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風に吹かれて

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映画「検察側の罪人」

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先日の夜、映画「検察側の罪人」を観に行った。
家内が原作である雫井修介の小説を読んで面白かったので、映画も観たいということになり、一緒について行くことにしたのである。
雫井脩介の小説の映画化作品は以前「犯人に告ぐ」という映画を観て面白かった記憶がある。
その映画では豊川悦司演じる刑事が主役だったが、この映画では木村拓哉と二宮和也のジャニーズふたりが検事を演じて話題をよんでいる。
だがこのふたりが検事というのはいささか軽いのではと思ったが、映画を観るとそれはまったくの杞憂であった。
とくに二宮和也の演技には、瞠目させられるものがあった。
以前から俳優としての資質の高さには注目していたが、この映画ではこれまでとはまた違った良さを見せてくれた。
また闇社会のブローカー役である松重豊、殺人犯役の酒匂芳(さこう よし)の怪演にも目を見張らされた。
なかでも酒匂芳はこの映画で初めて知ったが、その異様なほどの存在感には戦慄を覚えるほど。
そしてこのふたりを相手に一歩も引かずに取り調べを行う場面の迫力は、この映画の大きな見どころであった。
尋問をのらりくらりとかわす海千山千の男たちを相手に、二宮和也が押したり引いたりと戦術の限りを尽くして有力な証言を得ようと奮闘する姿には感動さえ覚えたのである。
童顔で柔に見える外見からは考えられないような迫力ある演技には心底唸らされた。
まさに正義感溢れる若手検事そのものであった。
説得力ある演技は、いつまでも心に残ったのである。

ただそうした演技の良さに比べて、ストーリーの展開がいまいちよく判らない部分があって難渋した。
また二宮和也の上司である最上検事(木村拓哉)の動機が、いまひとつ説得力がない。
そうした点を確かめることも含めて、原作本を読んでいるところである。
家内の言によれば、原作のほうが数倍いいとのこと。
映画が良かっただけに、その数倍いいという小説を読み終えるのが楽しみだ。


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映画「彼女がその名を知らない鳥たち」

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不快な人物、不快な行動、そして不快な展開、心を逆撫でするような場面ばかりが延々と続く。
もちろんそれはこの映画の意図するところであり、敢えて露悪的ともいえるほどそれらを積み重ねていく。
それが白石和彌監督のスタイルなのだということはよく判る。
だが、それを観続けるのは、やはりかなりのエネルギーを強要されることになる。
それでいてどうしても画面から目が離すことができないのは、この映画がもつ力強さゆえ。
先日観た「葛城事件」も不快感全開の映画だったが、こちらも負けていない。
そういえば「葛城事件」での三浦友和は高圧的なクレーマーであったが、この映画の蒼井優もかなり陰湿なクレーマーである。
その嫌味な態度は腹立たしく不快。
さらに彼女の言動、人間関係など生活すべてが不快な色彩に彩られている。
また彼女がつき合う恋愛相手ふたり(竹野内豊、松坂桃李)が、いずれも小狡く計算高いダメ人間。
そんなダメ人間ばかりのなか、唯一異色なのが阿部サダヲ演じる佐野陣治という男。
蒼井優演じる十和子の同棲相手で、十和子から蔑まれ、手ひどい仕打ちを受けているにも関わらず、献身的に尽くそうとする。
だらしなく働かない十和子の生活の面倒は、彼がすべて支えているが、それでいながら十和子は傍若無人に自分勝手な行動ばかりをとる。
都合よく彼を利用し、完全にバカにしきっているのである。
それでもめげずに、十和子に気に入られようと、どこまでも尽くそうとする。
まさしく現代版「痴人の愛」である。
文豪・谷崎が描いた被虐の世界を現代に移し変えたような話である。
究極の優しさ、究極の愛、狂気の愛ともいえる。
その行きつく先には、不吉な影が見え隠れしているが、その予感を超える驚きの結末が用意されている。
こんなことが果たして現実にあり得るのかと思えるような結末である。
その結末がこの映画最大の胆ではあるが、いっぽうそれをどう受け取るかによって、この映画の評価が大きく変わることになる。
賛否が大きく分かれるところ。
いずれにしてもこれは「葛城事件」に負けず劣らずの問題作。
そして最後にもうひとつ、この映画には「葛城事件」の赤堀雅秋監督が、刑事役として出演していることも付け加えておこうと思う。


