風に吹かれて

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小池真理子「沈黙のひと」

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小池真理子の小説を読むのはこれが2冊目。
最初に読んだのは「望みは何と訊かれたら」。
2年ほど前のことだったと思う。
60年代後半の大学紛争を舞台に、学生運動に関わった女子学生の恋愛を描いたもので、読みごたえのある小説だった。
そして今回の「沈黙のひと」である。
85歳で亡くなった作者の父親をモデルにした小説である。
大正十二年、満州大連で生まれ学徒出陣、戦後は東北帝国大学に進学、会社員となった父親が後年パーキンソン病を患うようになる。
そして長い介護生活を経た後亡くなった。
死後遺品整理をしていた時、ある物を発見、そのことをエッセイに書こうと編集者に話したところ、それは小説にすべきだと薦められる。
そして書いたのがこの小説だった。

物語は、編集者である衿子の目を通して父・三國泰造の姿が描かれるが、現実とは違い母娘を残して家を出て行った男として描かれている。
そして再婚後ふたりの女児をもうけるが、妻とは不仲で不遇な家庭生活であった。
やがてパーキンソン病を患うようになる。
体が不自由になり、言葉も思うようにしゃべれなくなってしまう。
手に負えなくなった家族は彼を介護老人ホームに入所させる。
そこから衿子の献身的な介護生活が始まる。
「沈黙のひと」となってしまった父親と、何とか意思疎通を図りたいと願った衿子は、文字盤を使うことを考え出す。
それによってささやかな会話が可能になるが、やがてそれも困難になり、最期の時を迎える。
介護を通して初めて父親と触れ合うことができたと感じた衿子は、父親のことをもっと知りたいと思い、遺品として残された日記、手紙、ワープロに保存されていた備忘録などを手がかりに、父親の心の軌跡を辿っていく。
そして文学好きで、短歌を詠み、女流投稿歌人とも文通を重ねた父親の新たな側面を知ることになる。
そこに自らの人生を重ねることで、より深く父親に寄り添うことができたと感じる。
そして自分自身も救われたような気持ちになるのである。

こうした内容ではあるが、けっしてお涙頂戴にはならない。
感情に流されることなく醒めた目で淡々と綴られていく。
それは主人公、衿子が「家族と離れて生きることしか考えなかった」女、「自分の人生を生きることで忙しすぎた」女であるという設定ゆえのもの。
すなわち作者自身の視線でもある。
それが父親の介護と人生を見つめ直すことで、次第に愛憎相半ばするものとなっていく。
そして最終章ではそうしたものすべてが昇華された静かな感慨へと至るのである。
それを読んで思わず胸が熱くなってしまった。
どんな困難な人生であったとしても、人生は生きるに値する。
これはそんな人間賛歌を謳った物語なのである。
小池真理子、渾身の一冊であった。


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笹本稜平「時の渚」

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笹本稜平の小説を読んでいる。
初めて読む作家だが、迫力あるストーリーに惹かれて読み続けている。
これで3冊目になる。
最初に読んだのは山岳小説「還るべき場所」、続いて警察小説「特異家出人」、そして今回の「時の渚」である。
こちらは探偵小説。
この他にも海を舞台にした冒険小説など、ジャンルは幅広い。
ちなみに経歴を調べてみると、

1951年、千葉県生まれ。立教大学社会学部社会学科卒。
出版社勤務を経て、海運分野を中心にフリーライターとして活躍。
2000年、「阿由葉稜」名義で『暗号―BACK‐DOOR』を書き下ろしてデビュー。
2001年、2作目となる『時の渚』で第18回サントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。
2004年には『太平洋の薔薇』で第6回大藪春彦賞を受賞。

となっている。
警察小説にはいくつかシリーズがあり、かなり多作の作家のようである。
多作となると、どうしても筆が荒れがちになるものだが、これまで読んだ小説に関してそれは感じなかった。
今回の「時の渚」も同様である。
よく練られたストーリーと緻密な描写に、グイグイと引っ張られて読んでいった。

