風に吹かれて

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原節子、死去

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原節子が亡くなった。
享年95歳、映画界を引退してからすでに50年以上が経つが、未だに語られることの多い「伝説の女優」である。
こういう例は過去にはない。
まことに稀有な存在である。

彼女が引退したのは、1963年のこと、42歳であった。
1963年というと、私が15歳の時、高校1年生の頃。
なので彼女が出演した映画のほとんどはリアルタイムでは観たことがなく、憶えがあるのは、「日本誕生」と最後の作品となった「忠臣蔵」の2本だけ。
このうち「日本誕生」では天照大神(アマテラスオオミカミ)を演じていたことは、微かに記憶にあるが、「忠臣蔵」では出演していたことすら憶えていない。
またどちらも彼女の代表作というわけではないので、全盛期の作品はすべて後追いで観たものばかりである。
それも特別彼女の映画を観ようとしたわけではなく、小津や黒澤、成瀬といった監督たちの映画を追っかけているうちに、全盛期の彼女と出会ったのである。
恐らく自分たちの年代の者たちは、多かれ少なかれ似たようなものではなかったろうか。

そうやって観た彼女の映画のなかで印象的なものをあげると、『わが青春に悔なし』(1946)、『お嬢さん乾杯!』(1949)、『青い山脈』(1949)、『めし』(1951)、『晩春』(1949)、『麦秋』(1951)、『東京物語』(1953)となる。
この他にも、『安城家の舞踏会』(47)、『白痴』(51)、『山の音』(54)、『驟雨』(56)、『東京暮色』(57)、『娘・妻・母』(60)、『秋日和』(60)など名作は数多い。
だが選ぶとすればやはり先の作品ということになる。
そしてこれらの作品は1946年から1953年のわずか7年間に作られたものばかり。
原節子、26歳から33歳の時である。
そして9年後、42歳の若さで突然映画界を引退するのである。
そのことについては今回の死去に際しても、やはり様々に書かれているが、結局その理由に関しては依然謎のままである。

川本三郎に「君美わしく 戦後日本映画女優讃」という著書がある。
これは戦後の日本映画を代表する銀幕の名女優たちへのインタビューをまとめた本である。
山田五十鈴、高峰秀子、杉村春子をはじめとした煌びやかな顔ぶれが並ぶが、ひとり重要な人物が欠けている。
原節子である。
戦後の日本映画を論ずる場合、彼女はどうしても欠かすことのできない女優のひとりである。
そんな彼女が欠けていることは画竜点睛を欠くことになるが、早くに女優業を引退し、以後表舞台には一切姿を表さなかったことを考えれば、これはやはり致し方のないことだと言わざるを得ない。
しかしここに彼女の姿はないが、逆に不在という目に見えない存在感を強く感じさせられるのである。
そして同時に表舞台には決して出ないという彼女の決意が、いかに強いものであったかということも。

昨日NHKで追悼番組として『東京物語』が放映された。
それを観て、哀悼の意を込めながら在りし日を偲んだ。


最期に備忘録として彼女の簡単な経歴を書いておくことにする。

本名会田昌江(あいだ・まさえ)
1920年6月17日神奈川県横浜市で生まれる。男3人、女5人の末っ子であった。
1935年横浜高等女学校(横浜学園高等学校)を中退して15歳で日活多摩川撮影所に入社。これは経済的に困窮する家庭のため、次女光代と結婚していた映画監督の熊谷久虎の勧めによるもの。
同年の日活映画『ためらふ勿れ若人よ』(田口哲監督)で映画デビュー。同作で演じた役名「節子」から芸名をとって「原節子」とした。
1936年初の日独合作映画『新しき土』のヒロイン役に抜擢される。
同年、11月30日に発足した東宝映画株式会社に移籍する。
1946年黒澤明監督の戦後初の作品『わが青春に悔なし』のヒロインに抜擢される。
同年、東宝争議のあおりを受けて3月に創立した新東宝に参加。
1947年6月フリーの女優として独立。
1949年初めて小津安二郎監督と組んだ作品『晩春』に出演。
同年『晩春』、『青い山脈』、『お嬢さん乾杯』の演技が評価され、毎日映画コンクールの女優演技賞を受賞。
1953年、『白魚』の御殿場駅での撮影中に原の眼前で実兄会田吉男(東宝のカメラマンであった)が助手の伊藤哲夫と共に列車に撥ねられ不慮の死を遂げるという悲劇に遭う。そしてこの事件のわずか10日後、『東京物語』の撮影に入る。
1963年東宝創立三十周年記念作品『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』出演を最後に、女優業を引退。28年間で108本の映画に出演した。
以後表舞台には一切姿を見せず、2015年9月5日肺炎で死去、95歳であった。