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映画「葛城事件」

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譬えようもないほど重い映画である。
「人生の悲劇の第一幕は親子となったことにはじまっている。」というのは、芥川龍之介の「侏儒の言葉」の中で書かれた言葉であるが、この映画はその究極ともいえるような姿を描いている。
その閉塞感、行き止まり感は尋常ではない。
そしてそれが絵空事だと追いやれるほど現実離れしたものではなく、むしろこうしたことは誰の身にも起こりうることなのかもしれないと思わせられるだけに重く迫ってくる。
目を背けることができないのである。

ボタンの掛け違え、感情のもつれ、そうしたことはどんな家庭でも見られることである。
だがそれが修復されず、滓のように積み重なっていくことで、考えもしなかったような悲惨な結果に繋がってしまうことがある。
この映画ではそうした家庭の風景が、ひとつひとつ丁寧に掬い取られて克明に描かれていく。
その元凶となるのが、家父長制の遺物のような父親の存在である。
傲岸不遜で人を人とも思わない。
そんな暴君な父親に、母親もふたりの息子も反抗できず、ただただ黙って従うだけ。
その結果、家庭は崩壊、長男は自殺、次男は無差別殺傷事件を起こして死刑、そして母親は精神に異常を来して施設に入院。
最悪の結末を迎えることになってしまうのである。
それでも父親は自らの態度を顧みることなく、「俺がいったい何をした!」と叫ぶ。
そして世間に牙を剥くことで、自らの身を守ろうとする。
必死に喘ぐその姿は禍々しく、哀れであり、そして時に滑稽でもある。
演じるのは三浦友和。
その渾身の演技には圧倒される。
「俺は、やるべきことはやってきたんだ」と、どこまでも自らを主張して居直る姿には、反撥しか覚えないが、それでも時間とともに次第に印象が変わっていく。
そして絶望の果てのふてぶしさといったものに対して感動さえも覚えるようになっていく。
映画はこの歪な男をけっして否定的に見るだけでは終わらない。
人間としての脆さ、哀しさを持った血の通った人間としてリアルに描き切っている。
彼は現実離れをしたモンスターなどではなく、どこにでもいる人間が何かの拍子でこうしたモンスターになるのだという危うさを示唆している。
そのことに強い戦慄を覚えるのである。
そして混迷する今という時代だからこそ作られた映画なのだということを、痛いほど感じたのである。


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映画「散歩する侵略者」

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風変わりな映画である。
SFと言うには、ちょっと戸惑いがある。
といってリアルな物語というのでもなく、何とも形容しがたい。
簡単にいうと、宇宙人による地球侵略の映画なのだが、よくあるSFもののような宇宙船や宇宙人が現れることはなく、地球人との戦闘が描かれるわけでもない。
映画の大半はごく普通の日常生活が描かれるだけ。
そこに普段の日常とは違ったものが唐突に侵入してくる。
侵略という事実は、単にセリフによって知らされるだけ。
宇宙人の実像はなく、宇宙人に体を乗っ取られた人物がそのセリフを口にするが、そんな冗談ともつかないような言葉は、誰も本気にしない。
だが確実に侵略の日は近づいている。
そんな不思議な映画である。

伊坂幸太郎の「終末のフール」や「フィッシュ・ストーリー」といった小説と似た肌触りというか設定である。
これらの小説もリアルな日常生活が主な舞台として描かれるが、そこに地球滅亡という危機がからんでくる。
その事実を省くと、ごく普通の小説と何ら変わらない。
そこがこの映画と共通するところだ。