主人公は私立探偵茜沢圭。
警視庁捜査一課の刑事だったが、逃走する殺人犯の車に妻と幼い子供がひき逃げされ、それが原因で刑事の職を離れることになった。
その彼が末期ガンで余命幾ばくもない老人から、三十数年前に見知らぬ他人に託した息子を捜し出してほしいとの依頼をうける。
捜索を始めた彼のもとに、かつての上司から連絡が入る。
数日前に起きた殺人事件の遺留物のDNAが、茜沢が刑事をやめるきっかけになった事件の犯人のものと一致したという。
そこから息子捜しと殺人事件捜査への関わりが始まり、無関係に思えたふたつの調査に意外な接点が浮かび上がってくる。

二転三転する展開はセオリー通り。
ご都合主義とも思えるところもあるが、力技でグイグイと押していく。
その潔さが心地いい。
読み終わった後は、主人公とともに困難な捜査を解決した充足感が味わえる。
読み応えのある小説だった。

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今月観た映画と読んだ本(2017年5月)

観た映画



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「リップヴァンウィンクルの花嫁」(DVD)
2016年 監督/脚本:岩井俊二 出演:黒木華/綾野剛/Cocco/原日出子/毬谷友子/地曵豪/りりィ/金田明夫


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「ヘイトフル・エイト」(DVD)
2015年アメリカ 監督/脚本:クエンティン・タランティーノ 出演:サミュエル・L・ジャクソン/カート・ラッセル/ジェニファー・ジェイソン・リー/ウォルトン・ゴギンズ/デミアン・ビチル/ティム・ロス/マイケル・マドセンブルース・ダーン/ジェームズ・パークス/ディナ・グーリエ/ゾーイ・ベル/ベリンダ・オウィーノ/チャニング・テイタム


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「エヴェレスト 神々の山嶺(いただき)」(DVD)
2016年 監督:平山秀幸 出演:岡田准一/阿部寛/尾野真千子/ピエール瀧/甲本雅裕/風間俊介/佐々木蔵之介/テインレィ・ロンドゥップ


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「さざなみ(45 YEARS)」(DVD)
2015年イギリス 監督/脚本:アンドリュー・ヘイ 出演:シャーロット・ランプリング/トム・コートネイ/ジェラルディン・ジェームズ




読んだ本



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「故郷のわが家」(村田 喜代子 短編小説集)


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「凍」(沢木耕太郎 ノンフィクション)


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「生きるぼくら」(原田マハ 現代小説)




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今月観た映画と読んだ本(2017年4月)

観た映画


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柘榴坂の仇討(DVD)
2014年 監督:若松節朗 出演:中井貴一/阿部寛/広末涼子/高嶋政宏/真飛聖/中村吉右衛門/吉田栄作/藤竜也


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「アンタッチャブル」(BSプレミアム)
1987年アメリカ 監督:ブライアン・デ・パルマ 出演:ケビン・コスナー/ロバート・デ・ニーロ/ショーン・コネリー/アンディ・ガルシア/チャールズ・マーティン・スミス/リチャード・ブラッドフォード


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「完全なるチェックメイト」(DVD)
2014年アメリカ 監督:エドワード・ズウィック 出演:トビー・マグワイア/ピーター・サースガード/リーヴ・シュレイバー/リリー・レーブ/マイケル・スタールバーグ/ロビン・ワイガート


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「砂上の法廷」(DVD)
2016年アメリカ 監督:コートニー・ハント 出演:キアヌ・リーヴス/レニー・ゼルウィガー/ググ・ンバータ=ロー/ガブリエル・バッソ/ジム・ベルーシ


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ワイアット・アープ(BSプレミアム)
1994年アメリカ 監督:ローレンス・カスダン/脚本 出演:ケヴィン・コスナー/デニス・クエイド/ジーン・ハックマン/ジェフ・フェイヒー/マーク・ハーモン/マイケル・マドセン/キャサリン・オハラ/ビル・プルマン/イザベラ・ロッセリーニ/トム・サイズモア/ジム・カヴィーゼル/デイヴィッド・アンドリュース


