風に吹かれて

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Category: 日本映画

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映画「鍵」

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市川崑監督が大映時代に撮った文芸作品のうちの1本。
この時代(1958年~62年)は市川崑監督の全盛期で、代表作の多くがこの時期に撮られている。
そしてそのほとんどが文芸作品である。
書き出してみると、1958年に「炎上」、1959年には「鍵」と「野火」、1960年は「ぼんち」と「おとうと」、1961年は「黒い十人の女 」、そして1962年には「破戒」といったぐあいである。
「黒い十人の女 」だけがオリジナルで、後はすべて文芸作品である。
参考までにそれぞれの作品の原作の作家名を書くと、三島由紀夫、谷崎潤一郎、大岡昇平、山崎豊子、幸田文、島崎藤村といった、錚々たる顔ぶれ。
さらにこれらの作品のうち「野火」と「黒い十人の女 」を除いた作品はすべて、宮川一夫が撮影を担当している。
ちなみに「野火」と「黒い十人の女 」は小林節雄。
名作にとってカメラマンの力量がいかに重要かということが、このことからもよく判る。
宮川一夫らしい斬新な映像が随所に見られ、その映像美を堪能できる。
実験精神旺盛な監督とカメラマンが、新しい映像を求めて様々な試みをしている様や、映画全盛時代の活気あふれる現場の熱気が、画面の端々から伝わってくる。
なお宮川一夫カメラマンは、これらの作品と並行して1959年には小津安二郎の「浮草」を、そして1961年には黒澤明の「用心棒」を撮っている。
また「浮草」で共演した中村鴈治郎と京マチ子が、この作品で再び共演しているというのも、面白い。
「浮草」とはまた違ったふたりの関係が見られるのが興味深く楽しめる。
こうした映画を観るたびに思うことだが、名作はいつまで経っても古びない。


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映画「おとうと」

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夜中に目が醒めて、なかなか眠れないので、先日録画しておいた映画「おとうと」を観ることにしました。
この映画は、リアルタイムではありませんが、20年ほど前に観て感動した映画です。
いわゆる「銀残し」というフィルム処理を、映画史上初めて行ったことでも知られる映画です。
それはこの映画を撮るにあたって市川崑監督が、映画の舞台背景になっている大正時代の空気感(色のない色)を出したいということで、宮川一夫カメラマンに相談したことから生み出された手法でした。
まず撮影に際しては、カラー撮影用の強い照明ではなく、白黒撮影用の照明を使って撮影をします。
次にそのフィルムを現像する際に、フィルム上の銀を取り除く一般的な処理はせずに、銀を残します。
そうすることによって彩度の低い、渋い色調のカラーになり、暗部が暗くコントラストの強い画面ができあがるのです。
その結果「おとうと」は白黒ともカラーとも異なった、古い写真を思わせるような独特の色彩の映像をもった映画になったのです。
しかし現在残されているネガフィルムは劣化が激しく、当時の映像とは、かなり違ったものになっています。
そこで今回、再放送にあたって、上映当時の映像にできるだけ近づけようと、さまざまな試みが行われ、その結果、オリジナルに近いものを再現することができたそうです。
それを観た感想をいえば、大正時代という古い時代の雰囲気や、日本家屋の暗さがうまく表現されており、独特の情緒とリアリティーが生み出されていると感じました。
そして光と陰の美しさ、構図の斬新さに魅了されてしまいました。

