風に吹かれて

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映画「手紙は憶えている」

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90歳の老人ゼヴは、アウシュビッツの生き残りである。
今は老人ホームで暮らしており、認知症を患っている。
眠るたびに記憶をなくし、妻を亡くしたことさえ忘れてしまう。
そんなゼヴが、アウシュヴィッツ収容所で家族を殺したナチス将校を捜し出し、復讐を遂げるための旅に出る。
同じく、アウシュビッツの生き残りであるマックスから手渡された手紙を頼りの旅である。
その手紙には、なぜ自分が旅をしているのか、そしてこれから何をやるべきなのかが、詳細に書かれている。
それを読み返すことで記憶を取り戻し、やるべきことをひとつひとつ実行していくのである。
そしてついに目的の相手に辿りつく、というのがこの映画の大まかなストーリーである。

第2次世界大戦が終わってすでに70年の歳月が流れている。
しかし、いかに時間が経とうとも、戦争の傷跡が癒えることはない。
そして憎しみや怨念もやはり消え去ることはない。
それを復讐と云う手段で実行に移そうとする、老人ふたりの執念の根深さに驚かされる。
罪はそれほど重いということだ。

ゼヴの歩みは心許ない。
その姿を見ていると、こんな老人に果たして大仕事を成し遂げることができるのだろうかという疑問が湧いてくる。
だが、考えてみれば、だからこそハラハラドキドキとしたサスペンスが盛り上がることになるのである。
また逆に老人だから怪しまれず、着実に実行ができるという利点もある。
カメラはけっして大げさにならず、日常の延長線として、淡々とその姿を追っていく。
覚束なくゆっくりとしたゼヴの歩みに合わせるように。
そしてその日常の先に、予想外の結末が用意されている。
驚愕の事実、それを知った時、復讐の旅という悲劇は、見事な完結を見せるのである。

戦後70年、戦争の記憶が薄れ、歴史の彼方へと消え去ろうとしている今だからこそ創りえた作品である。
原題の「Remember」の意味するところは大きい。
この巧みなストーリーを書いたのが、まだ30代のベンジャミン・オーガスト。
これが脚本家デビューというから驚きだ。
そしてその緻密な脚本を上質に映像化したのが、カナダの名監督アトム・エゴヤン。
見事な連携である。

ふたりの老人を演じたのは名優クリストファー・プラマーとマーティン・ランドー。
クリストファー・プラマー86歳、マーティン・ランドー88歳。
ともにこの映画が最後で、そして最大の代表作になることは間違いない。


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平野啓一郎「マチネの終りに」

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平野啓一郎の小説を読んだ。
評論集は以前読んだことがあるが、小説を読むのはこれが初めて。

読む前は難解な小説という先入観があったが、そうではなかった。
読み易いというわけではないが、まるで詩を読んでいるような華麗な文体に魅了された。
物語の展開の妙、登場人物の魅力など、読ませる要素はいろいろ揃っているが、何よりもまず最初に惹かれたのは文章のうまさである。
繊細な心理描写、哲学的な考察、そうしたものが散りばめられ、文学の香りが匂い立ってくるような文章である。
その一言一句を噛みしめながら読んでいった。

物語は天才的なギタリストと、国際政治の記者である女性の出会いと別れを描いた恋愛小説ではあるが、それだけには留まらず、様々な社会問題を絡ませながら展開していく。
例えばそれはイラク戦争、難民問題、ユーゴスラビア紛争、リーマンショック、長崎の被爆、そして東日本大震災。
そうした国際的な問題が、トーマス・マンの『ヴェニスに死す』やリルケの『ドゥイノの悲歌』といった文学を引用しながら描かれていく。
さらにギタリストである主人公の奏でる音楽がそこに加わることで、深い彩りを与えていく。
単なる恋愛小説というだけではない拡がりを感じるのは、そのためである。

「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えているんです。変えられるともいえるし、変わってしまうともいえる。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」
繰り返し語られるこの言葉が印象に残る。
そうしたさまざまな言葉に込められた意味をさらにもう一歩踏み込んで知るためにも、またもういちど読み返してみようかなと考えている。