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「砂漠の流れ者」(BSプレミアム)
1970年アメリカ 監督:サム・ペキンパー 出演:ジェイソン・ロバーズ/ステラ・スティーヴンス/デイヴィッド・ワーナー/ストロザー・マーティン/スリム・ピケンズ/L・Q・ジョーンズ


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「サヨナラの代わりに」(DVD)
2014年アメリカ 監督:ジョージ・C・ウルフ 出演:ヒラリー・スワンク/エミー・ロッサム/ジョシュ・デュアメル/ステファニー・ベアトリ/ジェイソン・リッター/ジュリアン・マクマホン


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「バッド・ガールズ」(BSプレミアム)
1994年 監督:ジョナサン・カプラン 出演:マデリーン・ストウ/メアリー・スチュアート・マスターソン/アンディ・マクドウェル/ドリュー・バリモア/ジェームズ・ルッソ/ジェームズ・ル・グロス


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「アフガン・レポート」(DVD)
2014年イギリス/ヨルダン 監督:ポール・ケイティス 出演:デヴィッド・エリオット/マーク・スタンリー/スコット・カイル/ベンジャミン・オマホニー


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「わが青春に悔いなし」(BSプレミアム)
1946年 監督/脚本:黒澤明 出演:原節子/藤田進/河野秋武/大河内傳次郎/杉村春子/高堂国典/三好栄子/清水将夫/田中春男/志村喬


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オーバー・フェンス(DVD)
2016年 監督:山下敦弘 出演:オダギリジョー/蒼井優/松田翔太/北村有起哉/満島真之介/松澤匠/鈴木常吉/優香/中野英樹/吉岡睦雄/塚本晋也


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「山の音」(BSプレミアム)
1954年 監督:成瀬巳喜男 出演:原節子/山村聡/上原謙/長岡輝子/中北千枝子/杉葉子/角梨枝子/丹阿弥谷津子/金子信雄


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「麦秋」(BSプレミアム)
1951年 監督/脚本:小津安二郎 出演:原節子/笠智衆/三宅邦子/菅井一郎/東山千栄子/高堂国典/淡島千景/高橋豊子/佐野周二/二本柳寛/杉村春子/宮内精二





読んだ本



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蛇行する月(桜木紫乃 短編小説集)


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ラブレス(桜木紫乃 長編小説)


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ホテルローヤル(桜木紫乃 短編小説集)


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「恋肌」(桜木紫乃 短編小説集)


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奇跡の人(原田マハ 長編小説)


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ワン・モア(桜木紫乃 短編小説集)


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「活版印刷三日月堂 星たちの栞」(ほしのさなえ 短編小説集)


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津軽双花(葉室麟 時代小説)


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骨風(篠原勝之 短編小説集)


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黄金の服(佐藤泰志 短編小説集)


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弘前さくら祭り開幕

弘前さくら祭りが始まった。
初日の今日は、午前11時から本丸で開幕式が行われた。
その開幕式に孫が通う保育園の園児たちが、風船を飛ばすイベントに参加するという。
その様子を見に行ってきた。
本丸に到着すると、すでに大勢の客でいっぱいである。
混雑する肩越しの見物である。

開幕式は例年ニュースで見るだけで、実際に見るのはこれが初めて。
弘前市長をはじめ、地元選出の国会議員、知事、県内の市町村長といったお歴々が顔をそろえている。
さらに先日選ばれたばかりの「ミス桜」たちも色どりを添えている。
さすが観光の目玉「弘前さくら祭り」である。
盛大な開幕式である。
そしてセレモニーの最後を締めくくったのが、風船飛ばしのイベントである。
手に手に色とりどりの風船を持った園児たちが登場してきた。
掛け声とともに風船を離す。
子供たちの歓声が上がる。
それに誘われるように見物人からも歓声が上がる。
風船が空に舞い上がっていく。
「さくら祭り」の始まりである。