「おとうと」は1960年に公開された映画です。
原作は幸田文、監督市川崑、脚本水木洋子、撮影宮川一夫、音楽芥川也寸志、出演岸恵子、川口浩、森雅之、田中絹代、というもので、日本映画黄金期ならではの顔ぶれです。
その顔ぶれを見ただけでゾクゾクしてしまいます。
ちなみにこの映画ができるまでの経緯をちょっと書いてみると、まず水木洋子が書いたシナリオが雑誌「シナリオ」に掲載されたところから始まりました。
それを読んだ市川監督が映画化を切望しましたが、企画は松竹、東京映画へと移ってしまったために、自らの手で映画化することは難しくなり、なかば諦めてしまいました。
その後、紆余曲折を経たものの、結局どの会社でも実現には至りませんでした。
そこで、市川監督は大映を説得して、ようやく念願の映画化にこぎつけたというわけです。
市川監督の映画では、ほとんどのシナリオは奥さんである和田夏十が書いたものですが、この映画では珍しく水木洋子のシナリオとなっているのは、そういった経緯によるものです。
水木洋子は、名作「浮雲」や「また逢う日まで」といった成瀬巳喜男や今井正の映画のシナリオを数多く書いた名脚本家です。
人間を深く見つめることで定評のある作家ですが、「おとうと」も深い人間洞察を感じさせる見事なドラマになっています。
そしてそれを映像化したのが名カメラマンの宮川一夫です。
宮川一夫といえば、溝口健二、黒澤明、小津安二郎といった名匠と組んで、映画史に残る傑作の数々を撮影した、日本を代表する名カメラマンです。
そもそも市川崑監督が、日活から大映に移籍したのも、宮川一夫カメラマンと組んでいっしょに映画を作りたいといったことも大きな理由だったようです。
その憧れの宮川カメラマンと初めてコンビを組んだのは、「炎上」でした。
三島由紀夫の小説「金閣寺」を、大胆に脚色したこの映画でもさまざまな実験的な映像の試みを行っています。
市川雷蔵が金閣寺を放火する、孤独な修行僧を演じたことでも話題を呼んだ映画でした。
その後「鍵」「ぼんち」と続いて「おとうと」で4本目の作品になります。
ところで市川崑監督の代表作には、この時代の宮川一夫カメラマンと組んだ作品に多くが集中しています。
そのことからも宮川一夫カメラマンの存在が、いかに大きかったかが分かります。
そうした名スタッフたちに加え、岸恵子、川口浩、森雅之、田中絹代といった名優たちが、それぞれの持ち味を十分に生かした演技を見せています。
とくに主人公の「げん」を演じた岸恵子は素晴らしい。
リウマチで体の自由がきかない継母に代わって、母親代わりに弟の面倒を見るしっかりものの姉を、魅力的に演じています。
頭の良さ、気の強さ、優しさ、そうした彼女自身がもつ美点が、主人公「げん」のキャラクターと重なって、これ以上はない適役でした。
そして弟の碧郎を演じた川口浩は、彼のなかにある育ちのよさや無邪気な不良っぽさを生かした演技で、岸恵子と絶妙なコンビネーションを見せています。
さらに、森雅之と田中絹代のベテランふたりの確かな演技が、若いふたりを盛りたてています。
その見事なコントラストは、ほんとうに見応えがありました。
しっかり者の姉、ちょっとグレかけた弟、あまり家庭を顧みない小説家の父親、リューマチ病みの後妻の母親、というぎくしゃくした4人の家族が、弟の入院をきっかけに、次第に和解していく姿には、思わず涙を誘われてしまいました。
そしてラストでは不覚にも号泣してしまいました。
昔観たときには、そんなことはなかったのですが、今回は涙が止まらなくなってしまいました。
その感動を引きずって朝まで眠れませんでした。
そして今朝になってこうしてブログを書いていても、まだ感動の余韻が冷めずに残っているのです。

映画史に残る、掛け値なしの名作だということを、あらためて思いました。


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映画「その木戸を通って」

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昨年2月に92歳で他界した市川崑監督の未公開作品「その木戸を通って」を観た。
レンタルショップで何を探すともなく見ているうちに、偶然この映画に出会ったのである。
この作品は、1993年に日本初のハイビジョンドラマとして製作されている。
完成したその年にベネチア国際映画祭の特別招待作品として上映され、また翌年にはロッテルダム国際映画祭でも批評家選出部門作品として上映されている。
そして1995年にハイビジョン放送としてテレビで実験放送されたが、以後いちども公開されることがなかった「幻の名作」である。
それが15年ぶりに昨年の東京国際映画祭で特別上映され、さらにDVD化もされたのである。
過去に何かの雑誌で、この映画の存在を何気なく読んだことがあったような気もするが、定かではない。
それほど人知れずひっそりと倉庫に眠ったままの作品だったわけである。
原作は山本周五郎の同名短編小説、こちらもおそらく読んだはずだが、これも記憶が曖昧だ。
そういったことで、まったく予備知識がないのと変わらない状態でこの映画を観ることができた。

ストーリーは青年武士、平松正四郎(中井貴一)の屋敷にある日突然転がり込んだ記憶喪失の娘、ふさ(浅野ゆう子)との不思議な物語を描いている。
ミステリー風な味つけがしてあり、幻想的なおもしろさと映像の美しさに見入ってしまった。
市川崑監督の過去の作品に民話「鶴の恩返し」を原作にした「つる」という作品があるが、それを連想させるような物語だ。
そしてこの作品の最大の特徴は、その映像の素晴らしさである。
ハイビジョン放送のための実験的な製作という目的で作られたため、映像的にはかなり凝ったつくりをしている。
ハイビジョン撮影は、その解像力の高さから、あらゆるものを鮮明に写し出す。
そのために写したくないものも、鮮明に再現してしまうという側面がある。
解像力の高さが映画的なごまかしを許さないのである。
その写りすぎる機能が時に諸刃の刃となって、映画的な表現を阻んでしまうといったことが起きてくる。
そこで、いかにそれをコントロールするかが、重要な問題となってくる。
この映画では、照明を工夫することで、その課題をクリアしようとした。
自然光をシャットアウトし、人工の光だけで、撮影をするという方法である。
それは室内の撮影だけに限らず、屋外での撮影でも、人工の光だけを使った撮影を行っている。
その結果、陰影が深く、鮮やかな色彩をもった、幻想的な映像ができあがり、物語の幻想性をさらに高めることになったのである。
とにかく、その美しさには眼を見張らせられる。
谷崎潤一郎が唱えた「陰影礼賛」という日本的な美学の世界の表現とでも云おうか、例えて云えば、映像的に新しい試みをした、「炎上」「おとうと」「雪之丞変化」といった作品群の延長線上にある美しさである。
そういった意味でも、この映画は実験精神旺盛な市川崑監督ならではの作品といえるものだ。
そして映画ファン必見の名作であることは間違いない。
こんな名作が15年もの長い間、一般の眼に触れないでいたことは、驚きである。
そしてこうした形で作品に接することが出来るようになったということは、ほんとうに喜ぶべきことだとしみじみと思ったのである。


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プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2008年)還暦です。
性別:男

還暦という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

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