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Category: 月別観た映画と読んだ本

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今月観た映画と読んだ本(2017年8月)

観た映画


himenoar.jpg「ヒメアノ~ル」(DVD)
2016年 監督/脚本:吉田恵輔 出演:森田剛/濱田岳/佐津川愛美/ムロツヨシ/駒木根隆介/山田真歩/大竹まこと


gray-pink.jpg「ピンクとグレー」(DVD)
2016年 監督:行定勲 出演:中島裕翔/菅田将暉/夏帆/岸井ゆきの/千葉哲也/マキタスポーツ/入江甚儀/橋本じゅん/篠原ゆき子/宮崎美子/柳楽優弥


daimajin.jpg「大魔神」(BSプレミアム)
1966年 監督:安田公義 出演:高田美和/青山良彦/藤巻潤/五味龍太郎/遠藤辰雄/島田竜三/伊達三郎/杉山昌三九


amaging-sm.jpg「アメイジング・スパイダーマン」(DVD)
2012年アメリカ 監督:マーク・ウェブ 出演:アンドリュー・ガーフィールド/エマ・ストーン/リース・イーヴァンズ/キャンベル・スコット/イルファン・カーン/マーティン・シーン/サリー・フィールド/デニス・リアリー


lalaland_201708310537597c2.jpg「ラ・ラ・ランド」(DVD)
2016年アメリカ 監督/脚本:デイミアン・チャゼル 出演:ライアン・ゴズリング/エマ・ストーン/カリー・ヘルナンデス/ジェシカ・ローゼンバーグ/ソノヤ・ミズノ/ローズマリー・デウィット/J・K・シモンズ/フィン・ウィットロック/ジョン・レジェンド


heart-of-fight.jpg「激戦 ハート・オブ・ファイト」(DVD)
2013年中国=香港 監督:ダンテ・ラム 出演:ニック・チョン/エディ・ポン/メイ・ティン/クリスタル・リー/アンディ・オン/ジャック・カオ/フィリップ・キョン/リー・フェイアル/ワン・バオチァン/ウィル・リウ/ミシェル・ルー/チャン・カーファイ



読んだ本


kisidancho.jpg「騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編」(現代小説 村上春樹)




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映画「ラ・ラ・ランド」

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セッション」で華々しくデビューを飾ったデイミアン・チャゼルの監督第2作目である。
昨年度のアカデミー賞では、13部門でノミネートされたという話題の映画である。
ぜひ映画館で観たいと思っていたが、地元ではいつまで待っても上映されず、結局たった1週間だけの上映で、しかも気づいた時はすでに終わっていたのである。
その待望の映画がようやくDVD化された。
さっそく借りてきた。

まず映し出されるのはオープニングの高速道路のシーン。
はるか向こうにはロサンゼルスの街並みが見えている。
(ラ・ラ・ランド LA LA LAND すなわちLAはロサンゼルス)
高速道路上にはたくさんのクルマが渋滞でストップしている。
一台のクルマから若者が降りてくる。
そして歌い踊り始める。
それにつられてつぎつぎと若者が現れ、歌とダンスの輪が広がってゆく。
その群舞がワンカットで延々と映し出されていく。
もうこれだけで映画的興奮の世界へと引き込まれていってしまう。
静から動への見事な転換、印象的な幕開けである。