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佐藤泰志「黄金の服」

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先日観た映画『オーバー・フェンス』の原作が収録された短編集である。
映画の後、原作も読んでみたいと図書館で借りてきた。
「オーバー・フェンス」「撃つ夏」「黄金の服」の3篇が収められており、「オーバー・フェンス」は1985年の文学界に、「撃つ夏」は1981年の北方文芸に、そして「黄金の服」は1983年の文学界に発表されたものである。
小説「オーバー・フェンス」は、佐藤泰志自身が東京から函館へ戻り、職業訓練校に入校して学んだという実体験をもとに書かれたもので、芥川賞の候補にもなっている。
ちなみにこれが5度目の芥川賞の候補で、結局受賞はならなかった。
映画『オーバー・フェンス』はその小説をほぼベースにしているが、大きく違うところは3点、まず主人公の白岩は小説では20代だが、映画では40代になっている。
ふたつ目は、映画では白岩が別れた奥さんと再会するシーンが出てくるが、小説にはこれがない。
そしていちばん違っているのは3つ目の聡のキャラクターである。
小説に出てくる聡は花屋に勤めるごく普通の女性だが、映画の聡は相当の変わり者。
鳥になりたいと願い、鳥のダンスを踊るキャバクラのホステスである。
情緒不安定で、突然怒ったり泣いたりと予測のつかない行動をとる。
これは小説集のなかの「黄金の服」に出てくるアキという女性がモデルになっており、それをさらに膨らませたもの。
映画ではそのキャラクターがあまりに過激で、引いてしまったが、考えてみればこの存在があるからこそ、白岩の駄目さ加減が炙り出され、また変わろうとする原動力にもなっており、けっして奇を衒ったというわけではない。
重要なポイントになる役だ。
それを蒼井優が熱演しているが、成功したかどうかは評価の分かれるところ。
それほどの難役なのである。

こうやって見てくると、やはり映画と小説とは別物なのだとつくづく思う。
こうした映画的改変が行われるのは、当たり前のこと。
そしてこの映画では、そうした改変が小説をより大きく膨らませることになっており、映画の成功に大きく結びついている。
原作を読んで、そのことがよく分かった。
いい勉強になった。


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映画「オーバー・フェンス」

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偶然だが最近、北海道を舞台にした映画を観ることが重なった。
先日観た『起終点駅ターミナル』『愛を積む人』そしてこの映画である。
『起終点駅ターミナル』は釧路、『愛を積む人』は美瑛、そして『オーバー・フェンス』は函館が舞台になっている。

『オーバー・フェンス』は『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』に続く佐藤泰志原作の映画化作品である。
いずれも函館が舞台で、函館三部作と呼ばれているが、監督である山下敦弘、熊切和嘉、呉美保の全員が大阪芸術大学芸術学部映像学科の中島貞夫ゼミの出身者である。
さらに同大学出身の近藤龍人がすべての撮影を担当している。
そうした共通点があり、いずれ劣らぬ秀作ぞろいではあるが、好みからいえば今回の『オーバー・フェンス』がいちばん印象に残った。

