが、有力なのは作者が「ハリウッド・テン」のトランボであることを知ったキャプラが、トラブルを避けたためではないかといわれている。
いずれにしても以後キャプラが関わることはなくなった。
ファンとしてはそちらも見てみたかったと思わぬでもないが、しかしそれだとオードリー・ヘプバーンのアン王女は生まれなかったわけで、そうなるとこれほどの名作たり得たかどうか、いささか疑問である。
ちなみにキャプラ版での配役はケーリー・グラントとエリザベス・テイラーであった。
いずれにしてもこの映画でのヘプバーンの登場は、映画史に残る輝かしいものであり、この映画と彼女の存在はけっして切り離すことのできないものである。
それほどスクリーンの中の彼女は可憐で美しく輝いている。
この映画のために天上から舞い降りてきた妖精なのではなどと思ってしまうほどだ。
そしてそれを優しく受け止めるグレゴリー・ペックの男らしさ。
ふたりの絶妙のやりとりに胸踊るが、これを可能にしたのがウィリアム・ワイラーの卓越した腕の冴えであることは言をまたない。
優れたシナリオと演出、そして巧みな演技、これらが三位一体となって映画史に残る名作が生まれたのだということを今回も強く実感したのである。
以前観たときは涙を流すことはなかったが、今回は何度も繰り返し胸が熱くなり、涙を流してしまった。


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映画「チャイルド44 森に消えた子供たち」

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この映画の原作であるトム・ロブ・スミスの小説は3年前に読んだ。
2009年の「このミステリーがすごい! 海外編」で第1位になった小説である。
その圧倒的な面白さは、3年経った今でもはっきりと憶えている。
それを映画化したのが、この映画である。
だが果たしてその面白さがどの程度再現されているのか。
観る前はいささか不安であったが、その心配は映画が始まるとすぐに解消された。

1953年のモスクワが舞台であるが、その時代の再現が素晴らしい。
戦後間もないスターリン独裁政権下の暗さと恐怖がしっかりと描きこまれており、これがアメリカ映画ということを忘れてしまう。
そして何よりも主役のレオ・デミドフを演じるトム・ハーディがいい。
「楽園に殺人は存在しない」、「殺人は資本主義の病だ」とする社会の中で、真実を追い求めようと孤軍奮闘する姿はとてもスリリングだ。
そしてギリギリのところで、血の通う人間として生きようとする姿には強い共感を覚える。

昨年観た「マッドマックス 怒りのデス・ロード 」「ウォーリアー」そして「レヴェナント 蘇えりし者」と、作品ごとに多彩な魅力を見せてくれたが、今回もまたそれらとは違った新しい面を見せてくれた。
彼は単なるアクションスターというだけではなく、そこに人間的な深みを感じさせてくれる俳優である。
こうしたことは、意図してできるというものではなく、やはり資質の問題であろうと思う。
彼にはそうしたものが自然と身についている。
現在イチ押しの俳優である。

いずれにしても一筋縄ではいかないこのミステリーの映画化としては、間違いなく及第点である。
映画として十分に楽しめた。


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Tags: クリント・イーストウッド  

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映画「ハドソン川の奇跡」

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ニューヨーク、マンハッタン上空で、飛行不能に陥った旅客機が、ハドソン川に緊急着水するという事故が起きたのは、2009年1月のことである。
そうした大変な事故であったにも関わらず、ひとりの犠牲者も出すことがなったというニュースが全世界に流れた。
そのニュースを驚きと感動で受け止めたことはまだ記憶に新しい。
それを題材に映画化したのがこの作品である。

監督はクリント・イーストウッド。
「アメリカン・スナイパー」以来2年ぶりの監督作である。
主演はトム・ハンクス。
イーストウッド作品ではこれが初出演であるが、適役。
苦悩するヒーロー、サレンバーガー機長を見事に演じて、間違いなくこれは彼の代表作になる。

前作「アメリカン・スナイパー」もそうだが、イーストウッドの最近の映画には実話の映画化が多い。
「ジャージー・ボーイズ」はボーカル・グループ“ザ・フォー・シーズンズ”、「J・エドガー」はFBI初代長官ジョン・エドガー・フーバー、そして「インビクタス 負けざる者たち」は南アフリカ共和国ラグビーチームとネルソン・マンデラ大統領と、いずれの作品も実在の人物を題材にした物語。
そしてそのいずれの作品も主人公たちを単なるヒーローとして描くのではなく、等身大の人間として描いている。
そのスタンスはこの映画でも変わらず、次第に追い詰められていくサレンバーガー機長の葛藤や苦しみをけっして大げさではなく、抑制のきいた手法で描いており、イーストウッド監督の演出のさらなる円熟味を感じさせてくれる。

それにしても全世界から賞賛を浴びたこの事故の裏側に、これほどの事実があったということは初めて知った。
同時に多くの人命を預かるパイロットの仕事がいかに重責であるかということも。
それだけにどんな小さな過失もけっして許されてはならないわけで、そこでこの映画のようなスリリングなドラマが生まれることになる。
そしてその難題に立ち向かうサレンバーガー機長のプロ魂が、さらなる奇跡を呼び起こす。
題名にある「奇跡」にはそうした2重の意味がこめられているように思う。

上映時間は96分という短さ。
2時間を超える上映時間が当たり前で、3時間になる映画も珍しくない今、この短さはある意味驚きだ。
しかしその短さを感じさせない充実な内容に、長時間の映画を観るのと変わらない重量感があった。
時に感動の涙を流しながら眼をくぎ付けにされた、濃密な96分だった。


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Tags: ベスト映画  

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2016年洋画ベストテン

1位:リリーのすべて
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2位:顔のないヒトラーたち
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3位:レヴェナント 蘇えりし者
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4位:あの日の声を探して
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5位:黄金のアデーレ 名画の帰還
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6位:ザ・ウォーク
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7位:ウォーリアー
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8位:ブルックリン
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9位:おみおくりの作法
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小品ながらも、上質の短編小説を読むような味わいのある映画。


10位:6才のぼくが、大人になるまで
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プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2008年)還暦です。
性別:男

還暦という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

映画サイト「マイ・シネマ館」もやっています。
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