続いて主役ふたり(ライアン・ゴズリングとエマ・ストーン)の運命的な出会いが、いくつかのエピソードを重ねながら手際よく描かれていく。
ジャズピアニストとしての成功と、自分の店を持つという夢を抱く青年セブ(ライアン・ゴズリング)。
そしてミア(エマ・ストーン)はハリウッド女優を目指して、オーディションに明け暮れる日々。
そんなふたりが偶然出会う。
よくあるボーイ・ミーツ・ガールの物語ではあるが、そこに様々な映画的な工夫を施し、作品の質を高めている。
色鮮やかな衣装や華麗なセット、自在に動くカメラワーク、巧妙に仕掛けられた伏線等々、さらにデイミアン・チャゼルの映画愛と音楽愛がそこに加味されていく。
例えばオープニングのクルマの上で歌い踊るシーンは、「フェーム」を連想させる。
ミアとセブが夜の公園で踊るシーンは、「バンド・ワゴン」の再現。
またふたりが映画館で観る映画は、ジェームス・ディーンの「理由なき反抗」。
その映画の後訪れるのは、「理由なき反抗」で使われたグリフィス天文台。
そしてそこで踊るのは、ウディ・アレンの「世界中がアイ・ラブ・ユー」を彷彿させるダンス。
またふたりのデートコースにハリウッドの撮影所が出てきたり、ミアの部屋の壁にイングリッド・バーグマンの大きな写真が貼られているなど、映画的記憶がそこここに散りばめられている。
他にも探せば、まだまだたくさんありそうだ。
そうした発見の楽しみが味わえるのも、この映画の醍醐味のひとつである。
そして音楽ではセブの姿を通して、ジャズへの深い愛が描かれる。
そんな映画や音楽へのこだわりから導き出されるのは、夢を追い求めることの歓びと悲しみ、そしてそれがどんな結果をもたらしたとしても、決して後悔はしないということ。
オーディションに落ち続けたミアが、女優へのステップアップの足掛かりとなる最後のオーディションで語るモノローグに、そのことが見事に集約されている。
このシーンは涙なくしては見られない。
そしてそれに続く、意表を突くラストシーン。
「草原の輝き」や「シェルブールの雨傘」を思わせるような苦いラストではあるが、それだけでは終わらず、そこにふたりのあり得たかもしれない人生を映し出すことで、苦さだけではない幕切れになっている。
デイミアン・チャゼル監督の並々ならぬ才能の閃きを感じる。
同時に彼自身の熱い思いも伝わってくる。
そしてそれこそがこの映画を一段と深いものにするポイントにもなっている。
時間を置いてまたもういちどじっくりと観てみたい。
そんな気にさせる映画であった。


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ねぷた祭り

今年のねぷた祭りは、孫の付き添い兼撮影係として、3回ねぷた運行に参加した。

1回目は保育園の夏祭りでの運行、2回目は保育園合同の運行で土手町コースを、そして3回目は市の合同運行で駅前コースを歩いた。

その祭りも今日で最終日である。

ねぷたが終わると秋が来るというが、まだまだ暑い日が続いている。

昨日に続き今日の最高気温もまた30度超えの真夏日の予報である。

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今月観た映画と読んだ本(2017年7月)

観た映画


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湯を沸かすほどの熱い愛(DVD)
2016年 監督/脚本:中野量太 出演:宮沢りえ/杉咲花/オダギリジョー/篠原ゆき子/駿河太郎/伊東蒼/松坂桃李


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「何者」(DVD)
2016年 監督/脚本:三浦大輔 出演:佐藤健/有村架純/二階堂ふみ/菅田将暉/岡田将生/山田孝之


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「ロスト・バケーション」(DVD)
2016年アメリカ 監督:ジャウマ・コレット=セラ 出演:ブレイク・ライブリー/オスカル・ハエナダ/ブレット・カレン/セドナ・レッグ/アンジェロ・ロザーノ・コルソ


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「アイアムアヒーロー」(DVD)
2016年 監督:佐藤信介 出演:大泉洋/有村架純/長澤まさみ/吉沢悠/岡田義徳/片瀬那奈/片桐仁/マキタスポーツ/塚地武雅/徳井優


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「10 クローバーフィールド・レーン」(DVD)
2016年アメリカ 監督:ダン・トラクテンバーグ 出演:メアリー・エリザベス・ウィンステッド/ジョン・グッドマン/ジョン・ギャラガー Jr./ダグラス・グリフィン/スザンヌ・クライヤー




読んだ本


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存在の美しい哀しみ(小池真理子 現代小説)


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「晴れた日に永遠が」(中野翠 コラム)


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「この世は落語」(中野翠 エッセイ)


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「絵画の向こう側・ぼくの内側」(横尾忠則 エッセイ)