結婚に失敗し、傷心のまま故郷函館に帰郷した主人公の白岩(オダギリ・ジョー)は、職業訓練学校に通いながら次の一歩を模索する日々である。
しかしあまり積極的とは言えず、実家にも寄りつかず、アパートでひっそりとひとり過ごす毎日である。
そんななか風変わりでエキセントリックなホステス・聡(蒼井優)と知り合い、その予測不能で突飛な行動に振り回されるが、それがきっかけで白岩の鬱屈した心に変化が生まれる。
そうした日々が函館の街を背景に描かれるが、そのゆったりとしたリズムが心地いい。
人生を半ば諦めたような男が主人公ということで、ひたすら暗いが、そんな暗さとは無縁に街の風景は明るく静かである。
その街を主人公が移動するのが自転車というのは、この映画にはよく似合っている。
スピードを出すのではなく、ただひたすらゆっくりと進んでいく。
また白岩が通う職業訓練学校の同じ建築クラスの生徒たちも、いずれも人生のやり直しを目ざしながらも、特別肩ひじを張って頑張っているというわけではない。
むしろダラダラとやる気のなさばかりが目立つ。
趣味で通っていると思われる定年退職者(鈴木常吉)、元ヤクザ者(北村有起哉)、大学の中途退学者(満島真之介)、元営業マン(松田翔太)、今どきの若者(松澤匠)と、いずれもひと癖ありそうな輩ばかりである。
ダメ人間を描かせたら天下一品の山下敦弘監督の腕が、ここで冴えわたる。
そうした男たちを見るだけでも、この映画を観る価値がある。
そして主役のオダギリ・ジョー。
中途半端に生きる彼の所在無げな姿がいい。
人と距離を置こうとするごまかし笑い、聡を見つめる優しい笑い、そうしたいろんな笑いが自然でいい絵になっている。
そして訪ねてきた元妻(優香)と会った後の号泣。
オダギリジョーは「ゆれる」での泣きもよかったが、この映画での泣きもまたいい。
泣きの似合う俳優である。
「失うものは何もないから」が切なく胸に響く。
そしてこうした鬱屈を晴らすことになるクライマックスのソフトボール大会。
「オーバー・フェンス」の意味が最後に炸裂するシーンが爽やかだ。
これでまた山下敦弘監督の代表作に、新たなものがひとつが加わった。


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篠原勝之「骨風」

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クマさんことゲージツ家の篠原勝之氏の書いた短編小説集である。
こうやってブログで小説の感想を書く時、通常は著者名に敬称はつけないが、クマさんの場合はどうしても「篠原勝之氏」と敬称をつけずにはいられない。
それはクマさんがFacebookでの知り合いだからである。
Facebookでクマさんの生活の様子などを見ているうちに、いつしか彼が近しい知人であるかのような気持ちになっているからである。
だからといって彼のことを詳しく知っているわけではない。
未だに謎を秘めた人という印象が強く、その実態は曖昧なままである。
最近はあまり見かけなくなったが、以前はテレビなどに出ているのを見て、その個性的な外見や人となりに惹かれていた。
それ以前は状況劇場のポスターに、インパクトある絵を描く画家として、そして最近は鉄や石、ガラスといった素材を使ってオブジェを創作するゲージツ家としての認識であった。
その程度の知識しかなかったが、今回この小説を読んでいろいろと新しい発見をした。
そしてますますその個性的な世界に惹かれていったのである。

この短編集は2013年から14年にかけて「文学界」に書いた5篇に、書下ろし3篇を加えたものである。
ほぼ実体験に基づいて書かれているようだが、そこはやはり小説である、虚実入り混じっているわけで、それのどこまでが本当で、どこまでが虚構なのか、そんなことを考えながら読むのも面白い。

クマさんは1942年、北海道札幌市生まれの室蘭市育ちである。
父親は元警察官、応召されて満州へ赴き、復員後は室蘭の製鉄所で工員となった。
クマさんは生後まもなくジフテリアに罹り、生死の間をさ迷ったが何とか助かった。
しかしその結果、嗅覚と左耳の聴覚を失ってしまったのである。
その影響からか学校でも家のなかでも、ボーっとして空ばかり見上げているような子供であった。
加えて生来の意気地の無さから、よくいじめられていたそうである。
屯田兵だった母方の祖父は、相撲大会で優勝するほどの人で、その祖父ゆずりの骨太な体躯をしていたにもかかわらずである。
今では考えられないことである。
また家では終始不機嫌な父親から毎日のように殴られていた。
そのため恐ろしさから顔もまともに見ることができなかった。
この当時のことはインタビューで答えており、それによると「復員したオヤジは、ぼーっとした長男に腹が立ったんだろうな。『鬼かよ』と思うほど殴られた。創作部分もあるけど、オヤジの暴力は全部、本当。」と言っている。
その激しい暴力に長年耐えてきたが、17歳の時とうとう家を飛び出してしまった。
そして時が過ぎ、30数年ぶりに母親から電話がかかってきた。
父親が臨終でもう長くはないというのだ。
来てくれないかとの頼みに、気が進まないまま会いに行く。
そして植物状態になった父親の臨終に立ち会うことになるのである。
その顛末を書いたのが、表題作の「骨風」である。
<殺すことより逃げる事を選んで、三十数年逃げ切ったはずだったのに、その父親が目の前に枯れ木のように横たわっている。過ぎ去っていった時間に目眩がした。>
父親に対する複雑な思いが切なく胸に迫ってくる。