主人公を演じているのは、松田龍平、そしてその妻を長澤まさみ。
松田龍平は宇宙人に体を乗っ取られ、地球侵略のために地球人がもつさまざまな概念をリサーチするという役目を担っている。
彼のヌーボーとした地の部分が、役によく合っており、なかなかの適役。
そして訳の分からなくなってしまった夫を持て余しながらも、見捨てることもせず、地球滅亡の最後まで彼から離れずにいる妻役をよく演じて、こちらも適役。
このふたりに絡むのが、ちょっと斜に構えた記者を演じる長谷川博己。
彼も宇宙人に体を乗っ取られた若いふたり(高杉真宙、恒松祐里)と行動を共にしている。
その5人を中心に追いつ追われつの逃走劇があり、そしてついに地球侵略の日を迎えることになる。
そして意外な結末へと向かってゆく。

監督は黒沢清。
得意のホラー演出を随所に見せながら、徐々に危機感を募らせていくところは、やはりベテランならではの味わいがある。
不安や不可解なことの多い今の時代、ひょっとするとこういうこともありかも、と思わせるような説得力がある。
終末感を漂わせる画面に釘付けになってゆく。
そして張り詰めた後に来る静かなラストでは、ホロリとさせられた。
荒唐無稽なだけでは終わらせない。
さすがである。


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映画「夜空はいつでも最高密度の青色だ」

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いわゆるボーイ・ミーツ・ガールものではあるが、よくある恋愛ものとは一線を画した作品。
それらがもつ輝きや感傷といったものはここにはない。
ドラマチックなものとは無縁の、地味で不器用な物語。
しかしそこには今を生きるリアルな男女の姿がしっかりと捉えられている。

青年・慎二(池松壮亮)は建設現場で日雇い労働者として働いている。
古いアパートで一人暮しをしており、左目がほとんど見えない。
そんなこともあって社会に適応できないでいる。
唯一交流があるのは、建設現場での同僚3人。
年上の智之(松田龍平)、中年の岩下(田中哲司)、そして出稼ぎフィリピン人のアンドレス(ポー ル・マグサリン)。
その3人と出かけたガールズバーで、美香(石橋静河)という女性と知り合いになる。
美香は病院に勤務する看護師だが、夜になるとアルバイトとしてガールズバーで働いている。
彼女も心に鬱屈や不安を抱えて生きている。
そんなふたりが、偶然の出会いを繰り返すなかで親しくなっていく。
そして東京という都会の中で自分の居場所を見失ったふたりが、真剣に向き合うなかで、次第に自分達の居場所を見つけていく、というのがおおまかなストーリーである。

この映画を観ているうちに、以前観た「オーバーフェンス」のことをふと思い出した。
どちらの主人公も先行きの見えない人間で、偶然知り合い、その触れ合いの中で確実なものを手にするようになっていく、という共通点からである。
またふたりが知り合うきっかけになったのが、女性が働くバーというのも共通するところ。
さらに慎二が働く工事現場の同僚たちの存在が重要な要素として描かれるが、それも「オーバーフェンス」の職業訓練所と共通するものがある。
そういえば工事現場の同僚のひとりを松田龍平が演じているが、「オーバーフェンス」でも同僚のひとりを松田龍平の弟である松田翔太が演じている。
また夜の町を、主人公ふたりが自転車に乗って走るという印象的な場面が出てくるのも、共通するところ。
「オーバーフェンス」でオダギリ・ジョーが移動手段として使っているのが自転車だったが、この映画でも石橋静河が同じく自転車を移動手段として使っている。
そんないくつかの共通点から出てきた連想であった。

監督および脚本は「舟を編む」などの石井裕也。
原作は2008年に21歳で中原中也賞を受賞した注目の詩人・最果(さいはて)タヒの同名の詩集。
それゆえ物語自体はまったくのオリジナルで、詩集のなかで使われた言葉がいくつかセリフのなかに挿入されることで、その世界観を表わしている。
昨年度のキネマ旬報日本映画ベスト・テン第1位、そして脚本賞と新人女優賞(石橋静河)を受賞している。
今観るべき、そして今という時代をリアリティ豊かに描き出した「最高密度」の作品である。