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映画「湯を沸かすほどの熱い愛」

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昨年度の日本アカデミー賞をはじめ各種映画賞を受賞、またこれが中野量太監督のメジャーデビュー作ということで話題になった映画である。
宮沢りえが余命数ヶ月の母親役を演じていることから、よくある難病ものかと危惧したが、古い銭湯が舞台で、オダギリジョー共演というところにひかれて観ることにした。
死を宣告された主人公が、残される家族のために孤軍奮闘するというのが、この映画のメーンストーリーであるが、そのエピソードの作りや出し入れが、新人監督らしからぬ手際のよさである。
いささか感動の押し売り的なところがなきにしもあらずだが、幸いそれがリズムを乱すというところまでは至らない。
それよりもひねりのきいたストーリーや巧みな伏線、抑制の利いた演出など、バランスのとれたさじ加減は、やはり並みの新人ではない。
そして役者のうまさ(とくに宮沢りえと杉咲花)が、それを強力に後押しをする。
そんなアンサンブルがファンタジーとも思えるような物語に、リアルな説得力を生み出している。
全員が疑似家族、血の繋がりのない子に注がれる宮沢りえの熱く逞しい愛情に、心の底からほっこりとさせられた。
評価の高さは、けっしてダテではなかった。
期待を込めて次回作を待ちたいと思う。


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小池真理子「存在の美しい哀しみ」

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先日の「沈黙のひと」に続く小池真理子の小説。
こちらも家族がテーマで、東京、プラハ、ウィーンを舞台に描かれる。
登場するのは後藤家と芹沢家というふたつの家族。
後藤家の妻・奈緒子は、以前の嫁ぎ先である芹沢家に、生まれたばかりの息子を置いたまま離婚をしたという過去を持っている。
そして後藤信彦と再婚、娘の榛名が生まれた。
奈緒子は、癌で55歳で亡くなるが、その直前に娘の榛名に異父兄がいることを告げる。
榛名は奈緒子の死後、チェロの修行のためプラハに住んでいるという異父兄・聡に会いに行く。
妹だという事実を隠したままで。
その経緯を書いたのが、第一章の「プラハ逍遥」である。
最初は短編として書かれたもので、その後6編の連作短編を加えて出来たのがこの小説である。

小説の題名を見てまず最初に思ったのが、映画「存在の耐えられない軽さ」であった。
ミラン・クンデラの小説を映画化した作品で、プラハの春を題材にした映画である。
主演はダニエル・デイ・ルイスとジュリエット・ビノシュ。
この映画のことが「プラハ逍遥」で、話題として出てくるので、題名はそれにちなんで付けられたものだということが分かる。
ちなみにこの小説には、この他にもいくつかの映画が登場する。
第二章「天空のアンナ」では「アンナ・カレーニナ」、最終章「残照のウィーン」では「ビフォア・サンライズ」と「第三の男」。
いずれも物語の効果的な素材として使われている。
なかでも最終章では、「第三の男」で、オーソン・ウェルズとジョセフ・コットンが出会う場面で有名なプラターの大観覧車が小説の舞台として使われており、クライマックスの劇的効果を上げる役割を担っている。
映画で見知ったお馴染みの場所だけに、情景がすぐに浮かんでくる。
小説では、この他にも聡の妹・恵理が映画関係の会社に勤めるなど、映画関連の話題が多い。
そうしたことが、小説の面白さを支える、大きな要素になっている。
著者・小池真理子は、おそらくかなりの映画好きに違いない。
そう考えると、同じ映画フリークとして急に親近感を覚えることになる。
この小説が印象に残ったのは、そうしたことも理由のひとつである。


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今月観た映画と読んだ本(2017年6月)

観た映画


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「永い言い訳」(DVD)
2016年 監督/脚本:西川美和 出演:本木雅弘/竹原ピストル/藤田健心/白鳥玉季/池松壮亮/黒木華/深津絵里/堀内敬子


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「ルーム」(DVD)
2016年アイルランド/カナダ 監督:レニー・アブラハムソン 出演:ブリー・ラーソン/ジェイコブ・トレンブレイ/ジョアン・アレン/ショーン・ブリジャース/トム・マッカムス/ウィリアム・H・メイシー