続く「矩形(くけい)と玉」「花喰い」「鹿が転ぶ」「蠅ダマシ」「風の玉子」では上京後のことや現在の暮らしを題材に、そして最後の「今日は、はればれ」「影踏み」では認知症になった母親と、弟との複雑な関係とその最期について書いている。
そのなかで出会う動物や知人や家族の死や病、それらがぶっきらぼうで飾り気のない文体で書かれていく。
そこに甘い感傷はなく、あるのはあくまでも醒めた強い視線だけ。
時にユーモアが交じる。
そして死についての様々な言葉が挟み込まれる。
たとえばそれは、遊び仲間で師匠でもあった深沢七郎の「人が死ぬことは、清掃事業だから、喜んでいいことだ」といった言葉や、母親の「死んだらみんなおんなじだもの。」といった言葉である。
単純であっけらかんとしたこうした言葉に心動かされる。
そして「諸行無常」とか「万物は流転する」といった言葉が、ごく自然に浮かんでくる。

クマさんの自由で気楽な印象から、世間的なしがらみとは無縁のように見えるが、実はそうしたしがらみが断ちがたく、いつまでもついて回っている。
そうしたものから逃れることが、自分らしく生きるための彼らしいやり方であったということがよく分かる。
そして17歳で家を出るとき、母親から言われた「アンタは泣き虫だから、悲しくなったら手を動かすんだよ」という言葉を守るかのように、今でもせっせと手を動かしてゲージツ活動に勤しんでいるのである。

この小説は第43回泉鏡花文学賞の受賞作である。
そしてこちらもFacebookでの知り合いである劇団「新転位・21」の山崎哲氏によって劇化されている。


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Tags: 時代小説  葉室麟  

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葉室麟「津軽双花」

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津軽藩2代目藩主、津軽信枚(のぶひら)の時代の話である。
慶長18年(1613年)徳川家康の養女・満天姫が信枚のもとに輿入れしてくる。
本州最北端の津軽を、北方防衛上重要な藩だと考える幕府が、津軽家との絆をより強固なものとするためであった。
しかし津軽家には、すでに辰姫という正室がいた。
彼女は関ヶ原で敗れた石田三成の遺児である。
関ヶ原の合戦で三成が敗れた後、兄の石田隼人正重成は津軽に逃れ、津軽家の家臣になっていた。
信枚の父、初代藩主為信が三成から大いなる恩義を受けていたためであった。
そして今は津軽家の家臣となって杉山源吾と名乗っている。
また三成の娘辰姫は高台院(秀吉の妻寧々)の養女となって庇護を受けていた。
高台院は重成とともに石田家の血筋を残そうと考え、また津軽家と石田家の結びつきをさらに強いものにするために、辰姫を信枚の妻としたのである。
そこへ満天姫輿入れの話が持ち込まれた。
板挟みになった信枚だったが、結局は幕府の意向を受け入れ、辰姫を飛び地領の上州大館村(現在の群馬県太田市)に移し、満天姫を正室として迎え入れるたのである。
ここから満天姫と辰姫の「女の関ヶ原」ともいうべき戦いが始まった。
しかしその争いは、相手を陥れようとするような悲惨なものではなく、お互いの越えられない立場の違いからくるもので、戦国時代を生きる女の矜持が感じられるものであった。
ともに津軽家にとって何が大事かということを第一に考えながらの争いであった。
まさに津軽のふたつの輝ける花、「津軽双花」なのである。
そしてこのことが後の津軽家の安泰へと繋がり、さらに石田三成の血筋が津軽の地において脈々と生き続けていく礎になったのである。