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映画「浮草」

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BSプレミアムで映画「浮草」を観た。
この映画を観るのは、これで4回目である。
この映画に限らず小津作品は、何回観ても飽きることがない。
というよりも何回も繰り返し観たくなる。
そして観るたびに新しい発見がある。
そういう映画は他にはない。
それこそが名作たる所以であろう。

この映画が作られたのは、1959年、昭和34年のこと。
小津監督最晩年の作品である。
ちなみにこの後に作られたのは、「秋日和」、「小早川家の秋」、「秋刀魚の味」の3本だけ。

1934年に撮った自らの映画「浮草物語」をリメイクした作品である。
前年(1958年)の「彼岸花」で、女優・山本富士子を借りたお返しに大映で撮ったもので、小津監督にとっては唯一の大映作品である。
キャメラマンは宮川一夫。
巨匠と名キャメラマンがタッグを組んだというわけである。
そしてこれが最初で最後のコンビということになる。
この映画の後、小津監督は何度も大映に掛け合って、宮川キャメラマンとの仕事をもう一度実現させようとしたそうだが、結局この話は五社協定の壁に阻まれて、実現することなく終わってしまった。
もしこれが実現していたら、どんな映画が生まれていたことだろう。
今更ながらに悔やまれる話である。

そのふたりが初めて組んだということで、この映画はいつもの「小津調」からは幾分はみ出した異色の作品となっている。
例えば冒頭登場する旅芸人一座が町中を練り歩くシーン。
これはこの映画唯一の俯瞰撮影であり、小津映画ではほとんど使われることのないものである。
宮川キャメラマンが、「上から町を撮りたい」と希望したもので、それを小津監督は気安く受け入れている。
それでもひょっとすると、編集段階で使われないかもしれないと考えた宮川キャメラマンは、念のために低い位置からのカットも同時に撮っておいたが、最終的にはこの俯瞰のショットが使われた。
また土砂降りの雨の中で、中村鴈治郎と京マチ子が怒鳴り合う場面も、雨が好きな宮川キャメラマンの意向に沿ったものであった。
静かで抑制の効いたいつもの「小津調」からすると、これは相当異質な映像である。
しかしこれも小津監督は受け入れている。
これを宮川キャメラマンは、「自分に対する思いやりではなかったか」と書いているが、果たしてそれだけであろうか。
そこには、宮川一夫という名キャメラマンと組むことによって生み出されるだろう新しいものを期待する小津監督の秘かな狙いがあったようにも思うのだが、如何なものであかろうか。
とにかくこの映画では従来の小津映画からすると破調ともいえる数々の激しいものが散見されるのである。
基本は飽くまでも従来の「小津調」を押し通してはいるものの、実験精神溢れる映画になっている。
陰影の強い画面、カット数の多さ、激しい感情表現等々、これまでにないものである。
そしてそれが決して失敗に終わっていないところは、さすがである。
そこには小津映画に新しい何かが生み出されてくるのではないかと予感させられるものがある。
それだけにこのコンビが一度だけで終わってしまったことが、いかにも惜しまれてくるのである。


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小津安二郎 生誕110年、没後50年

昨日12月12日は小津安二郎の命日だった。
同時に小津安二郎の誕生日でもあった。
小津安二郎は1963年12月12日、自らの60歳の誕生日に亡くなっている。
すなわち今年で生誕110年、没後50年になる。
それに合わせて各地で上映会などさまざまな催しが行われている。
そのひとつとして昨日のGoogleのトップページのロゴDoodleは「東京物語」のワンシーンになっていた。
こんな画像である。

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また昨日の朝日新聞の「天声人語」にも小津映画が採り上げられていた。
<苦楽をともにしてきた老妻が死んで、葬式もすんだ。隣家の奥さんが通りかかって「お寂しゅうなりましたなあ」。「一人になると急に日が長(なご)うなりますわい」。つぶやく夫の向こうに瀬戸内の海――。変哲もないシーンながら、映画「東京物語」のラストは何回見ても胸にしみ入る。>から始まるもので、小津映画のなかに描かれた「絆」について書かれたものであった。