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「不屈の男 アンブロークン」(DVD)
2014年アメリカ 監督:アンジェリーナ・ジョリー 出演:ジャック・オコンネル/ドーナル・グリーソン/MIYAVI/ギャレット・ヘドランド/フィン・ウィットロック


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「聖(さとし)の青春」(DVD)
2016年 監督:森義隆 出演:松山ケンイチ/東出昌大/染谷将太/安田顕/柄本時生/筒井道隆/竹下景子/リリー・フランキー


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「味園ユニバース」(DVD)
2015年 監督:山下敦弘 出演:渋谷すばる/二階堂ふみ/鈴木紗理奈/川原克己/松岡依都美/宇野祥平/松澤匠/野口貴史/康すおん





読んだ本


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「還るべき場所」(笹本稜平 山岳小説)


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「特異家出人」(笹本稜平 警察小説)


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時の渚(笹本稜平 ミステリー)


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沈黙のひと(小池真理子 現代小説)


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「春を背負って」(笹本稜平 山岳小説)




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小池真理子「沈黙のひと」

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小池真理子の小説を読むのはこれが2冊目。
最初に読んだのは「望みは何と訊かれたら」。
2年ほど前のことだったと思う。
60年代後半の大学紛争を舞台に、学生運動に関わった女子学生の恋愛を描いたもので、読みごたえのある小説だった。
そして今回の「沈黙のひと」である。
85歳で亡くなった作者の父親をモデルにした小説である。
大正十二年、満州大連で生まれ学徒出陣、戦後は東北帝国大学に進学、会社員となった父親が後年パーキンソン病を患うようになる。
そして長い介護生活を経た後亡くなった。
死後遺品整理をしていた時、ある物を発見、そのことをエッセイに書こうと編集者に話したところ、それは小説にすべきだと薦められる。
そして書いたのがこの小説だった。

物語は、編集者である衿子の目を通して父・三國泰造の姿が描かれるが、現実とは違い母娘を残して家を出て行った男として描かれている。
そして再婚後ふたりの女児をもうけるが、妻とは不仲で不遇な家庭生活であった。
やがてパーキンソン病を患うようになる。
体が不自由になり、言葉も思うようにしゃべれなくなってしまう。
手に負えなくなった家族は彼を介護老人ホームに入所させる。
そこから衿子の献身的な介護生活が始まる。
「沈黙のひと」となってしまった父親と、何とか意思疎通を図りたいと願った衿子は、文字盤を使うことを考え出す。
それによってささやかな会話が可能になるが、やがてそれも困難になり、最期の時を迎える。
介護を通して初めて父親と触れ合うことができたと感じた衿子は、父親のことをもっと知りたいと思い、遺品として残された日記、手紙、ワープロに保存されていた備忘録などを手がかりに、父親の心の軌跡を辿っていく。
そして文学好きで、短歌を詠み、女流投稿歌人とも文通を重ねた父親の新たな側面を知ることになる。
そこに自らの人生を重ねることで、より深く父親に寄り添うことができたと感じる。
そして自分自身も救われたような気持ちになるのである。

こうした内容ではあるが、けっしてお涙頂戴にはならない。
感情に流されることなく醒めた目で淡々と綴られていく。
それは主人公、衿子が「家族と離れて生きることしか考えなかった」女、「自分の人生を生きることで忙しすぎた」女であるという設定ゆえのもの。
すなわち作者自身の視線でもある。
それが父親の介護と人生を見つめ直すことで、次第に愛憎相半ばするものとなっていく。
そして最終章ではそうしたものすべてが昇華された静かな感慨へと至るのである。
それを読んで思わず胸が熱くなってしまった。
どんな困難な人生であったとしても、人生は生きるに値する。
これはそんな人間賛歌を謳った物語なのである。
小池真理子、渾身の一冊であった。


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プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2008年)還暦です。
性別:男

還暦という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

映画サイト「マイ・シネマ館」もやっています。
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