調べてみると、この小説はほぼ史実に基づいて書かれたものだ。
こうした歴史があったということを、この小説で初めて知った。
地元に住んでいても歴史に特別興味を持っていない限りは、こういうことを知る機会はなかなかないものだ。
そういう意味ではこの小説はそうした機会を与えてくれたわけで、いい勉強になったと思っている。

弘前では昨年、弘前城本丸の石垣改修のために天守を移動するというイベント「天守曳屋」が大々的に行われた。
また先日4月9日には、「石垣解体始め式」も執り行われた。
そして今後10年をかけて石垣の改修工事が行われる。
こうした節目の時にこの小説を読んだことは、特別記憶に残る読書体験になったように思う。
そしてそのことで津軽の歴史への興味が、さらに大きくなったのである。


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テーマ : 図書館で借りた本  ジャンル : 本・雑誌


Category: 外国映画

Tags: 西部劇  

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映画「ワイアット・アープ」

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ワイアット・アープの波乱万丈の生涯を描いた映画である。
先日BSで観たが、観るのはこれが2度目。
ケビン・コスナーが主役のワイアット・アープを演じている。

ワイアット・アープといえば、西部劇には欠かせない伝説のヒーローである。
これまでにも何度も映画で取り上げられているが、記憶に残るものといえば、ジョン・フォード監督の『荒野の決闘』とジョン・スタージェス監督の『OK牧場の決斗』『墓石と決闘』である。
『荒野の決闘』ではヘンリー・フォンダ、『OK牧場の決斗』ではバート・ランカスター、そして『墓石と決闘』ではジェームズ・ガーナーがワイアット・アープを演じている。
またワイアット・アープの相棒のドク・ホリディは、それぞれビクター・マチュア、カーク・ダグラス、ジェイソン・ロバーツが演じている。
いずれも映画史に残る名作ばかり。
おそらくこの映画も、そうした名作に肩を並べようという意気込みで撮られたのだろうが、残念ながらそのレベルには達しなかった。
その意気込みのほどは、3時間を超える上映時間からも窺えるが、結果的にはそれが裏目に出てしまったようだ。
余計なエピソードを詰め込み過ぎて、間延びしている。
新しいアープ像を模索する心意気は買うが、結局空回りに終わってしまった。
そうしたマイナス要素が多いことから、封切当時は悪評続きで、失敗作のレッテルを貼られてしまい、ゴールデンラズベリー賞の最低主演男優賞、最低作品賞、最低監督賞に選ばれるという散々なけなされようであった。
しかしそうはいっても今観ると、失敗作とはいえども見るべきところは多々ある。
ケビン・コスナーが演じるワイアット・アープは、なかなか魅力的だし、ドク・ホリディを演じたデニス・クエイドはそれをさらに上回る魅力を発散している。
彼はこの役を演じるにあたって、20キロもの減量をしたそうだ。
肺病やみというリアリティを出すためだが、最初見たときは誰が演じているか判らないほどだった。
その意欲は成功しており、死の影を引き摺りながら、アープの友情に殉じようとする姿は見応え十分。
デニス・クエイドの新しい一面を見たと思った。

監督はローレンス・カスダン。
ケビン・コスナーとは『シルバラード』以来2度目の西部劇になる。
そしてケビン・コスナーはこの映画の製作も兼ねている。
そこには『ダンス・ウィズ・ウルブズ』で掴んだ栄光をもう一度という思いがあったのではなかろうか。
しかし意に反してそれが散々な評価という結果になってしまった。
その忸怩たる思いを払拭しようとしたのが、『ワイルド・レンジ』だったのではなかろうか。
この映画を観ながら、そんなふうな流れがあるように思えてきたのである。


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テーマ : 洋画  ジャンル : 映画


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プロフィール

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住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2008年)還暦です。
性別:男

還暦という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

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