また先日出版されたBRUTAS12月1日号では「小津の入り口。」と題した小津特集を組んでおり、写真による小津映像の再現など、さまざまな面白いアプローチが行なわれていた。

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そして昨日NHK BSブレミアムで「小津安二郎・没後50年 隠された視線」というドキュメンタリーが放送された。
女優の司葉子、岡田茉莉子、香川京子、当時助監督であった吉田喜重、篠田正浩、また「早春」「彼岸花」「お早よう」などのプロデューサーであった山内静夫など、小津映画の現場に携わった人たちへのインタビューを通して、小津映画がどのようにして出来上がっていったのか、また小津映画に隠された様々な謎を解き明かそうと試みたものであった。
このなかで興味をひかれたのは、吉田喜重が語った「小津さんの映画のなかで力を持っているのは、見せることではなく、隠されてることなんですね。」という言葉であった。
そして「東京物語」を例にとって、それを解き明かしていく。
映画の冒頭、尾道から上京してきた両親が訪れる長男の病院は、看板が写されるだけで、建物が写されることはない。
また長女が営む美容院も同様である。
さらに東京見物の最後に訪れたデパートの上から眺める東京の街の映像も、観客には示されない。
映画のさまざまな場面で、こうした仕掛けがなされている。
それについて吉田喜重は「見せないことによって観客の想像力をそのまま持続してもらう。映像を見せることよりも観客の想像力のほうが強いんだということを小津さんは主張をしているんですね。」と説明する。
なるほど大いに頷ける話である。説得力充分な分析である。
こうした見方は今回の番組で初めて知った。
これはほんの一例だが、小津映画にはこのように汲めども尽きない深い意味や秘密が、まだまだ眠っていることを、この番組を観ながらあらためて実感した次第である。


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映画「秋日和」

テレビをつけると、たまたまBSで小津安二郎監督の「秋日和」をやっていた。
昔観た映画なので、何気なく観ていたが、しだいに引き込まれてしまい、とうとう最後まで観てしまった。
やはりいい映画は、何回観てもいいものだ。
今回観直して気づいたのは、主役のふたり(母娘を演じる原節子と司葉子)よりも脇役であるおじさまたちや娘の親友の存在のほうが目だって魅力的だったということである。
おじさまたちを演じるのは、佐分利信、中村伸郎、北竜二の三人である。
彼らは原節子の亡夫の親友たちで、母娘を陰日なたなく支え続けているという存在である。
そして亡き親友に代わって娘の縁談を画策するというお話である。
だが娘は母親が一人になることが気がかりで結婚に二の足を踏んでいる。
そこで三人は、娘を結婚させるためには、まず母親を再婚させるのが先決だと考えるが、そううまく事は運ばない。
だが、結局このことが原因でちょっとした騒動が持ち上がり、ひょうたんから駒のような按配で娘の結婚が決まっていく。
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その画策をするために、三人が集まって酒を呑みながら相談するという場面が何度も登場するが、そこでの大人の会話がなかなか面白い。
美人の未亡人にそれぞれが少しばかり惹かれている様子をそれとなく匂わしながら、それを酒の肴におもしろおかしくやりとりが展開されていくが、ちょっと猥談っぽいところもあって、この会話がなかなか楽しめる。
だが、さすがに下品にならないような匙加減は、やはり小津安二郎である。
どこまでいっても小津調なのである。
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そしてその三人にからんでくるのが、娘の同僚であり親友の岡田茉莉子である。
母親の再婚話に反発して相談にやって来た司葉子に、「なにさ赤ん坊みたいに」と軽くいなす。
彼女は下町の寿司屋の娘で、ちゃきちゃきの江戸っ子肌、母親を早くに亡くし、いまの母親は後妻であるが、ほんとうの親子のようなざっくばらんな態度で接している。
そんな彼女が言うだけに説得力がある。
そして彼女は親友母娘のためにトラブルの原因を作ったおじさまたちに会いに行く。
さんざんお説教した後で酒に付き合い、実家のすし屋にまで連れて行く。
その顛末がこの映画最大の見どころといっていいかもしれない。

それからちょっとした発見だったが、この映画で岩下志麻が佐分利信の秘書役でほんの少しだけ登場する。
注意して見ていないと見逃してしまうほどの短い場面であったが、こういう発見があると、なんとなくうれしくなってしまう。
ちなみに、この映画の2年後に彼女は「秋刀魚の味」で司葉子と同じようなヒロイン役を演じることになるのである。


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Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
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年齢:今年(2008年)還暦です。
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還暦という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

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