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映画「家族はつらいよ」

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山田洋次監督の映画を観るのは久しぶりである。
2014年に観た「小さいおうち」以来なので、4年ぶりということになる。
調べてみると、「小さいおうち」以後は、「母と暮らせば」(2015年)と「家族はつらいよ」(2016年)が撮られている。
ちなみに「家族はつらいよ」はその後シリーズ化されて、2017年に「家族はつらいよ2」、本年2018年に「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」と続く。
こうやって並べてみると、1年ごとに新作を撮っているわけだ。
80歳を超えてなおこのペースで映画を撮り続けているというのは、ほんとうに驚きである。
過去には100歳を超えてなお現役といったマノエル・ド・オリヴェイラや新藤兼人もいたが、これは例外中の例外。
またハリウッドでは86歳のクリント・イーストウッドや、81歳のウディ・アレンといった例もあるが、それでもやはり稀なこと。
いかに高齢化社会といえども、映画を撮るのはかなりのハードワーク。
気力体力知力が充実していなければ、とても覚束ないもの。
長年の蓄積とたゆまぬ努力といった使い古された言葉しか浮かばないが、それでもやはりその通りである。
そのことには素直に頭が下がる。
但しそのことと映画の出来不出来はまた別物。
作り続けることだけでも、もちろん価値はあるのだろうが、それ以上に内容が問われるのは当然のこと。
「年寄りの冷や水」的なことにならなければとの危惧が多少頭を掠めたが、それはまったくの杞憂であった。
(名匠に対してこの表現は畏れ多いとは思うが、敢えて)

最近の山田作品を見てみると、ほとんどがシリアスな作品ばかりが続き、本来の持ち味であるコメディはほとんど見られなかった。
そういう意味ではこれは原点帰りということになる。
久しぶりのコメディ、現代版落語の世界である。
山田監督にとっては、自家薬籠中のもの。
肩の力の抜け具合が心地いい。
しかしだからといってけっして軽く撮っているわけではない。
軽いものが軽く作られるわけではないというのは自明の理。
ひょっとすると最近のシリアスな作品以上に熱を込めて作ったのではなかろうか。
そんなことを想像してしまう。
いずれにしても楽しい映画である。
いたるところに遊び心があり思わずニヤリとしてしまう。
熱を入れながらも楽しんでいる。
そんな様子が伝わってくる。
円熟した職人技。
老いたるといえども、まだまだしなやかさを失っていない。
そう思うと続く「家族はつらいよ2」、「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」も観たいという気持ちになってくる。
どんな映画になっているか、期待すること大である。


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映画「恋の渦」

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製作費10万円、製作日数4日、全員無名の俳優という極小規模の映画である。
監督は大根仁、岸田國士戯曲賞を受賞した三浦大輔の舞台劇が原作で、映画の脚本も三浦自身が担当している。
企画は「シネマ☆インパクト」。
大根監督の作品を後追いするなかで、この映画を観ることになった。

まずは「シネマ☆インパクト」の説明から。
2012年から始まった映画監督山本政志が主宰する実践映画塾である。
そこに大森立嗣、瀬々敬久、鈴木卓爾、深作健太、橋口亮輔、ヤン・イクチュン、山下敦弘、松江哲明、熊切和嘉、廣木隆一、いまおかしんじ、といった監督たちが参加し、受講生と共に限られた時間と予算のなかで実践的に「映画作り」を行うというもの。
そこから生まれたのが、この映画である。
プライベートフィルムと呼んでもいいような規模の映画だが、これがとてつもなく面白い。
こうしたた種類の映画が陥りがちな独りよがりやチープさといったものはなく、また全員無名の俳優とはいえ、けっしてシロート臭はなく、今風の若者を生き生きとリアルに演じていて、躍動感がある。

