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風に吹かれて

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Category: 読書

Tags: 乙川優三郎  時代小説  短編小説集  

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乙川優三郎「露の玉垣」

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越後新発田藩の家老、溝口半兵衛が家臣の系譜と閲歴を、個人的に書き残した『世臣譜』という古書を基に書かれた連作短編集である。
すべてが史実に基づいて書かれたものである。
それだけに劇的な盛り上がりというものはないものの、度々の水害や火災によって貧窮する藩財政の中で、何とか打開を図ろうとする藩士やその家族の姿からは、事実がもつ重みが伝わってくる。
ある者は命がけで立ち向かい、ある者は押し潰されて、といったぐあいに過酷で厳しい生活が何代にも渉って続いていく。
第1話の天明8年(1786)から始まって、第2話で寛文8年(1668)へと遡り、第3話で宝永3年(1706)へと返り、その後は次第に第1話の時間へと辿っていくという全8話からなる展開となっている。
そうした過酷な歴史の中で、耐え忍びながら藩を支え続けてきた無名の男や女たちの声なき声が聞こえてくるようだ。
地味ながらも読後に、心地よい残像が残り、しみじみとした感動が味わえる小説であった。


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乙川優三郎「蔓の端々(つるのはしばし)」

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乙川優三郎のこの小説は、藩内のお家騒動と、それに巻き込まれた下級武士の悲哀や人間的成長を描いている点で、藤沢周平の「蝉しぐれ」との共通性を感じながら読んだ。
だが、読みすすむうちに「蝉しぐれ」とは違った味わいに、次第に物語世界へと引き込まれていった。

主人公は剣術で身を立てようと武芸に励む下級武士、瓜生禎蔵。
いずれは隣家の幼馴染、八重を妻にと考えていたが、ある日八重は親友の礼助と共に姿を消してしまう。
その失踪の裏に家老暗殺というお家騒動の影が次第に浮かんでくる。
そして藩の政権交代にからんで剣術師範として取り立てられた禎蔵も、否応なく政争の渦に巻き込まれていくことになる。

「蔓の端々」という題名は、藩政をめぐる争いのなかで、無残に使い捨てられていく無名の人間たちのことを指している。
歴史の裏にはそうした人間たちの悲哀が隠されているのが常である。
だがそれは悲哀だけで終わるばかりではない。
懸命に生きることで人間的な成長を遂げ、揺るぎない生き方を見つけることもある。
主人公の瓜生禎蔵もそうした人間のひとりである。
悩み、苦しみながらも、過酷な運命のなかで自らの生きる道を見出していく。

「しかしそう悪いことばかりではないぞ、人間は締めつけられるほど強くなるらしい、中には潰れてしまうものもいるが、いつまた葛のように強い芽を出さぬとも限らぬ、世の中にはそういう人間がひしめき合っている」
こうしたセリフに作者の思いが込められているように思う。

切なさのなかに明日への力を感じさせる乙川節は、この小説でも十分に味わうことができた。
さて次はどの作品を読もうかな。


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乙川優三郎「武家用心集」

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乙川優三郎の小説を読むのは、これで6冊目になるが、すべて秀作ぞろいで、どれひとつとして外れたものはなかった。
この「武家用心集」もこれまで読んできた作品同様、人生の岐路に立たされた人間たちの迷いや苦しみを、感動的に描いている。
そうした苦難に遭遇するとき、人はともすれば己を見失いがちになる。
しかし必ず拓ける道はあるのだということを、示唆してくれる。
そして生きることにおいて、何が大切なのかを教えてくれる。
また「しずれの音」では老人介護を、「九月の瓜」では隠居後の生活を、そして「磯波」では女がひとりで生きていくということを描くことで、今の時代にも通じるものを提示しており、いつの時代にも変わらぬ普遍的なテーマを見ることが出来るのである。

無駄がなく品格を感じさせる文章から紡ぎ出される、瑞々しい自然描写や細やかな心理描写、そして考え抜かれたストーリーと構成によって紡ぎ出される物語の気品や味わい、そうしたことを考えるとき、乙川優三郎は間違いなく、山本周五郎や藤沢周平の後を継ぐ作家であることを、実感するのである。
そして今回の「武家用心集」を読んで、その思いはますます確かなものになったのである。


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乙川優三郎「五年の梅」

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乙川優三郎「五年の梅」を読了。
これは2001年の山本周五郎賞を受賞した短編集である。
「後瀬の花」「行き道」「小田原鰹」「蟹」「五年の梅」の5編が収められている。
どの作品もよかったが、なかでも「小田原鰹」と「五年の梅」が心に残った。
「小田原鰹」は情がなく、女房にも息子にも見捨てられたダメ男が、辛酸をなめた後に人間らしく再生していくという話。
老いの心細さのなかで、人生の機微に触れることで、しだいに変わっていく男の生き様に心動かされる。
「五年の梅」は親友のために藩主を諫めた主人公が、蟄居を命ぜられ、そのために許嫁を不幸に陥れることになってしまう。
それを悔いた主人公が、苦難の末に許嫁を不幸な境遇から救い出そうとするというもの。
5編は、いずれも生きることに躓きながらも、再出発を果たそうとする人々の姿を描いている。
思い通りにいかないのが人生である。悔いの多いのも人生である。
だがそうしたなかにあっても、懸命に生きることで希望を見出していくのも人生である。
「結局、近道などなかった・・・」(「五年の梅」)という感慨が、どの作品の底にも流れている。
しみじみとした読後感が味わえる短編集であった。


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乙川優三郎「霧の橋」

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先日読んだ「かずら野」に続いて、乙川優三郎の小説「霧の橋」と「五年の梅」を図書館から借りてきた。
まずは「霧の橋」から読んでみた。

これは乙川優三郎初期の長編小説で、1997年度の時代小説大賞を受賞した作品である。
侍の子として生まれた主人公が、父の仇を討つために10年という苦難の歳月を過ごした後に、武士を捨てて商人として生きていく物語である。
そこで巻き起こる商売を巡る陰謀、そして夫婦の間にできた微妙なズレ、さらには武士を捨てたはずが、とことん商人にはなりきれない武士としての残滓に悩むという物語はなかなか読み応えがあった。
「かずら野」で受けた涙を誘うような感動ではないものの、ラストでは同じく感動の場面が用意されている。
終わりよければすべてよし、というわけでもなかろうが、こういった構成は乙川優三郎お得意のパターンなのかもしれない。
しかしこうした終わり方は、やはり爽やかだ。
また別な作品も読んでみたいという気持ちににさせられる。
もう一冊の「五年の梅」を、読むのが楽しみだ。


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プロフィール

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Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2018年)70歳です。
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還暦(10年前)という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

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