出演者は男5人に女4人。
今どきの若者の今どきの生活を、それぞれのアパートを覗き見するような形で進行させていく。
そしてそこを男女が入れ代わり立ち代りするうちに、人間関係の裏の部分や隠された本音が露わになっていく。
最初は底が浅く軽薄な会話の連続に、いささか辟易させられたが、観ているうちに俳優たちが演じているのか、地のままの姿なのかが分からなくなってしまうほどのリアルさに、どんどんと引き込まれていった。
ドラマというよりもドキュメンタリーのような肌触りと臨場感である。
まさに彼らの本音や嘘や弱さや強さが「渦」のようにうねる世界に巻き込まれ、あっという間の2時間20分であった。
これはやはり演出の力と脚本の力によるもの。
土台がしっかりしている映画は揺るぎない。
描かれているのは薄っぺらで刹那的な若者たちのどうしようもない世界ではあるが、それが深い人間観察と洞察によって裏打ちされることで、強い説得力のある映画になっている。
限られた予算と時間であっても、これだけの映画が出来てしまう。
そのことをまたあらためてこの映画によって教えられたのである。


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映画「0.5ミリ」

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ある事件で職を失った介護ヘルパーが、町で見かけた訳あり老人の家に押しかけて、身の回りの世話をするという物語。
主演の介護ヘルパーの女性サワを演じているのが安藤サクラ、そして監督が姉の安藤桃子という映画である。
登場する老人は、4人、織本順吉、井上竜夫、坂田利夫、津川雅彦、柄本明といった個性的な面々。
一筋縄ではいかない年寄りたちばかりだが、サワとともに生活するうちに、次第に心を開いていく。
そんなエピソードが連作短編のように繰り返される。
この映画を観ているうちに、ふとこれに似た映画があったことを思い出した。
百万円と苦虫女」である。
蒼井優演じるフリーターの女の子が、仕事で百万円貯まると別な土地に移るというルールに従って、ひたすら旅を続ける映画であった。
監督はタナダ・ユキ、こちらも女性監督である。
どちらもロードムービーではあるが、行く先々で居つき、そこで生活をしながらも、次々と居場所を変えていく。
また主人公が心に鬱屈をもちながらも、めげずに逞しく生きていく。
そんな共通点からの連想であった。
ところでこの「百万円と苦虫女」といい、安藤サクラの「百円の恋」といい、この映画のなかに出てくる百万円のエピソードといい、偶然だがいずれも百という数字に縁のある映画ばかり。
意味のないことかもしれないが、こうやって揃うと「百」という数字が何かの符号か、ラッキーナンバーのように思えてくる。
ついでにいえば、題名も「0.5ミリ」ということで、やたら数字が気になってしまうのである。

「介護」を題材にしているが、それだけに焦点を絞っているわけではない。
そこから見えてくるのは、超高齢化時代を迎えた現代社会が抱え持つ様々な問題であり、歪である。
そしてそこに安藤サクラ演じるサワという女性が関わることで、さらに複雑な現実が浮かび上がってくる。

「介護」が題材となると、どうしても重苦しくなりがちだが、この映画はそこがちょっと違う。
主人公サワのバイタリティー溢れるキャラクターや、コミカルな味付けが、この映画をよくありがちな「介護」映画とは一線を画したものにしている。

主人公サワは介護だけに限らず、年寄りの扱いには手慣れており、卒がない。
その扱いに年寄りたちが手もなく慣らされていく様は、まるで野良犬を手懐ける様で、手際がいい。
彼女が最初にやることは、手料理を提供すること。
まずは食い物から攻めていくのである。
だいたいの男は、手料理には弱い。
ましてや毎日貧相な食事ばかりの老人となればなおさらである。
サワは若さに似合わず料理の腕が抜群に上手いという設定になっており、美味そうな手料理が食卓に上がる。
もうそれだけで相手の気持ちをがっちりと掴んでしまう。
説得力がある。
押しかけヘルパーという強引で、現実離れした行動も、これで妙に納得してしまう。
その料理のコーディネートをしているのが、安藤姉妹の母親である安藤和津。
さらにいえば、父親の奥田瑛二もエグゼクティブ・プロデュサーを務めている。
加えて安藤サクラの義理の両親である柄本明と角替和枝も出演するなど、家族総出で若いふたりを支えているのである。

観る前は3時間16分はあまりにも長いと思っていたが、観始めるとあっという間であった。
いや、逆にまだまだ観ていたいと思ったほど面白かったのである。


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2017年邦画ベスト9

1位:オーバーフェンス
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レビューはこちら


2位:バクマン
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レビューはこちら


3位:湯を沸かすほどの熱い愛
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レビューはこちら


4位:起終点駅 ターミナル
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レビューはこちら


5位:淵に立つ
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レビューはこちら


6位:柘榴坂の仇討
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レビューはこちら


7位:永い言い訳
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原作が面白かったので、期待したが、残念ながら小説の面白さには届かなかった。それでもやはり見応えのある映画であった。竹原ピストルという新しい才能がこの映画で花開いた。


8位:ヒメノアール
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昨年のTSUTAYAの日本映画人気ランキング1位ということで借りた映画。よくある青春ものかと思ったが、かなり重い内容の映画。「ヒメノアール」とはトカゲの一種で小動物のエサになる小型のトカゲのこと。この映画の根底には陰湿ないじめの問題が潜んでいるが、それでも悲惨なだけではなく、笑いの要素もあって楽しめる。一筋縄ではいかない映画である。


9位:何者
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朝井リョウの直木賞受賞小説を映画化した作品。就活というものを通して描いた現代の若者たちの姿。彼らの不安や焦りから見えてくるものはいったい何か。ドラマとは無縁とも思える就活を舞台に、こうしたひねりの利いたドラマを生み出したことに拍手。



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テーマ : 2017ベスト映画  ジャンル : 映画


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映画「淵に立つ」

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心を逆撫でされるような映画である。
そして謎の多い映画である。
一見何も起きないように見える日常のそこ此処に、破綻の兆しを漂わせながら話は進んでゆく。
その鍵となるのが、浅野忠信演じる八坂という男。
町工場を営む夫婦(古舘寛治、筒井真理子)の前に、ある日突然現れ、工場の仕事を手伝いながら同居を始める。
言葉遣いが丁寧で礼儀正しく、清潔感あふれる八坂だが、時折見せる態度にはどこか胡散臭いものがある。
何を考えているのか分からない不気味さがある。
その隠された本性を、いつ現すのかという危うさを纏いながら、家庭は徐々に侵食されてゆく。
そしてついに決定的な事件が起きる。
その事件をきっかけに、八坂は姿を消し、8年を経た後半部では姿を見せることはなくなるが、それでいて残像が色濃く残っており、その存在を強く意識させられる。
映画は全編八坂を中心に廻ってゆくが、いったい八坂という人物は、何者だったのか。
彼が何をしたのか。
そして姿を消した後、どこへ行ってしまったのか。
いずれも結果が示されるだけで、詳しく説明されることはない。
謎は放置されたまま、絶望のなかへと突き落とされる。

暴力など過激なものは、いっさい描かれない。
ただ淡々と、ありふれた日常が描かれるだけだ。
それなのに、いつの間にか張り詰めた不安や怖さに包まれていく。

監督の深田晃司によれば、この映画は彼が所属する劇団「青年団」の平田オリザが語った言葉、「芸術とは断崖の淵に立って人の心の奥底を覗き見るようなもの」に大きく触発されたのだという。
その言葉通り、突き放され、救いのない絶望の淵に立たされてしまう。
映画が放つ暗い魅力に、今なお囚われ続けている。


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プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2018年)70歳です。
性別:男

還暦(10年前)という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

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